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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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16-5 私におこったこと

みなさまはメレンゲを気に入ってくれたようで、次々と手が出てあっという間に無くなってしまいました。

私がみなさまを見ているのに気が付いて、みなさまは頬を微かに赤くしました。


「えーと、セリアテス。これも初めて食べたけど、何で出来ているのか聞いてもいいかな」


ローラントお兄様が私に訊いてきました。


「これはメレンゲと言いまして、卵の卵白と砂糖と小麦粉を少し入れて作っています」

「卵白?じゃあ黄色の部分は?」

「先ほど食べたカスタードクリームに使いました」

「カスタードクリームは卵で作れないの?」


今度はオスカーお兄様が聞いてきました。


「全卵でも作れますがよりカスタードらしさを出すために、今回は卵黄だけにしてもらいました」

「ゼンラン?」

「全卵とは卵全体のことをいいます。黄身と白身に分けないという意味です」

「へえ~、そうなんだ。これもさっき言っていた彼女の世界(・・・・・)の知識なのかな」


オスカーお兄様がニッコリ笑って言いました。

・・・って、ウインクつきですか。


オスカーお兄様ありがとうございます。私が話し出しやすいようにしてくれたのですね。

なので、軽く目礼しておきます。解ってくれたのか笑みが深くなりました。


「そうです。彼女の世界の知識です」


私は一度言葉を切ると、また軽く深呼吸しました。

そして、向かいに座るお父様達(私の右隣りにはお母様、左隣にはお兄様が座っていて、お父様、おじい様、ジーク伯父様が目の前に座っています)を、見つめました。


「お父様達もご存じのとおり、私はお茶会で怪我をして倒れました。そして高熱を出して7日間寝込んだとききました。・・・目が覚めた時には私は何もわからない状態でした。すごく・・・混乱していました。知らない部屋に知らない人たち。お兄様が部屋に来てくれた時も、最初は誰かわかりませんでした」


言葉を切ると息を吐き出しました。私の左手に触れるものがありました。見るとお兄様がそっと右手を私の左手に重ねてくれていました。まるで私を励ますようにそっと甲を撫ぜてくれます。

私は微かに口元を綻ばせると続きを話し始めました。


「でも、何となく見覚えがあるなと思ったら、おにいしゃまと口をついて出てきました。その言葉に納得すると共にとても安心したのを覚えています。お父様とお母様を見た時にも、最初はわかりませんでした。でも、やはりおかあしゃまと言葉が出てきて、ああ、自分の両親なんだと思いました」


言葉を切るとゴクリと唾を飲み込みました。それで、緊張のために喉が渇いていることが分かりました。

カップを持ち冷めた紅茶を一口飲みました。

みなさま、何も言わずに私の次の言葉を待っていてくれます。

カップをテーブルの上に置き手を膝の上におきました。手が震えてきます。

その手の上に両側から手が重なりました。その温かさに涙ぐみそうになりましたが、自分を叱咤して息を整えると、また話しはじめました。


「私が混乱したもと、記憶を失くしてしまった原因は彼女(・・)です。私は彼女の名前は知りません。ですが、彼女のことはよく知っています。それは、倒れてから目が覚めるまでずっと彼女の夢を見ていたからです。・・・彼女はこの世界の人ではありませんでした。彼女が住んでいた世界はこことは全然違いました。その世界は魔法はありませんが、とても文明が発達した世界でした。馬が引かない馬車に乗り、空さえも金属で出来た船で飛び回っていました。こちらにアラクラーダの神子が伝えたとされるものがいくつかありますが、それは彼女の世界では当たり前にあるものでした」

「それはお風呂や水洗トイレのことかな」


お父様の言葉に頷きます。


「はい、そうです。あと、遠話の魔道具なども、あちらの世界にあった物を参考に作られたものだと思います」


私はお父様、おじい様、ジーク伯父様の顔をジッと見つめました。

3人とも表情を消しています。


・・・そうなのですね。お父様達は知っていたのですね。

アラクラーダの神子たちがこちらに伝えたものが、この世界とは別の世界の記憶を持った方たちが伝えたものだという事を。

横目で見たお母様、お兄様、クラーラお姉様、ローラントお兄様、オスカーお兄様は知らなかったようで、驚きが表情に現れています。

おばあ様と、カテリア伯母様も動じてませんから知っていたのでしょう。


「私は彼女の人生を見せられて、あまりにこちらの世界との違いに驚いて、今まで信じていた価値観を全否定されたように感じました。・・・たぶんそのショックで、記憶を失くしたのだと思います」


ここまで言って息を吐き出しました。

そう、ここまでは私におこったことだし、思ったことだからいいです。

ですが、朝起きて・・・ううん、この3日考えていたことを、言わないと。


でも、その前に・・・。


「その記憶の中にこの世界ととても似た物語(・・・・)がありました。その物語はシミュレーションゲームと言って自分が主人公になりそのゲームの世界を疑似体験するものです。冒険や学園生活をして楽しむものなのです」



206話です。


今回は補足というか、蛇足があります。


メレンゲ・・・卵白を泡立てたものをメレンゲといいますよね。それに粉物を入れて焼き上げたものも、メレンゲといいます。紛らわしいから、次に焼いたものを出すときは焼きメレンゲにしようかと思います。それで、この焼くために入れる粉物なのですが、前に私が作ったものはコーンスターチを入れました。もちろん、小麦粉で作れることも知っています。この世界では、まだジャガイモは出てきてませんので、でんぷんを取ることができないので、小麦粉をつかいました。


カスタードクリーム・・・これもメジャーなのは、卵黄だけで作るものです。ですが、卵こと全卵でも作れます。この時にはザルで濾すことをお勧めします。カラザや白身の塊を取り除いたほうが滑らかになります。白身が入る分濃厚さは半減しますが、その人の好みによるとおもいます。


話の方は第2の山場?に来ました。

最初はサブタイトルを「告白」にしようかと思いましたが、ちょっと違うかと思い「私におこったこと」にしました。


最後の発言・・・まあ、次話で決着がつく・-・のかな?


では、また、次話で会いましょう。

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