表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
231/444

16-27 説明の後の・・・一休み

それから、最後の試食品の黒糖かりんとうです。

今度はお兄様は困ったように私の方を見てきました。

初めて見たものですからどうしていいのか分からないようです。

なので、私はかりんとうを一つつまみあげました。


「これは黒糖かりんとうです。このように手に持って食べてください」


言い終わるとそのまま口に入れました。ポリッと半分ぐらいかじりました。懐かしいやさしい味がします。黒糖を見せてくれた時の料理長の顔が浮かんできました。


それと同時に炬燵に入って話している女性の横顔が浮かんできました。

一瞬驚いて後ろに一歩下がり、乗っていた台から落ちそうになりました。

隣にいたお兄様が腰に手を回して支えてくださらなかったら、私は落ちていたことでしょう。


「あ、りがとう、ございます。お兄様」


驚きに心臓がバクバクいっています。


「大丈夫かい、セリア。どうしたの。何か驚くようなことでもあったのかい」


お兄様が私をちゃんと立たせてくれながら、そうおっしゃいました。


「あの、いえ、そうではないです。台の幅を考えていなくて後ろに下がろうとしたら、落ちかけただけなのです」

「そうなの? でも、落ちなくてよかったね」

「お兄様のおかげです。今度何かお礼をしますね」

「お礼なんて言いのに。・・・じぁあ、今貰ってもいい?」


私の言葉にお兄様は柔らかく笑い、その後、いたずらっぽい目をして私を見てきました。


「えーと、お礼になるようなものは持っていないと思いますけど?」

「そのかりんとうを食べさせてくれないかな」


そのかりんとう?

お兄様の視線をたどると、さっき私が半分食べたかりんとうを手に持っていました。


「えーと、これですか?」

「そう」

「でも、これは私の食べかけですし、ちゃんとしたのはそちらにありますよ」

「だって、セリアはそれも、もう食べないんだろう。残すのなら同じだよね」


確かにもうこれ以上は食べ物を口に入れたくありません。見ると皆様にお茶が配られているところです。

それを飲みながら、みなさまは残ったものを食しています。


「本当にこれでいいのですか?」

「うん。それがいいな」


そう言ってお兄様は台から降りました。私もつられて台から降りました。そうすると演台の下に私はほぼ隠れてしまいました。

お兄様が「あ~ん」と口を開けました。私はその口にかりんとうを入れました。お兄様はカリッカリッといい音をさせて咀嚼されました。ゴクリと飲みこむとにっこりとまた微笑まれました。


「面白いね、これ。それに美味しいし。セリアが教えてくれたものはどれも美味しいよ」

「ありがとうございます、お兄様。ですが料理長をはじめとした調理場のみなさまの協力なくしては出来上がりませんでした」

「セリアは本当に謙虚だね。このレシピを伝えるだけでもすごいのに。完成させなければ気が済まないんだもの」

「それはそうです。ちゃんと出来上がったものをお兄様達に食べて頂きたいのですもの。おかげで完成させるまでにかなり失敗してしまいました。それを無駄にしないために使用人のみなさまが食べてくれて・・・。本当に申し訳ないと思ったの」

「あら、そんなことありませんわ、セリアテス様。私共は逆に先に食べさせていただけて、ご主人様方に申し訳ないと思っていたのですわ」


私達の会話に入ってきたのはクリスさんです。手にはお兄様と私の分のお茶を持っていました。


「立ちっぱなしでお辛くないですか。あちらに椅子をご用意してあります。お掛けになりますか」


クリスさんが示した先にはみなさまからよく見える位置に椅子がありました。

・・・なんか、ここがいいな。かくれんぼしているみたいで。


なので、はしたないと思いつつ台のところに座っちゃいました。それを見てお兄様も私の隣に座ったのでした。

クリスさんがお茶が入ったカップを渡してくれたあと、演台の上のお皿を持っていてくれます。私達に会わせて屈んでくれているのが申し訳ないです。


「あの、クリスさん。屈んでいるのは辛くないですか」

「まあ、セリアテス様、そんなお気遣いはいりませんわ。それよりも私もさっきまで立ちっぱなしだったので体勢を変えられてちょうどいいのです」

「えーと、じゃあ」

「それはいけません!」


私は自分の分のお皿からメレンゲを取ってクリスさんの口の中に入れようと思いました。ですが、実行する前にクリスさんから叱責が飛びました。


「セリアテス様、お気持ちは大変嬉しいのですが、わたくしは使用人でございます。ましてやここはフォングラム公爵家のお屋敷ではありません。些細なことでフォングラム公爵家が侮られることはよしといたしません。まして、セリアテス様のご好意に私が甘えた結果だなんてことになったら、私は自分が許せませんわ」


私はクリスさんの言葉に立場というものを改めて意識させられました。

そうですよね。私の軽率な行動でフォングラム公爵家に迷惑をかけるわけにはいきませんよね。


私の頭に手が乗りました。そのままナデナデと手が動きました。


「セリア、そんなに落ち込まないで。クリスもありがとう」


お兄様がやさしく微笑んでくれました。



230話です。


・・・あれ?

まだ、まったりしてる?

なぜに?


あっ! 前話で入れ忘れましたが、ふじつぼ様。

リクエストのミルフォードとセリアちゃんの「あ~ん」です。


予定より早く出てきました。

本当なら、このあとの話に入るはずだったのに。

アイスでもないし・・・。


お気に召していただけたのならうれしいです。


では、また、次話で!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ