16-20 不快な気持ちは・・・
ミルフォードお兄様やクラーラお姉様達とローザ様マイン様の怒りように、向かいに座る王子達は引いていましたが、私の懇願の視線に気がついて小さく頷いてくれました。
「ミルフォード、いつも冷静沈着な君にしては珍しいじゃないか。少し落ち着いたらどうなんだい」
そうカークライト王子が言ってくれたけど、10歳で冷静沈着って何?
・・・ではなくて、王子はミルフォードお兄様の冷たい一瞥で撃沈しました。
「ローザ、マイン。怒りたい気持ちもわかるけど・・・」
「お兄様は黙っていてくださいまし」
シュナイダー王子は全部言う前にローザ様にピシャリと遮られてしまいました。
「クラーラ姫、ローラント殿、オスカー殿。そう事を荒立てようとしないでください」
「あら、これを黙っていろとおっしゃいますの。そんなこと出来るわけないでしょう」
アルフレッド王子もクラーラお姉様の剣幕に引きながらも言ってくださいました。
「ですが、クラーラ姫。セリアテス様はそれを望んではいらっしゃらないようなのですが」
「「「「「えっ?」」」」」
お兄様達が私を見てきました。私は両隣に視線を向けて微笑みました。
ミルフォードお兄様は目を瞑った後、溜め息を吐いてからいいました。
「ごめん、セリア。セリアがそんなことを望むわけがないのに、頭が回らなかった」
「いいえ、お兄様。私のことを思っての言葉ですもの。大切に思われているようでうれしかったです」
にっこりと微笑みましたら、お兄様に苦笑で返されました。
「でも、いいのですか。放置してしまって」
シュレイン様が言ってきました。私はシュレイン様にも、いえ、みなさまに向けて人が悪い笑みになるように微笑みました。
「大丈夫です。わざわざ報復しなくても、明後日には彼は痛い思いをしますから」
みなさま解らないようで私の顔を見つめて次の言葉を待っています。
「明後日にはサンフェリス国王太子一家の歓迎と私のお披露目の宴がありますよね。みなさまは私が記憶を失くしたと訊いていらっしゃると思います。だから、子爵令息も自分が言った言葉を私が覚えていないと思ってますよね」
そこで言葉を切ると理解したみなさまの顔に笑顔が広がっていきます。
「ねえ、セリア。実際にはどうするの」
「そうですね。みなさま「女神様の愛し子」に挨拶にこられるのですよね。では、私は何も言わずに視線も合わせず不快気に眉をひそめる・・・では、如何でしょうか」
私の言葉をみなさま思い浮べたようです。
アルザス様が笑い出しました。
「ハハハハハッ。それいい。ぜひそれをそばで見てみたい」
つられてみなさまも笑いだしました。
「私も見たいですね。アルフレッド殿下、何とかなりませんか」
「クックッ。ウッ、ウン。ゴホン。あー、私達の友人である皆を挨拶の後、残すことが出来ないわけじゃないだろうけど、陛下やフォングラム公爵に話さなければならないぞ」
「どう思う、ミルフォード」
カークライト王子がお兄様に聞きました。
「そうですね。セリアの提案まで聞けば許してくれると思いますよ。そのためにもセリア、その子爵令息の名前を教えてくれないかな」
お兄様がにこやかに訊いてきました。
「え~と、言わなきゃダメ?」
「教えてくれないと、該当年齢の子供がいる子爵家を全部目の敵にしなければならないだろう」
他の方も頷いています。まあ、78家ある子爵家から探すのは大変ですものね。観念して教えることにしましょう。
「マルツァーン子爵家の・・・あら、どちらの方に言われたのでしょう」
「マルツァーン子爵家って9歳になる双子の男児がいたよね。どちらか分からないの」
「はい。名乗りはされなかったので。・・・でも、もう一人の方にも言われましたね」
「なんて?」
「えっ、これは流石におじい様の耳に入ったらまずいので・・・」
「ふう~ん。お婆様のことまで。なんて言ったのセリア」
お兄様怖いです。あれ、クラーラお姉様達も物騒な雰囲気なんですけど。
「セ~リ~ア~」
お兄様がとても優しい声をだされました。でも、表情が。顔は笑っているけど目が笑ってないです。
うわ~ん。お兄様が怖いです。
「その・・・彼が言ったのは、『お爺様達がリチャード卿のことを崇めるように言っているけど、結局は騎士爵風情の娘を妻に迎えたんだもの。大したことないよね。公爵家に泥を塗ってさ。こんなのが公爵家じゃこの国が心配だから、僕たちがしっかりしないとね』です」
これには王子達の方が呆れた声をあげた。
「マルツァーン子爵家はどんな教育をしているんだ。セレネ様の父上は救国の英雄なのに」
「マルツァーン子爵家の双子って下位貴族にしては魔力量が多いんだよね」
「彼らはさ、僕に自分たちを友人に選べって言ってきたんだ。性格的に冗談じゃないと思ったから、無視したけどさ」
あらまあ、もともと困った方達だったんですね。
「とりあえず陛下や父上達には、セリアが侮辱されたことを思いだしたから、彼らを「女神様の愛し子」が不快に思う相手と周りに知らしめるから手を出さないように。と言えばいいかな。そうすれば貴族社会の方がかってに制裁してくれるからね」
みなさまが頷いて、納得したようです。
内心ホッとしました。言われたことは嫌な事でしたが、それで潰されるのはいい気持ちはしません。
甘いかもしれませんが、命を取られる心配のないハブられる状態の方がやさしい対応だと思いたいです。
222話です。
わかっていたことですが、11月4日話は長くなります。
まだ、終わりません。
なので、また閑話を挟みます。
今回は王子たちです。いえ、予定です。
今話で、少しはまともな(色ボケが薄れた)王子達です。
ストッパーがストッパーにならなければ、まともになるということなんでしょうか?
では、また。次話で!




