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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
222/444

16-19 私から見たあの時のこと

ローザ様は顎に手を当てて考えるポーズをしました。


「ねえ、セリア。あなたはあの時のことをどこまで覚えているの」


ローザ様の言葉に首をひねりながら考えます。


「えーと、そうですね。あの日私はお兄様と一緒に王妃様のお茶会に行きました。王族の方々に挨拶をした後、お茶会が始まるまでお兄様といました。お茶会が始まりしばらくしたら自由に動いてよくなって・・・。私はローザ様のところに行こうとしたのですが、ローザ様の周りにも人だかりができていたので、人があまりいない方に移動しました。それから・・・」


あれ? 何かあったのよね。

不快に思うようなことが。

だから、その後不満に思ったのだわ。


「セリア、君の周りには他のご令嬢はいなかったの」


お兄様の声に思い出すのを中断します。


「はい。私の周りにはいらっしゃいませんでした。爵位が上の方々は皆様の周りにいらっしゃっておりましたし、爵位があまり高くない方々は私に話しかけようとする方はいらっしゃらなくて・・・」


その時のことを思いだそうとするのですが、霞がかかったようにぼんやりとしか思い出せません。でも、セリアテスの周りには人はいなかった・・・?

またです。何かが引っ掛かっているのに薄いベールに包まれているようにそれがはっきりと見えません。


「つまり彼女達はセリアのことを放っておいて、自分を売り込みに行っていたのか」

「そのようね、ミルフォード。やはりあの子達じゃセリアテスの友人にはふさわしくないわね」


ミルフォードお兄様とクラーラお姉様が厳しい顔をして頷きあっています。

それにローラントお兄様が声を掛けました。


「姉上、それは後にしませんか。それで、セリアテスはその後のことをどういう風に覚えているんだい」

「えーと、その後は、人だかりができている方々をしばらく眺めていました。ふと気がつくと他の方から離れている令嬢方がいて、私は声をかけさせていただいたのです。・・・ああ、そうです。最初に声を掛けたのがフィリナ様でしたよね」


ベールがめくれるようにフィリナ様の顔が浮かんできました。私に声を掛けられてとても驚いていらっしゃいました。


「はい、そうです。私に最初に声をかけてくださったのです」


フィリナ様が感極まったように声をあげられました。私はフィリナ様にニコリと笑い掛けました。


「確か黄色の小花が刺繍されたドレスを着ていらっしゃったのよね。とてもかわいらしくて似合っていたのを覚えているわ」


フィリナ様は顔を赤くして声も出せないくらい感激しているようです。

・・・まだ慣れないけど、高位貴族と知り合うことが下位貴族にとってはとても光栄な事なんだと、改めて思いました。


「今まで交流がなかった令嬢方と話をして楽しかったのだけど、やはり皆様が緊張なさっているのがわかって、気分転換をしたくて庭園にお誘いしました。咲き乱れる花々に心を奪われてしまい、私はみなさまより先に歩いていたの。そして、家に無い花に見入っている時に後ろのほうでハチに驚いた声が聞こえて、声がしたほうを見ようと振り返りかけたら、走ってきた令嬢達に押されて倒れてしまったのです。怪我をしたのは運悪く倒れた先に石があっただけです。だから、これは不運は事故でした」


そう言ったら向かいに座った方々に驚かれました。

その顔を見て、やはりこの方たちも権力至上主義なのかなと思いました。


「でも、セリア、今の話しじゃあなたが不満に思うことなんてなかったと思うのだけど」

「そう・・・なのです・・・が、あの時・・・不快に思うようなことがあって・・・」

「それこそおかしいじゃない。あなたが不快に思うだなんてよっぽどのことがあったのよ。セリア、なんとか思い出しなさい!」


ローザ様の命令口調に苦笑が浮かびました。すこし落ち着こうと新しく入れてもらったお茶を飲もうとカップを持ち上げました。口をつけようとしてみなさまの視線が私に集中しているのを感じて・・・。


「あっ」


小さく声がでました。そうです。あの時も隅の方の席に移動して、お茶を飲もうと給仕の方に目線で合図をして・・・。


「思い出したの?」


ローザ様が期待を込めた声音で訊いてきました。


「はい。私はあの時ローザ様に話しかけるのを後にすることにしました。隅の方の空いてる席に行き、王妃様が勧めた花のお茶をいただこうと給仕の方に合図をしたのです。それを見ていた子爵家令息が私に話しかけてきて嫌味を言ったのです」

「まあ、何と言われたのかしら、セリアテス」

「えーと『公爵家令嬢となると偉いものだな。顎で人をこき使えるんだからな。だが、身の程をわきまえたらどうだ。お前自身大した魔力を持たないくせに、王子の婚約者に選ばれるとでも思っているのか。ああ、家は公爵家だもんな。どうとでもなるか』でしたね」


つい、思い出したことをそのまま言ったら、両隣から怒気が立ち上りました。


「セリア、それを言ったのはどこの家だい。うちを馬鹿にしてただで済むとは思ってないよね。そのバカにはきっちりわからせないと」

「そうよ。そいつこそ何様よ。子爵家風情が王家の血を引く公爵家に言える言葉だと思っているのかしら。もちろんサンフェリス国王太子家としても抗議するわ」

「私も姉上に賛成だね。ミルフォードうちも一枚かむからその時は存分に名を使ってくれ」

「そいつバカなの。叔父上に喧嘩売ってさ。下手したらつぶされんじゃないの」

「あら、フォングラム公爵がやらなくても、私が父に言ってそうするわ。セリアどこの家か教えて頂戴」

「お姉さま~、マインもゆるせないのです~。ぜったにほうふくしましょうね」


えーと、セリアテスは皆に愛されていた・・・と。

ハッ、いけないわ。現実逃避している場合ではないわ。

とりあえず、こちら側の様子に若干引き気味の王子達に、何とかしてくれと視線を向けたのでした。



221話です。


セリアちゃんから見たあの時の様子・・・のはずが、なんでこうなった。


どうしよう。

いつもはストッパーになるミルフォードが真っ先にキレた。


えーと、だれか~、この事態を収拾してください!


では、次話で。

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