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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第1章 セリアテスと記憶喪失と王宮の人々
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父話1-1 日記という名の記録

私の名はセルジアス・キンケイド・フォングラム公爵といい、8代目当主である。

今日から私は日記をつけようと思う。実際は日記の名を借りた記録記である。

なぜこんなことをするのかというと、我が娘セリアテス・クリスチーネ・フォングラムに起こった不可解な現象を後世に残すためである。

今までにこのような事が起こったとは、文献にも口伝えにも聞いたことがない。

国の方でも記録を残すだろうが、当事者の親であり国の重鎮としても記録すべしと思ったのである。


娘のことを語る前に今のこの国のことや我が家のことを話しておこう。


国の名はリングスタット王国。

国王を頂点に、王族、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵、騎士爵という位がある。

王族は国王、王妃、王子、王女。

国王の兄弟は国王が即位すると共に臣下に下ることになっている。

たとえ未婚の王女でも公爵位を与えられ臣下になるのである。

例外は兄弟が成人していないときだけで、成人するとともにすぐに臣下に下ることになる。

我が国には一代貴族という制度がある。家を継げない貴族の子弟や、平民で功績を上げた者に与えるものだ。武官に騎士爵、文官や国の発展に功績があった者に準男爵が与えられる。


我が家の始まりは7代前の国王の王弟で、隣国の王女を妻に迎えて、フォングラム公爵家を起こした。

なので我が家は代々各国との外交を主に担っている。


我が家は今、我々夫婦と息子と娘と暮らしている。

私の両親は健在だが家督を私に譲った時に領地の館に移っている。

王都にくるのは1年に一度あるかないかだ。


妻は、ルートーガー公爵家より嫁いできたミリアリア・ロドリアス・フォングラム。

息子はミルフォード・カイセル・フォングラム、10歳で私によく似た顔立ちをしている。

髪の色も私と同じハニーブロンドで、瞳の色は妻と同じエメラルドをしている。

魔力量も貴族として申し分なく、適性がある雷と風の修練だけでなく、他の属性の修練にも励んでいる。

第2王子と同い年ということもあり、側近候補として王宮に上がることも度々あった。


娘は、セリアテス・クリスチーネ・フォングラム、7歳。

妻によく似た顔立ちに私と同じトパーズ色の瞳をしていて、髪の色は母と同じ茶色だ。

娘は地と雷に適性があったが、魔力量は多くなかった。貴族としては少なすぎたのだ。


理由を語るにはまず、この世界のことを話さねばなるまい。


この世界には魔法がある。

ほとんどの者が魔力を持っているが、人によって個人差があり使える属性が決まっている。魔力量が多いものは、修練次第で全属性を使えたりするが、それでも全ての魔法を使えるわけではないのだ。

我が国では高位貴族になるほど魔力量は多かった。


後、この世界には魔物がいる。

魔物はこの世界のどこにでもいるが、数十年おきに大量発生することがある。

この時には強い個体が群れを率いるので、数千の数の群れになるらしい。

時には万に達したこともあったと文献では伝えている。


今から40年ほど前、我が領に近い隣国との国境付近で魔物の大量発生が起こった。

王国軍に協力するために諸侯も軍を派遣した。

我がフォングラム公爵家も軍を派遣し、父も参加したそうだ。

この時は幸いにも800頭ほどの群れで済んだらしい。

それでも、被害が皆無というわけにはいくはずもなく、父は師をこの戦いで失っている。

それも父を庇って亡くなられたそうだ。

彼は、勇猛果敢で武功をあげて、騎士爵の位をいただいた方だった。

その経緯は盗賊団の討伐を行ったときに、罠にかけられて隊長を失いバラバラになりかけたところを、彼の指揮で隊を立て直し盗賊団を壊滅に追い込んだからとそうきいた。

彼は、魔物との戦いのときには一隊を任されていて、この戦いが終わったら、副将軍に任じられ、男爵の位に上がるはずだった。


亡くなった彼には娘が一人残された。母親は2年前に亡くなっていて、他に身寄りはなかった。

まだ12歳ということもあり、フォングラム公爵家で保護することになった。

祖父母にしてみれば、息子の命の恩人の忘れ形見の後見をして、どこかいいところに嫁がせるまで面倒を見るつもりで引き取ったのだが、思惑は外れてしまった。

父が彼女を見初め妻に迎えたいと言い出したのだから。

もちろん周囲に反対された。理由は彼女の魔力が、少なかったから。

父は彼女が成人を迎える6年の間に周囲に彼女を認めさせ、彼女を妻に迎えた。


そう、私の母である。



17話目です。


お父様は日記を書くことになりました。



ここまで読んでくださりありがとうございます。

ブックマークをしてくれた方が100件超しました。


本当にありがとうございました。


では、次回で!


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