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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第1章 セリアテスと記憶喪失と王宮の人々
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母話2-2 疑念・・・と

夫の顔を見ていたら、ミルフォードが私の代わりに聞いてくれたわ。


「父上、アルンスト家とルートガー家がくるのですか」

「そうだよ。これからのことを話さないとならないからね」

「女神様の愛し子、のことですか」

「ああ。まさか、女神様が降臨なされるとは思わなかった」


本当に? あなたとお義父様は知っていたのではないの?


「そうですね。女神様からセリアを守るように言われましたし」

「そうね、ミルフォード。女神様からお言葉を賜ったことですし、皆でしっかりセリアテスのことを守りましょうね」

「はい、お婆様。それにしても女神様のお姿はとても麗しかったですよね」

「ええ。あの方がこの世界を御創りになられたのよね」

「お声も涼やかだったのう。クックックッ。アイドロフ達も女神様直々にああ言われては、弁解のしようがないのう」

「そうですね。他の神殿でも、偽りの名を推奨していた者達は、これで一掃されるでしょう」


お義父様と、夫が笑い合っています。

そうね。最近の一部の神官の増長ぶりは酷いものでしたもの。


「残念だったのは、後光がまぶしくて麗しいお姿がよく見えなかったことですね」


ミルフォードの言葉にセリアの髪を撫でていた手が止まりました。


えっ、今、何と言ったの?

お姿が良く見えなかったですって?

あの髪の色が見えなかったの。


「そうじゃのう。おそば近くまで行ったが、恐れ多くてお姿をよく見れんかったのう。こんなことならよく見ておけばよかったかのう」

「父上もか」

「セルジアス、お前もか」


そんな。では、気がついたのは私だけなの。

だって、あの髪色はセリアと同じ・・・。


「母上、どうかなさいましたか」

「えっ、何。ミルフォード」


私の様子にミルフォードが声を掛けてくれたけど、私は今、どういう表情をしているの?


「ミリー。疲れたんだろう。セリアを気づかって、ずっと気を張っていたからね。もう少ししたらうちに着くから、君も休むといいよ」

「いえ、大丈夫ですわ。皆様がいらっしゃるのですもの。私だけ休んでいられませんわ」


何とか微笑みながら答えます。ミルフォードが安心したような顔をしたので、変な表情ではないのでしょう。


「ミリアリア、皆を迎えるのは家の者に任せて、まずは楽な服に着替えましょう。セリアテスのこともね」

「はい。お義母さま」


微笑んで返事をして・・・。でも、頭の中では考えていたの。


さっきの言葉が本当なら気がついたのは私だけなの。

ならば、黙っていれば、セリアを神殿にとられないですむの?

女神様とセリアの髪の色が同じだという事を。

神官長は? 何も言っていなかったけど気がついていないの。


私は考えるのに集中していてみんなが私を見ているのに気がつかなかったの。


館に着いてセリアを部屋に運ぶと、私は服を着替えるだけにするつもりだったわ。でも、侍女長に言い含められたサリア達にお風呂に入れられてしまったの。お風呂から出たら全身のマッサージまで。

皆様をお待たせしてしまったかと思いましたが、皆様も館に着いてお風呂に入られたそうだわ。


私は自分の支度が済むと、セリアの所に行ったの。

セリアもお風呂に入って着替えていたわ。まだ、眠いのかボーとしていたの。

部屋に入って来て、ソファーに隣り合って座ったら、セリアがもたれかかってきたの。

いいえ、そのまま滑って膝枕になってしまったわね。


「疲れたでしょう、セリア。でも、眠るのはご飯を食べてからにしましょうね」


セリアがモゾモゾと動いて仰向けになって私のことを見上げてきたわ。はしたないって怒るべきかしら?


「お母様」


そう言ったきり、ジッと私を見上げてきます。


「なあにセリア」


微笑んでセリアの髪を撫ぜたら、一瞬目を見開いて、すぐに目を閉じたの。

ねえ、セリア。何を考えているの。話してくれないと私にはわからないわ。

目を開いたセリアの瞳に、何かを決意した色が見えたわ。

セリアは体を起こそうとしたから背中に手を当てて手伝ったの。

座り直したセリアが真剣な表情で私のことを見てきたわ。


「お母様。私、どこにも行きたくありません。この家にいたいです。お母様達を待っている間に、ビアンカに言われました。これから私と親しくなるために、お茶会や舞踏会の招待状が増えると思うと。舞踏会の意味も聞いています。舞踏会は子供の誕生会で子供が主役で、各家との交流が目的なんだと。あと、私を招くことでその家に箔がつくとか」


そこでセリアは言葉を切りました。

私は相づちの代わりに頷きました。


「ビアンカが言いたいことはわかります。私は女神様に「愛し子」と呼ばれました。その私の行動は一挙手一投足を見られることになるのでしょう。そして、いえ、だからこそ、これからの私の行動は慎重を期さなければならないと思います。他の貴族家に対しても不公平があってはならないと思います。なので、お誘いはすべて断って頂きたいのです」


セリアは私の左手を両手で握り抱え込むように抱きしめたの。



157話です。

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