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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第1章 セリアテスと記憶喪失と王宮の人々
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従兄話 オスカー5 冷静な提案について思うこと

父上達はしばらく何も言わなかった。怒りを抑えるために時間を必要としているかんじだった。

幾分気持ちが落ち着いたのか父上が僕に聞いてきた。


「オスカー、何があったかわかったが、お前から何かあるか」

「えーと、特には無いと思うけど、部屋には近衛騎士が2人と侍女が2人いたから彼らから証言は得られると思うんだけど」


それを聞いて父は頷いた。


「セルジアス殿。今回の事の証言者に確認を取ってもらえるか」

「もちろん。すぐに行いましょう。もし隠し立てをするようなら容赦はしませんから」

「お待ちください。ジーク伯父上。父上も。事の真偽を調べてどうするつもりですか」


ミルフォードが静かに父たちに問いかけた。

それにいい笑顔の叔父上が答える。


「もちろん、抗議をするだろうな。そんなバカな発言をしたカークライトには王籍から抜けてもらう」

「私も正式に抗議をさせてもらうよ。一国の王子が同じ王族に喧嘩を売って来たんだ。買わずにしてどうするんだ」


父上が獰猛な笑顔をみせて答えている。ミルフォードはそれに怯えることなく父の目を見てはっきりと言った。


「やめてくださいませんか。それをされたら戦争になります」


ミルフォードの言葉に父と叔父達が、いや、僕以外のこの部屋にいるみんなが意外そうにミルフォードを見ている。セリアテスはわからないからか、きょとんとした顔をしていたけど。


「いや、戦争にするつもりはないが」

「そうでしょうか。確かに伯父上はその気はないかもしれませんが、これがベルンハルト陛下の耳に入ったらどうなります。伯父上のことを大切だと公言している方ですよ。その家族を侮辱されたと知ったら報復のためにいさかいが起きますよね。戦争にならなかったとしても両国の間に溝が出来るのは得策ではありませんよね」


ミルフォードの言葉に父たちは言葉を失ったようだ。呆然とミルフォードを見ている。

お爺様が一番先に立ち直ったようだ。


「この中で一番冷静なのはミルフォードのようだな。お前たち、そんなんでは外交官としてはまだまだだな」

「ええ。頭が冷えました。どうもうちを馬鹿にされたと頭に血が上ったようです」

「すみません、リチャード様。せっかくミルフォードが穏便に済ませようとしてくれたのに、台無しにするところでした」


父も叔父もミルフォードに軽く頭をさげた。

僕はミルフォードから目が離せなかった。馬車の中で言っていたことが現実になりかけて、それを阻止したんだもの。


「ですが、抗議しないわけにはいきませんよね。うちの沽券にかかわりますし」

「ああ、じゃが、ミルフォード。お前には何か考えがあるのではないのか」


お爺様がミルフォードに聞いてきた。


「考えというほどではないのですが、抗議をかねて出仕を控えていただけませんか」

「ほう、出仕を控えるとな」

「ええ、王宮には王子のいった「陛下に選ばれない女」を育てた家の者が出仕するのは不快でしょうから控えさせていただくと伝えて、領地に引っ込みましょう。ジーク伯父上も「陛下に選ばれない女」を妻にしたものが、リングスタットの王宮に顔を出すのは不快でしょうから、フォングラム公爵と同様に王宮に行くのはやめますと言って、一緒にフォングブルクまで行きましょう」


ミルフォードはニッコリ笑ってそう告げた。


「おにいしゃま、おでかけしゅゆの」

「そうだよ、セリア。領地の館にいこうね」

「うわ~い。セリアね、おはなしゃんがみたいにょ~」

「うん。ここと違うお花がいっぱい咲いてるよ」


ミルフォードと無邪気に話すセリアテスを見ていた大人たちにいい笑顔が浮かんできた。


「それではすぐに行動に移しましょう。荷物は最低限で。侍女の何人かは残りの荷物をまとめたら追いかけてくるように」

「ええ、それでいいわね。あなたたちも急いで支度をしなさい」

「はい、お母様」「「はい、母上」」


僕たちはそれぞれの部屋に向かおうとしたら叔父上達の会話が聞こえてきたんだ。


「アーマド、エグモント。お前たちは王都に残り、動きを報告してくれ。出来れば変な方向に暴走しないように誘導してもらえると助かるが」

「俺は無理だぞ、兄上。基本軍の方にいるからな」

「私から宰相様に話しておきます」

「よろしく頼む」


急いで支度を済ませると馬車に幻惑の魔法をかけてフォングラム公爵家を出発した。門を出て少し行ったところで騎馬の集団とすれ違った。

僕たちは3台の馬車に別れて乗っている。もちろんミルフォードと一緒さ。


「あれは王宮からの使者だろうな」


一緒に乗っていたお爺様がそう言った。


「父上達ももう出たかな」

「大丈夫じゃろう。紋章も判らないようにしたし、正門ではなく通用門から出ておるしのう。一番見つかりやすいのはわしらじゃからのう」


そうなんだ。僕たちは王都を出るために別々の門から出発したんだ。そして正門から出た僕たちがある意味おとりの役目を負わされたんだ。



165話です。


そういえばセリアちゃんのことを話してないよね、オスカー。

2歳児のセリアちゃん。かわいいだろうな。


さてさて、ミッションが発動しました。

敵に気付かれずに王都を脱出せよ!


どうなりますことやら。


それでは、次話で。また。


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