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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第1章 セリアテスと記憶喪失と王宮の人々
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母話2-4 疑義・・・

お義父様にレオポルド神官長も笑い返しました。


「いやいや、私のことよりもセリアテス様です。大変お疲れになられたでしょう。今宵はゆっくりお休みいただけるとよろしいのですが」

「孫たちは男の子と女の子と、それぞれ一つの部屋で休むことになったからの。今頃話に花が咲いておるだろう」

「それならば安心でございますな」


神官長がうんうんと頷いています。

それにお義父さまが雰囲気を変えて問いました。


「さて、それで。大神殿は何か言ってきたのか」

「はい。あの宣言を聞かせましたし、何と言っても、先にミュスカリーデ様からお言葉があったので、セリアテス様のご意思を尊重するようにと」

「ふん。取り込めと言ってきたのではないのか」

「滅相もございません。女神様のお言葉に逆らうようなものはおりません。そのような発言をするものがいれば処罰の対象になりますので」

「解っているのなら、わしは何も言わん」

「はい。リチャード様。神殿内のことはお任せください」

「これから神官を志す者も増えるだろうのう」

「そうですね。セリアテス様にご迷惑が掛からないように、引き締めてまいります」

「それで、フォンテインに来いとは言わなかったのか」

「・・・セリアテス様に於かれましては、是非、ご来訪賜りたく存じあげますと、お伝えしてくださいと承りました」


お義父様は何も言わずにセルの顔を見ました。セルが口を開きました。


「セリアテスに伝えるが、まあ、無理だろうな」

「・・・理由をお聞かせ願えますか」

「まず、セリアテスが大神殿を訪ねることを望まないだろう。次に周りの国が定まらない状態で、旅は出来ない。そして、最大の理由だが、セリアテスは知識を欲している。忘れてしまった分、勉強をして皆に追いつきたいと思っている。今日まで体調を気遣って勉強らしい勉強をさせてこなかったから、セリアテスの不満が爆発しそうだ」


・・・あなた、何故そんなに楽しそうにおっしゃるのかしら。

お義父様との遣り取りで神官長は額に汗を滲ませていたのに、今は流れ落ちるほどよ。


「わかりました。大神殿には今はご無理のようだと伝えておきます」

「ええ。よろしくお願いします」


夫の笑顔に神官長が手巾を取り出して顔の汗を拭いていましたわ。


今度はセルがお義父様の顔を見ました。


「それじゃあ、次かのう。まずは貴族たちへの対応かの」

「そうね。セリアテスに近づこうと招待状が山のように送られてくるわね」


お義母様がおっしゃられたわ。それにカテリア様が返事をしたの。


「サンフェリスの名で牽制しましょうか」

「それでしたら、神殿からとして布告いたしますが」


レオポルド神官長も言われましたけど、お二方にも大した牽制にならないことはお分かりのようです。


「私からよろしいでしょうか」


そう口を開いた私に視線が集中します。軽く息を吸うと私は話し出しました。


「先ほどセリアと話をして、セリアからそのことについて提案を受けましたの。セリアはこう言いましたわ。「私は女神様に愛し子と呼ばれました。その私の行動は一挙手一投足を見られることになるのでしょう。だからこそ、これからの私の行動は慎重を期さなければならないと思います。他の貴族家に対しても不公平があってはならないと思います。なので、お誘いはすべて断って頂きたい」と」


皆様セリアからの言葉を聞いて目を瞠りました。

ビアンカとクラーラから聞いたとはいえ、ちゃんと考えて自分の意見として私に言えたセリアは、女神様に「愛し子」と呼ばれるだけのことはあるわね。


「本当にそう言ったのかい、ミリー」

「ええ。神殿で控室にいた時にビアンカから、これから招待が増えるだろうと言われたそうですわ。それから、「女神様の愛し子」という立場についても判っているようですの。クラーラにも「公式の場以外の招待はお断りします」と公言すれば、招待状は来なくなると、言われたそうですの。その後考えた結果の言葉だと思いますわ」


セルはチラリとお義父様と目を合わせましたわ。


「セリアがそう言ったのなら、私達が何かする必要はないな。レオポルド神官長、フォングラム侯爵家当主として、また、「女神様の愛し子」の父親として要請する。「女神様の愛し子」であるセリアテスが「公式の場以外の招待はお断りします」と言ったと、布告することを」

「はい。承りました」


レオポルド神官長はセルジアスに目礼しました。


「では、一つは片付いたかのう。そういえば、神官長。女神様に言われたもう一つのことはどうなっておるかのう」

「はい。偽りの名を騙りし者たちは、捕らえて取り調べをしているところです。皆、女神様直々に言われたことで観念したようで、非常に協力的に話しているようです」

「他の神殿はどうかの」

「それも、さほどの混乱もなく捕縛出来ているようです。中には自分から懺悔している者もいると聞いております」

「それはまた重畳、というところかのう」


そう言って、お義父様は笑いましたわ。



159話です。


今回のサブタイトルの疑義。

意味は、疑わしい意味。意味がはっきりしない所。 だそうです。


本当は懐疑でもいいかなと思ったけど、疑からの言葉を何となく続けてしまいました。

内容を読むと、サブタイトルとは関係ないように思われるかもしれませんが、ミリーが疑っていることを強調したかったのでつけました。


では、また、次話で!

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