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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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父話2 茶番を演じる

セリアテスが着替えに行くのを見送って、私達は居間に入った。

居間にいるのは、私、セルジアスと、父リチャード、母セレネ、姉カテリア、義兄ジークフリート。そしてなぜか、ミルフォードとオスカーもいる。


「本当に胆が冷えたわい。ユーリック、本気で殺気を放つやつがあるか」

「そうしなければ判ってくださらない状態でしたよ、リチャード様」

「そちらは後にしてくださいませんこと、お父様。私達も支度をしなければなりませんもの」

「そうですね、姉上」


そう言って私は溜め息を吐いた。いや、期せずしてこの部屋にいるものが全員溜め息を吐いたのだった。


「それで、どうなさいますか。リチャード様」

「どうもこうもあるまい。セリアテスの提案を受け入れるしかないだろう」

「まあ、そうですね」

「ですが、よろしいのですか。あんなに破格の値段で。我が国だけでなく他の国も喜びましょう」


ジークフリート義兄上の言葉に沈黙がおりた。それに母が答えた。


「仕方がないでしょう。女神様の愛し子の言葉です。私達が従わないわけにはいかないでしょう」

「あの、少しいいですか。父上」


ミルフォードが声をあげた。


「セリアにはまだ何か考えがあると思うのです。でなければ御前会議に集まった人を集めて欲しいといいませんよね」

「・・・そうだろうな。だが、セリアが話してくれないことにはわからないだろう」

「それはそうですが、この間お爺様に訊いたことが本当なら、セリアの思考に私達は追いつけないのですよね」

「確かにそういうことになるか」

「なので、もう考えるのはやめませんか。それよりもセリアの提案をうまくいかせるためにもフォローの仕方を考えた方がいいでしょう」


大人たちはミルフォードを凝視した。私もミルフォードを信じられない気持ちで見つめていた。

この子はこんなことを言う子だったか。だが、この変化は・・・。


「それよりもいいのですか、お爺様、父上。このまま王宮に向かうとセリアとの間に溝が出来てしまうとおもうのですが」

「「ウッ」」


た、確かに。セリアにあんな顔をさせてしまったのだ。早く関係を改善させないと。


「謝って許してくれんかのう」


父上が情けない声を出した。やはり孫に嫌われたかもしれないということは、耐え難いものがあるのだろう。


「いえ、謝る必要はないでしょう。セリアも謝罪は望んでないと思いますよ」

「では、どうすればいいんかのう・・・。謝罪ではないとしたら・・・」


ミルフォードの言う通り、セリアは謝罪を望まないだろう。だが、どうすればいい。


「そうですね。無駄にセリアに緊張を強いたのですから、その緊張を解いてやればいいのではないでしょうか」

「簡単そうにいうが、どうすればいいんじゃ」


ミルフォードはオスカーを見た。オスカーは肩をすくめると話し出した。


「父上、お爺様、叔父上。これからセリアテスのレシピが世に出回りますよね。その場合必要になるものはなんですか」

「卵だな」

「それから牛乳かの」

「そうです。それに、セリアはバターを欲しがっていました。これも牛乳からできるのですよね」


だから何だ。と言おうとして、閃くものがあった。

ミルフォードがニッコリ笑った。


「下手な芝居で構いませんので、セリアの力を抜いてあげてください」


そういうと、ミルフォードとオスカーは居間を出て行った。

私達はそれを見送るしか、出来なかった。


「言われてしまいましたわね。これではどちらが大人でどちらが子供なのか分からなくなりますわ」

「そうだな。視野が広い子に育ってくれたと喜ぶべきなのか」

「あら、もともとオスカーは頭の良い子よ。ミルフォードのおかげもあって素直寄りに育っただけだわ」


姉夫婦の親バカ発言を聞きながら、私は考えていた。


「下手な芝居でいいと言っていたが、セルジアスはどちらがいいかの」


父上・・・そんなにもセリアに嫌われたくないのですか。真面目に皆を集めたところで言うだろう言葉を予測している私が馬鹿みたいじゃないか。


「父上のお好きな方を選んでください」

「じぁあ、わしは牛がいいのう」


呑気に言う父を睨もうとして顔を見たら、目は剣呑な光を宿していた。


「では、私たちは急いで支度しますわ。お父様達は」

「セリアの前で芝居をしてからじゃ」

「わかりましたわ」

「着替えは用意させておくわ」


そう言って私と父以外は出て行った。

足音が遠ざかると父が魔法を唱えた。

部屋の外には声が聞こえないだろう。


「セルジアス、ミルフォードの変化をどう見る」

「ええ、覚悟を決めたようですね。父上はミルフォードにどこまで話したのですか」

「レイフォードとお前がした約束を違えるようなことは告げていないぞ」

「では、セリアテスの価値についてですか」

「まあ、そうかの」


一足飛びに大人になろうとしているミルフォードに私は何をしてやれるのだろうか。


「お言葉を挟むことをお許しください。わたくしめもそろそろ執事長の職を退きたいと思っております」

「仕事はきついか、ユーリック」

「いえ。後継は育てましたので、わたくしが動けるうちにミルフォード様にご教授しておこうかとおもいまして」

「ほう。頼めるかの」

「はい。わたくしの知識を授けましょう」


父と執事長の会話に私は背筋が震えるのがわかった。


「では、セルジアス。わしらはミルフォードとオスカーが何を言ってきても対処できるようにしておこうかの」


そう言って、父は晴れやかに笑ったのだった。



212話です。


さて、パパです。

大したたことは語ってません。

次話で舞台が王宮に移るので、閑話的な?!?


では、次話で、また。


じゃなくて、補足?

執事長は家族ではないので、セルジアスの中では人数にカウントされませんでした。

かな?

では~(@^^)/~~~

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