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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第1章 セリアテスと記憶喪失と王宮の人々
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従兄話 オスカー12 王位について思うこと

サンフェリスの北にはヴァルミンコスとスモーレンという国がある。多分大国であるスモーレンの事を言っているのだろう。あの国は我が国やリングスタットなど周辺諸国を自国に取り入れたくて狙っていると聞いたことがある。だけど、各国に一目を置かれるリチャードお爺様の娘である母上が嫁いだ我が国にはそうそう手が出せないようだ。


魔物の大量発生は間隔が開くほど大規模になると文献で読んだことがある。そして、兄上が言うように40年以上大量発生は起こっていない。だからって、まさか、そんなことが起こると考えていたなんて。兄上は僕よりも真剣にこの国の事を考えていたんだね。


「調査の結果はその野生動物たちが餌場としていた山が、火事により広範囲に消失したことによる縄張り争いが起こったことで、争いに敗れた群れが人里近くに出没し、家畜や畑の作物を荒らしたというのが真相だ」

「本当ですか」

「ああ。ローラント、今からそこまで肩肘を張らなくていいぞ。お前の申し出はうれしく思う。ジークフリートが私の後を継がなかった場合はお前に後を頼む。だが、私はまだまだ現役でいるつもりだからな。ことが起こった時には一緒に対処していこう」

「はい。伯父上」


そしてベルンハルト陛下は僕の方を見た。


「オスカーお前の気持ちを聞かせてくれるか」


僕はゴクリと唾を飲み込むと陛下の目を見つめた。陛下の目は厳しく僕を見つめていたが、やさしさも含まれているように思った。


「僕は父上が陛下の後を継いでも継がなくてもどちらでも構いません」

「ほう、どちらでも構わないとな。それはどういった意味か聞いてもいいか」


浮かんできたのはマーカスの最後の願い。


「僕は陛下の後を父上が継いでも兄上が継いでも構いません。補佐をするために全力を尽くします」

「自分がわしの後を継ぐことは考えんのか」

「たぶん僕が王位を継ぐことはないと思います」

「私の後を継ぐのは嫌か」

「いえ。陛下の後継者足るという評価はうれしく思います。ですが、僕は王には向きません。僕が王になるとしたら最終手段になると思います」


陛下が母を見た。


「カテリア、話しているのか」

「いいえ。話しておりませんわ。でも、この子は聡いです。むしろ私たちの言葉から気付いてしまうでしょう」

「そうか。おしいな。上に立てばどれ程国が繁栄するか」

「まあ。ですが、私はこの子の意見に賛成ですわ。強い力は軋轢を生みますもの」

「確かにな」

「なるようにしかなりませんわよ、陛下」

「そうだな。オスカー、王子になるのは構わないのだな」

「はい。微力ながら力を尽くします」

「わかった。話しは変わるがカテリア、リチャード殿にお会いしたいのだが、まだおられるか」

「ええ、館に滞在していますわ」

「では、急で申し訳ないが明日こちらに来てもらえるように伝えてくれ」

「かしこまりました」


陛下がお茶を飲もうとカップを持ち上げたが飲み干していたようで、テーブルにおいた。侍女を下げていたので、ベルをとり鳴らそうとするのを母が止めた。


「陛下、私がお入れしますわ」


母が席を立とうとするのを姉が制し、姉がお茶を入れて皆の前に置いた。陛下は一口飲み姉に話しかけた。


「うまいな。クラーラもこういうことができるようになったのか」

「嫌ですわ、伯父様。私をそこら辺の何もできない令嬢方と一緒にしないでいただけます」

「そうだな。・・・彼女もそう言っていたな」

「陛下。いえ、ベルンハルトお義兄様。今、ここには私達しかおりませんわ」

「?」

「泣いてあげてください。父として祖父として。国王の仮面を脱いでも誰も文句をいいませんわ」


母上の言葉に僕たちが国に戻ってから、陛下が感情をあらわにしたことがないのに気がついた。そして、伯父上の悲しみに共鳴できるのは僕達だけなのに気がついた。姉上も兄上も母の言葉に当然という顔をしている。僕たちの顔を見た伯父上は目を潤ませると静かに泣き出した。姉が手巾を手渡し受け取った伯父は、手巾に顔を押し付けるようにして嗚咽をもらした。


その翌日から6日間お爺様は王宮に滞在してベルンハルト陛下と話をした。もちろん公務の間に暇を見てということだったが。陛下と話をされていない時には、誰かしら貴族がお爺様を訪ねて来ていた。おかげで僕はお爺様と話があまり出来なかった。

僕たちはあの日から王宮でずっと寝泊りをしている。陛下はマーカスの部屋を使っていいと言われたけど、僕は他の部屋を使っている。兄上も同じだ。

陛下との話が済んだ祖父母はもう2日この国に滞在し、リングスタットに帰って行った。陛下が転移門の使用を許可したけど、領地に寄ってからリングスフォルトに行くと言われたので、転移門は使われなかった。


当分はリングスタットに行けないだろうとこの時は思っていた。

父上の判断次第では、もう気軽に国を出るのはかなわなくなるかもしれない。

ミルフォードやアルザスにも今までと同じように接してもらえなくなるんじゃないかと、僕は心配してたんだ。



172話です。


はぁ~。やっと4ヶ月・・・いや、3ヶ月前の話が終わりました。

いや、やっとと云うほどその部分は長くないんですけどね(=_=)


でも、オスカーがミルフォードを好きすぎるのはどうかと思うんだけど・・・。

それに、彼に語らせてから「天才児」のはずが普通の子に見えて仕方がないです。

なぜに?


では、また、次話で。



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