母話2-3 疑問・・・と・・・娘のこと
セリアの様子に驚きながらも、私は微笑みながら答えたの。
「セリアはずっとそれを考えていたの」
「あ、いえ、ずっとではないです。でも、ビアンカに聞いて、お父様達に任せておけば大丈夫と言われましたが、クラーラお姉様がおっしゃった「公式の場以外の招待はお断りします」と公言すれば、招待状は来なくなるのなら、お母様達の負担が軽くなりませんか」
真剣に祈るように私を見てくるセリアを、右手で引き寄せ抱きしめたわ。
「セリア、それはあなたが考えなくていいことよ。親である私達の務めですもの。でも、ありがとう。私達のことを考えてくれたのね。あとで、お父様にもお話ししましょう。もちろん賛成してくれるわ」
体を離してセリアの顔を覗き込めば、嬉しそうに微笑んだの。でも、すぐに何か気がかりがあるのか、俯いてしまったわ。
「どうしたの。何か気にかかることがあるの」
「・・・・・」
「当ててみましょうか」
私の言葉にセリアが顔を上げたわ。でも、すぐ視線をそらしたの。
「そうね。神殿で大人たちを指揮してたことに関係あるのではなくて」
「指揮・・・なんてしてません」
「そう? どう見ても、セリアの言葉でみんなが動いていたように思うわよ」
「・・・・・」
「ローザ王女様やビアンカが離れていくかもと心配しているの?」
「おかあさま・・・」
あらあら、目にみるみる涙が溜まって来たわ。
「大丈夫よ。そんなことにはならないはずよ」
「でも・・・お母様」
「心配なら訊いてみればいいじゃない」
「訊くって。・・・でも」
「ルートガー家もアルンスト家も来ているわよ」
「えっ?」
「皆で話をするために家に来ているもの」
セリアの顔に複雑な感情が浮かんでいるわね。うれしい気持ちと、恐れ、かしら。
ふふふっ。私もエリザと言い合いをした後、顔を合わせた時にこんな感情を持ったわね。
「そろそろ居間にいきましょうか。皆様もそろそろ着替えが終わってくるころよ」
そう促すと、戸惑いながらも一緒に居間にいったわ。
居間にはまだフォングラム家の者しかいなかったけど、すぐにバタバタと足音がして、ビアンカが飛び込んできたの。そのままセリアの所まで来ると抱きついていたわ。
あら、まあ。この2人の関係も変わったのね。セリアに負けない淑女になろうと努力をしていたビアンカが、廊下を足音を立てて走ってくるなんて。
うふふふっ。嫌だ。本当にウルリーケにそっくりだわ。そんなに心配しなくてもセリアは大丈夫なのに。
ほら、やってきたウルリーケ達も呆れているわよ。
ふふふっ。ウルリーケ、気がついてないの。いつも、私に対する時のあなたと同じよ。
皆が揃ったところで、夕食になったのだけど、今日は、いつもと違う形になったわ。料理が何種類もテーブルに並んでいて、自分たちで好きなものを好きなだけ取って食べるやり方をしたの。食べるためのテーブルは別に用意されているわ。もちろん料理の所には給仕をする者がいるから、その者に取ってもらって運ばせることもできるの。
この形式はバイキングというそうなの。しばらく屋敷に軟禁状態だったセリアが、料理長と仲良くなってその時に話をした形式なの。
今日は、疲れて帰ってくるセリアに少しでも食事をさせようと考えてくれたみたいなの。昨日の昼間、料理長からこの提案を受けた時には驚いたわ。でも、何かあるとすぐ食べれなくなってしまうセリアのことを考えてくれたのですもの。勿論、お義母様と相談して許可したわ。でも、それが功を奏したようね。予定になかったルートガー家とアルンスト家が来ても、慌てずに食事を提供することができたもの。
それに皆様、新しい形式に驚いていたけど、喜んでくれたわ。
カテリア様もいつもの料理が形式が違うだけで新鮮で美味しく感じるとおっしゃっていたし。
うふふ。大成功ね。
セリアも、皆につられていつもより食べていたわ。
それから、子供達はまた男の子、女の子で一つの部屋で眠ることにしたようで、また、ベッドを運び込んだりしていたわ。セリアが楽しそうだからいいわね。
セリアのことはクラーラ達に任せて大人はフォングラム家の居間にいたの。
しばらくすると来客があったわ。その方と共に私達は礼拝堂に向かったの。
礼拝堂の中に入るとセルジアスが魔法陣を作動させたわ。
嫁いできた時にこのことは聞いていたけど、実際に動かしたのを見たのは初めてだわ。
というより、なんでこんな仕掛けがあるのかしら。
確か、防御の魔法陣でこれを動かすと、この中の会話は外に聞こえなくなり、中に入る事が出来なくなるとか。
本当に不思議だわ。
来客の、レオポルド神官長が口を開いたわ。
「今日は皆様お疲れ様でした。ご協力に感謝いたします」
「いや。レオポルド神官長もお疲れでしょう。わざわざご足労いただき申し訳ない」
お義父様が言葉を返したの。
そして、ニヤリと笑ったのでした。
158話です。
今回のサブタイトル、本当は娘の事と・・・にするつもりでした。
ただ、今回の母話が「疑」という漢字から始まっているので、何となく揃えてしまいました。
それでは、また、次話で会いましょう。




