12-14 味見は・・・一口ずつね
「それで、今何個皮を剥いてあるのですか。間違えないためにも必要ない分は片付けてください。あと、鍋はもう少し平たい鍋は無いのでしょうか。これじゃあ深すぎます」
用意された鍋が寸胴なので文句をいいます。
それを聞いた料理人の方が大きくてそれほど深くない鍋をもってきてくれました。
その中に先に切ってあったリンゴを重さを量ってから入れていきます。
私はそばでリンゴの重さを足し算していきます。
だってね、紙を用意して書こうとしたんですよ。邪魔だし足すだけなら暗算で十分ですよね。
リンゴを剥き終り重さがでたので、その半分の量の砂糖を量ってもらいます。
鍋に量った砂糖を全部入れようとしたので、待ったを掛けます。
あっちの液(リンゴは料理人のお腹の中に消えました)がリンゴ5個分を作るのに使ったけど、さっき食べた感じだとリンゴ5個と同じくらいの砂糖が使われていたみたいだから・・・。
その分を引いて砂糖を鍋に入れ、あの液も鍋に入れてもらい火をつけてもらいました。
「ワインを用意してください」
「どういったワインがいいですか」
「赤ワインで飲んであまりおいしくないものを用意してください」
「はぁ~、あっ、はい。わかりました」
あの男の子が厨房を出ていきました。ワインは地下に貯蔵室があるそうです。
鍋が沸騰する前に戻ってきました。
「こちらです。・・・が本当にいいんですか。これは酸味がきつくて美味しくないのですが」
「それで充分です。蓋を開けてください」
開けてもらったワインを用意してもらったグラスに出します。すこし濁った感じです。布を用意してもらい、さっきコンポートを作った鍋にワインを開けて濾すことにしました。侍女さんに布を押さえて貰いワインを注ごうとしましたら、横から手が伸びてワインの瓶を取り上げられました。料理長が私の代わりにワインを濾してくれました。濾したワインは鍋の中に入れてもらいます。リンゴから出た水分をみてもう少し水が欲しいなと周りをみたら、いつの間にか用意されていました。水をリンゴが浸るくらいまで足して、沸騰するのを待ちます。沸騰したら火を弱めて貰い20分コトコト煮ます。リンゴが透きとおったので火を止めてもらいました。
味見用に小皿とフォークが用意されて、また私と王妃様とお母様で味見をしました。
「まあ!ワインで煮たものも美味しいわ」
「本当にそうですわね。あっさりと食べたいときにはワインが入らない方がよろしいですわね」
「でも、この液が勿体ないわね。何かに使えないかしら」
「それなら、お肉を焼いたときのソースに少し入れるとか、水で割ってジュース変わりにするとかできますけど」
「それはぜひ試してみたいわ」
お2人の感想に返事をして私も味見をしました。
うん。これならいいですね。
料理長にも味見をしてもらいました。料理人の方がチラチラ見てますが、ダメですよ。みんなで味見をしたら足りなくなっちゃいますからね。みんなの視線に料理長が居心地悪そうにしています。
仕方がないから、余分に用意したものを小さく切って一口ずつを味見してもらうことにしました。
「うまい」
「さっきのもうまかったけどワインで煮るのもうまい」
「もう少し食べたい」
料理人の皆様に気に入っていただけたようです。
料理長が私に聞いてきました。
「これは他の果物でもできますか」
「はい。イチジクやブドウでもできます。イチジクとブドウは皮をつけたまま煮てください。甘い果物はレモンの果汁を少し加えるといいと思います」
「そうですか。今度試してみたいと思います」
「そろそろいいかしら。皆は仕事に戻りなさい。セリアテス、お疲れさま。部屋に戻りましょう」
王妃様の言葉に立ち上がった私は、目が回り倒れてしまいました。
目が覚めたら見慣れた部屋でした。
そのことにホッとしてまた目を閉じました。
今はこの部屋には誰もいないようです。
体を起こそうとして頭に痛みを感じました。ズキズキします。
この症状には覚えがあります。
まさか・・・二日酔いですか?
これはワインを入れた鍋のそばにずっといたのが悪かったのでしょうか。
気化したアルコールを吸い込んでしまったから?
それにしては、アルコールに弱くなった気がします。
それとも、この体が弱いのかしら?
そんなことを考えているうちに、また眠ってしまったのでした。
ハァ~ッ ハァ~ッ ハァ~ッ
う~ん。 苦しい~。 体があついよう~。
身体が燃えているみたいに熱い~。 燃える? えっ? 燃えている?
燃えているのは何? わたし? 私が?
誰かの手が額に触った感触に、意識が浮かびあがりました。
うっすらと目を開けると私の顔を覗き込んでいる人がいます。
薄暗くてよく見えません。
「セリア、目が覚めたの。大丈夫。苦しくない」
お母様の声です。
「お・・かあ・・さま」
「かなり熱があがったわね。水を飲む?」
その言葉に頷きました。誰かが身体を支えて起こしてくれました。水をコップに一杯飲むとまたベッドに横になりました。そして、またすぐに意識は暗い闇へと落ちていきました。
137話です。
これで、17日話は終わります。
セリアちゃんがひっくり返りました。セリアちゃんが目が覚めてから二日酔いと勘違いしましたが、二日酔いではないですよ。
あっ、そうそう、ずっと書きそびれていましたけど、セリアちゃんファン(信望者)急増中です。
まず、最初に王宮にいた時に侍女さん達。それから、セリアちゃんの部屋を警備していた衛兵さんたち。もちろん王家の方々。あっ、セリアちゃんの家族。但し爺様は除く。アルンスト侯爵家、ルートガー公爵家、キャバリエ公爵家。それから、フォングラム公爵家使用人。今回の御前会議に参加した、公・侯爵家夫妻。で、王宮料理人の人々。王宮医師の方たちはこのあと落ちます。医師長は・・・どうなんでしょうか?パウル・ウルバーン医師は隠れ(マイン様にはバレバレでしたが)信望者です。
さて、次話は日にちが少し飛びます。
やっと話が進むかな?
ここまで読んでいただきありがとうございました。




