表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
200/444

宰相話2 新しい知識の価値

リチャード様は部屋を出たところで待っていてくれました。

私は先に立ちお三方を案内して歩きます。


案内した先は厨房に近い小部屋です。部屋の中に入ると、国王陛下、王妃殿下、魔術師長、料理長が待っていました。


「このような所への呼び立てとは如何なさいましたか、レイフォード陛下」


ジークフリート様が陛下に声を掛けましたが、呼び出された理由は判っているようです。

テーブルの上には先ほど料理長が作ったものがあります。

それについて何も、そう、リチャード様とセルジアス殿も何も言わないのです。


陛下が溜め息を吐くように息を吐き出されました。


「このような場所に呼び立てて申し訳ない。だが、余人を交えない方がいいかと思い、こちらに来てもらったのだ」


陛下は一度言葉を切るとセルジアス殿をジッと見つめた。セルジアス殿は静かに見返していたが、その頬に笑みが浮かんだ。陛下が眉を寄せたが諦めたかのように、フッと表情を緩めると息を吐いて続きを話し始めた。


「こちらにある物に見覚えがあるだろう。昨日フォングラム家にいき教えてもらったものだと、フッフス料理長が作ってくれたものだ」


その言葉に視線が料理長に集まりました。料理長はリチャード様を見ていましたが、どちらの表情にも何も浮かんでいませんでした。


「これはセリアテス嬢がそちらの料理長に伝えたものだと聞いたのだが本当だろうが」

「それが本当ならどうだというのだ」


セルジアス殿が微笑みを浮かべたまま陛下に言葉を返しました。


「・・・何故、黙っていた」

「言わなきゃならんことか」

「セルジアス、お前は!判っていてこんなことしたのか」

「なにがだよ」


陛下はテーブルをこぶしでどんと叩いた。


「これが世に出たらどうなると思っているんだ。ただじゃすまないんだぞ。下手したらひどい騒ぎになるだろう」

「じゃあ、世に出さなきゃいいだろう」


そう言ったセルジアス殿の胸倉を陛下は掴みあげました。隣にいた魔術師長が慌てて止めます。


「お止めください、陛下。それにセルジアス殿も。言葉使いをもう少し」

「今は我らしかいないからいいだろう。なあ、レイフォード」


その言葉に陛下はセルジアス殿から手を離しました。


「何か真意があるなら聞いてやる」

「別に真意なんてないさ。どうしたものか、判断に迷っていただけだ」

「お前がか」

「おいおい、俺だって判断に迷う時もあるさ」


口調が完全に私的な時のものになっています。一応隣国の王族もいるのにいいのかと思いましたが、ジークフリート様もリチャード様も何もいいません。セルジアス殿に任せたようです。

陛下は頽れるように椅子に座ると机に腕をつき、それに頭を押し付けて呻くように声を漏らした。


「お前は・・・どうするつもりだったんだ、セル」

「だから、何のことだよ、レイ」

「セリアテスの知識のことだ。ボタンとホックについてはまだいい。あれのおかげで、民に活気が出てきたと報告が届いている。だがこれは、このレシピだけでも争いを生むぞ。料理長に訊いたがまだ他にもあるだろう。それに神殿での魔石の加工法。今までよりよほど簡単に出来たらしいな。魔法のこともそうだ。今までのことは間違っていたのかもしれないとは。・・・一体どうしたらいいんだ」


陛下の言葉にセルジアス殿の眼差しに、・・・憐れみのようなものが浮かんだように見えた。だが、一瞬でそれは消えて感情の浮かばない視線を陛下に向けたのだった。


「まあ、なるようにしかならないだろうな。こちらも各国との対応に追われて、そちらのことまで手が回らなかったのが事実なんだが。それより、そのプリンはそんなに衝撃だったのか」


セルジアス殿の問いに陛下が顔を上げられた。


「ああ、今までこのようなものを食したことはない。誰かが言ったそうだな。至上の甘露と。まさにそうだな」

「なあ、レイ。セリアは自分が伝えたもので争いが起こるのは良しとしないだろう。このプリンも皆が美味しそうに食べるのを見て喜んでいたんだ。他の物もそうだ。みんなが新しい技術に喜んでくれている。だがな、大元を間違えるなよ。元はなんだ。我々がしなければならないことは。それさえ間違えなければ答えは自然と出てくるだろう」


陛下はセルジアス殿の言葉にハッとしたように顔を上げました。


「そうだったな。このあとには大事が待っているのだった」

「ああ。だから、レシピがほしいのならくれてやればいい」

「それは、お待ちいただきたい、セルジアス殿」


2人で納得して話が終わりそうだったので、私は口を挟むことにした。


「何でしょうか、宰相殿」

「これをなあなあで済ますわけにはいかないでしょう。放置すればセリアテス嬢を危険にさらすことになります」


私の言葉に目の端でリチャード様が舌打ちをしたそうな顔をなさったように見えました。セルジアス殿が陛下から表情が見えないように私の方を向き、咎めるような視線を寄越します。私はそれを無視するように、言葉を続けました。


「ジークフリート殿下にお聞きしますが、セリアテス様の知識はどれ程の価値がありましょうか」



199話です。


うわーい!あと、1話で、200話です。


と、はしゃいでしまってすみません。

明日投稿できれば、連続投稿記録(私の中の)も最長になります(いや、今もなんですが)。


えーと、・・・まあ、ご質問などがあったらコメントください。


では、次話で、また。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ