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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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14-10 先の予定が・・・

イアン料理長はフッフス料理長に近づくと背中をバンバンと叩きました。


「そうか、そうか。じゃあ、今日は心置きなくここにいられるな。よーしよし。それなら夕食作りを手伝ってもらおうか」

「はっ?」

「手伝ってくれるならセリアテス様が教えようとしたマヨネーズを、俺が教えてやるよ」

「本当に?」

「もちろんだ。どうする」

「よろしく頼む」


いいのかな~、と思いましたが、イアン料理長が私にウインクしてきたので、任せることにしました。


「あっ、だが、他に用があったんじゃないのか。休みを申請したくらいなんだから」

「いや、他に用事があるわけじゃないんだ。もし、セリアテス様に許していただけなかった場合を考えて余分に休みを頂いただけなんだ」

「そうか。じゃあ、今日はここに泊まっていけ。良いですよね、奥様」

「ええ、いいわよ。客室を用意しましょうか」

「それはやめてくれ。あっ、やめてください。使用人用の部屋でかまいませんから」

「ふふっ。わかったわ。侍女長に伝えておくわね」

「ありがとうございます」


お母様も何となく楽しそうです。


「あっ、お・・・じゃなくて、お願いがあります。ルートガー公爵夫人には私がいることは内密に願います」

「わかったわ」


ああ、そうですよね。お母様の妹であるウルリーケ叔母様もフッフス料理長といとこになりますよね。でも、何で内緒なのでしょう。


「では、私達はいくわね」

「はい。あとのことはお任せください」


私はお母様と厨房を後にしようとしました。そこにイアン料理長が声を掛けてきました。


「セリアテス様、もしお知恵をお借りしたいことが出来たらお呼びしてもよろしいですか」

「はい。いつでも」

「では、何事もなければ明日のこのくらいの時間にお会いしましょう」


私は頷いて厨房からでました。

お母様と並んで歩きながら居間に戻ります。


「お母様、ウルリーケ叔母様に内緒なのはどうしてですか?」

「それはね、ウルリーケはマキシミリアムを見ると口うるさくなるのよ」


お母様が笑いながらいいます。確かに叔母様ならフッフス料理長にそうするでしょう。それで嫌そうに逃げるフッフス料理長。

想像しただけで笑えてきます。


『もう、いい加減になさいまし。マキシミリアム』


・・・幻聴?

いえ、前の私が聞いた声ですね。


「どうかしたの、セリア」

「いえ、想像できるなと思っただけです」

「クスクス、そうよね。想像できるわよね」


お母様が楽しそうに答えてくれました。笑い方が子供みたいです。

言わなくていいですよね。これは。思い出したと言っても声だけですもの。

逆に心配かけてしまうかもしれませんものね。


居間に戻ったところで、お母様とソファーに並んで座りました。


「ねえ、お母様。みなさまどんな顔をなさるかしら」

「ダメよセリア。ここで話して誰かに聞かれたら、驚かせられないじゃない」

「あっ、そうですね」


慌てて口を手で押さえました。私の様子に目を細めながらお母様がいいました。


「ところで、許してしまってよかったの?」

「フッフス料理長のことですか?えーと、私も年上の方に失礼な言い方をしたと思うので、お互いさまという事でどうでしょうか」

「身分ではあなたの方が上よ」

「・・・公式の場では必要かと思いますけど、私的な場なら身分は関係ないのではないですか。でなければ友達を作れませんもの」

「ふふっ。そうね。じゃあこの話はおしまいね」


それからお母様にルートガー公爵家の祖父母の話を聞きました。もう、お二人とも亡くなられているそうですが、夫婦仲は良かったそうです。

話しをしている間にみなさまが居間にいらっしゃって、お茶の時間となりました。

ここでも、マナーの勉強です。お茶会に招かれた時のマナーについてです。

・・・叔母様達が張り切って、アマリア様とギルベルト様が涙目になりました。

あの、ちょっと厳しすぎませんか。

アマリア様もギルベルト様も5歳になったばかり・・・あっ、5歳の私はお茶会でのマナーは出来ていたと・・・。なんか、ごめんなさい。


おじい様達が帰ってきて、夕食を食べたらルートガー家とアルンスト家は家に戻られることになりました。

夕食の席で、4日後に王宮で宴が模様されることになったと告げられました。


この宴はキャバリエ公爵・・・もといサンフェリス王太子一家を歓迎しての宴です。

本当なら、ジーク伯父様の立太子が分かった時点で開かれるはずでしたが、私のことがあったので神殿での聖別の儀が終わるまでは開くなといったそうです。あくまでも、強気なのですね、伯父様。


それで、もう一人の主役・・・そう、私です。女神様の愛し子である、私のお披露目を兼ねるそうです。

・・・いやだなんて言えませんよね。私、公爵家令嬢ですし。


なのに、何故にいい笑顔でお父様はこう言われたのかしら。


「セリア、嫌なら出なくていいんだぞ」


お父様の言葉にみなさま頷かれます。

・・・いい大人が・・・。


「・・・お父様、今回出席しなかったとしてもいつかはお披露目するんですよね。それならば、ジーク伯父様達と一緒の方が心強いですし、公式の場以外出席しないことのパフォーマンスになりますよね」

「パフォーマンス?・・・ああ、そうだね。これの後は新年の宴までどこにもいかないことにすればいいか」

「えっ、本当に新年まで公の場に出なくていいのですか」

「ああ。もちろんだとも」


この言葉に喜んだ私は、ポタージュスープを飲んだみなさまの反応を見るのを、忘れてしまったのでした。



186話です。


・・・もしもし、ソフィティアさん、ウルリーケさん。

自分の子供達を泣かしちゃダメでしょう。

いくらカテリアにいいとこ見せたいからって!


学園時代にカテリアは伝説の先輩となってます。ソフィティアはすごーく憧れてました。

ウルリーケは直接は知りませんが、姉がセルジアスと結婚してカテリアに会って、ファンになりました。

が、裏事情かな。


あっ、次話まで伸ばしたくなくてポタージュスープの感想を聞き忘れたわ。

よし、その言葉を一言足して・・・これでよし。


それから、改めてお礼を言わせてください。

秋月煉様 いつも私の愚痴や相談に付きあって頂きありがとうございます。

月光の姫が変な方向に行かなかったのも煉様のおかげです。

私、煉様の作品大好きですよ。

お互いにいい作品になるように日々精進しましょうね。


では、次話・・・。


おい、おじさん達酒飲み話にもってくな~!

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