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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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16-9 お金の価値は

いや、さすがにそれはないですよね。


「金貨と銀貨の呼び方ももしかして1銀貨とかいうのですか」

「はい、そうです。1銀貨が千ガルドでして、100金貨に至っては1億ガルドになります」

「なんか、紛らわしいような・・・」


思わずつぶやいてしまいました。


「そうですね。あちらのお金を知っていますと、少し混乱いたしますよね」

「おい、ユーリック!」


その言葉に私は執事長を振り仰ぎました。おじい様が咎めるような声を出しました。


「やっぱり執事長もあちらの記憶があるのですか」

「はい、ございます。ですがわたくしめはセリアテス様のように伝えられる技術などはございません。あるのは人より優れた頭脳のみでございます」


芝居がかった仕草で執事長は私にお辞儀しました。謙遜しているようでしていない物言いに私の口に笑みが浮かびます。


「ですがセリアテス様でしたら、お金のことなどすぐに覚えられますよ。あちらに比べれば消費税の計算をしなくていいので、とても楽ですから」

「クスッ、そうですね」


私が笑いましたら、執事長の目が細められました。やさしい、孫?を見るような感じです。

そして、おじい様の方を見ますと・・・あれ、執事長は使用人ですよね。何か雰囲気が・・・その、おじい様と同等というか・・・。


「リチャード様。もう、今更でしょう。聡いセリアテス様は神殿での行動で気が付いておられたと思いますよ」


えっ、言葉使いは丁寧ですが・・・これが慇懃無礼という態度でしょうか。

おじい様が怯んでます? いえ、拗ねてます?


「出しゃばるつもりはございませんが、いい加減にしていただかないと・・・」


その後は声を出さずに口の動きだけで伝えています。

あれ? お父様が蒼褪めているんですけど。下から見上げているとよくわからないです。なんと言ったのでしょうか。


「お前は誰の味方だ」

「もちろん、かわいくて賢くあられて、女神様にも愛し子と呼ばれた、セリアテス様に決まっているでしょう」

「わしを裏切る気か」

「何をおっしゃいますやら。セリアテス様に味方するということが裏切りというのなら、あなたの性根が腐った証拠ですね。よろしければ叩き直して差し上げましょうか」


おじい様を見つめる執事長から何かが放たれました。一瞬ゾクッとしました。

ファラント様が守るようにジーク伯父様のそばに来ました。


「いい加減にしなさい。リチャード! ユーリック、そんなものをここで出さないで。セリアテスが怯えているでしょう」


おばあ様が一喝しました。執事長はもう一度おじい様を睨むとフッと気配を緩めました。

知らずに詰めていた息を吐き出しました。

いまのが殺気というものでしょうか。すごいです。


称賛の眼差しで執事長を見上げていましたら、執事長に微笑まれました。


「セレネ様。セリアテス様は怯えてなどいらっしゃらないようですよ」

「ええ、そのようね。・・・全く・・・」


なんかおばあ様が口の中でつぶやいていますけど、何と言っているのでしょう?


「さて、続きをよろしいですか。先ほどセリアテス様は王都で暮らすのに一日いくら必要なのか訊かれましたね。そうですね、旅をしてきて宿を取るのに普通は1泊50ガルドです」

「安くないですか」

「ええ、これが一般の最安値です。ですが、これは相部屋でベッド1つ分の値段となります。もし個室の1部屋でしたら、100ガルドはかかります。もちろん食事代は別になります。あと、宿にもランクがございまして、高級と言われる宿ほど高くなります。それから、そちらに用意したパンが1個10ガルドになりまして、そちらの1切れが1ガルドですかね。あまり1切れだけで売っていることはありませんが比較としてご用意しました」

「はい。ありがとうございます」


と、いうことは、このパン1個があちらの世界で100円だとして、こちらはあちらの10分の1の価値になるのね。ならば、100万円は10万ガルド・・・と。


私はもう一度息を吸って吐き出しました。


「では、よろしいでしょうか。私からみなさまに提案したいことは・・・・・」


私の言葉にみなさま驚かれています。


「セリアテスはそれでいいのか。その提案だと我々はすごく助かるぞ」


ジーク伯父様がそう言ってきました。


「はい、かまいません。でも、その前に伯父様にお願いしたいことがあります」

「何だい、セリアテス」

「サンフェリスのお土産にいただいたフィナンシェは彼女の記憶の中にもありました。もしかしたらプリンやメレンゲなどのレシピも、フィナンシェを作った方なら知っている可能性があります。出来れば私のレシピとして発表する前に確認をしたいのです」

「それはフィナンシェを作った料理人に訊いて欲しいということか。分かったちょっと待っていなさい」


ジーク伯父様は部屋を出ていかれました。

しばらく、そう10分もしないうちに遠話の魔道具の部屋に呼ばれました。


「今、その料理人とつながっている。聞きたいことは直接訊くがいい」


伯父様がそう言いましたが、連絡を取るのが早すぎます!



210話です。


・・・ユーリックがあっさりバラした!

というか、なんで殺気を放つかな?


あれ、ファラントいたの。・・・いるよね。うん。

忘れてませんからね。ただ、護衛の彼が目立つ事態になっちゃまずいですよね。

それだけですからね。


では、次話で、また。


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