12-12 コンポートはね、時間をおくのよ!
私の宣言にお母様や侍女さん達が慌てています。
「待ちなさい、セリア。あなたは熱があるのよ。いえ、それ以前に貴族の令嬢が厨房に入るものではないわ」
「いいえ、お母様。これだけは譲れません。このままではあのリンゴは酸っぱいというだけで捨てられてしまうのです。それがひと手間加えるだけで美味しく食べられるのですよ。絶対に作ってギャフンと言わせてやるんだから」
「ほおー、そこまで言うのなら作ってもらおうか。うまかったら謝罪でも何でもしてやる」
フッフス料理長が私を見下ろして言います。きっと料理のことを何にも知らない小娘とでも思っているのでしょう。
「ダメよ、セリア。許可できないわ」
「でも、お母様・・・」
私の体を心配してくれているのはわかります。ですが、私も引けません。なんとかお母様を説得しようとしましたが、首を縦に振ってくれません。
「あの、公爵夫人、セリアテス様。私達にお手伝いさせて頂けませんか。セリアテス様はそばで指示を出してください。私達が作業をさせていただきますので」
侍女さんがそう言ってくれました。その言葉にお母様は渋々頷いてくれました。
厨房に移動しながら器具について聞いてみました。秤・・・は、一応あるそうです。計量カップや計量スプーンはないそうです。・・・仕方がないから目分量・・・は、無理です。とにかく秤をみてから考えましょう。
厨房に着きました。材料を用意してくれましたが、砂糖は貴重品だから無駄にするなと言われました。
で、秤です。上皿天秤の秤でした。まずはリンゴの重さを量ってもらいます。リンゴは5個使うことにしました。その重さの半分の砂糖を用意してもらいます。それから、今回は水で作ります。
侍女さんがリンゴの皮を剥いて、先に切ってあったリンゴと同じくらいの大きさにしてくれました。鍋に入れてもらい砂糖と、水は適当なコップに1杯分入れて火にかけて貰いました。沸騰したら火を弱めて貰います。厨房の中に甘い匂いが広がります。厨房で働いている人たちがチラチラと私達の方を見ています。そして20分、リンゴが透きとおったら火を止めました。
私は隅の方に用意してくれた椅子に座っています。さて、どうしましょうか。本当は冷まして冷やしたいところなのですが・・・。
フッフス料理長がそばに来ました。半信半疑に訊いてきます。
「もう出来たのか」
「はい。出来ましたが、味を染み込ませるためにも1時間ぐらい置いておきたいのですけど」
「それならそこの隅にでも置いておいてくれ。1時間経ったら知らせにいくから、部屋にもどっていて貰おうか」
まあ、確かに邪魔ですよね。鍋を移動させて蓋をして厨房を後にしました。
部屋に戻ると、あら、伯母様達が勢ぞろいです。
どこに行っていたのか聞かれたので、リンゴのコンポートを作りに行っていたと話しましたら・・・。ビアンカに怒られました。熱をだしているのに何をしているのかと。お母様もウルリーケ叔母様に怒られていました。
そうしている間に1時間経ちました。知らせに来てくれないので厨房にいくことにしました。
近づくとリンゴの甘い匂いがします。もう、匂いが薄れていなくてはおかしいのに首をひねりながら厨房の中に入りました。
「「「あっ」」」
料理人の方が声をあげました。匂いの元は先ほど使わせてもらったコンロの所からです。
えっ?リンゴを煮ているのですか?ん。これは。
「もう少し火を弱めてください。火が強いままだと焦げてしまいます」
慌ててそばにいる人が火を弱めました。そばに行って鍋を覗きました。あー、このままじゃ焦げます。
傍にあったコップを取り水を・・・。あれ、水はどこでしょう。キョロキョロしていると料理人の方が、水を用意してくれました。
「箸かヘラをください」
木のヘラを渡してくれました。水を少しずつ入れながらヘラでかき混ぜます。良かった。飴になりかけていたけど、うまく溶けてくれたわ。
隣にいる料理人に火を強くしてくれるように言いました。沸騰したところで、また弱めてもらいました。
うん。これでいいですね。
そうして周りをみましたら、身を縮こまらせている料理人の方たちが目に入りました。
料理長がそばに来ました。
お母様がすごくいい笑顔で料理長をみています。
「これはどういうことかしら」
「申し訳ありませんでした」
料理長が何か言う前に、端の方にいた男の子が謝ったと思うと、頭を下げました。
料理長が舌打ちをした後、説明をしてくれました。
私達が戻った後、厨房も休憩時間となりみんな一休みをしていたそうです。一足早く休憩を切り上げた男の子が夕食の支度の準備をするために厨房に戻り・・・。はい。リンゴのコンポートが気になって蓋を開けて覗き、つい味見で一切れ食べ、それを見つけた他の料理人も怒ろうしたけど、彼があまりに美味しい美味しいというので味見をし、また、他の料理人が・・・。気がついたら3切れしか残っていなくて、慌てて作っていたそうです。ただ、横目でチラチラと見ていたのと、私達にバレないようにと時間を短縮しようとして火が強いまま作っていたそうでした。
説明した後料理長が気まずそうに私の顔を見てきました。
「先ほどは失礼しました。とても美味しく頂かせていただきました」
そう言って頭を下げました。
135話です。
リンゴのコンポート・・・。今は6月。あー、作れない。書いてたら食べたくなりました。ぐすん。
さて、プチ対決。あっさり終わりました。
見習い君がやらかして、他の料理人も続きました。
残りの3切れ。うふふふ。誰のお腹に消えたかお判りですね。
王妃様出番ですよ。きっちりシメて・・・?
あれ、その前に・・・。
わかりました。きっちりシメてください。
あっ、補足。
フッフス料理長が見下ろしていたのは、みくだしていたのではなくて、ソファーに座っているセリアちゃんを、みおろしていただけです。・・・こんな注釈いらない?はい、すみませんでした。
それから、セリアちゃんは起きた時に子供用ガウンを着ています。パジャマで、料理長と会ったわけではないのです。厨房に行った時にはドレス(ボタンがある)に着替えてますからね。ちゃんと改行と一列空けて・・・って、わかりませんね。書かないと。
それでは、次話で会いましょう。
補足を忘れていたので、追記します。
料理長の言葉使いについてです。感想で指摘がありました。
後ででてきますが、ミリアリアが言葉使いに何も言わなかったことにも関係しています。料理長はミリアリアと親戚関係にあり、家を飛び出して料理人の道に進みました。言葉の悪さはその修業時代のせいです。気に入らない相手には言葉が悪くなります。それに、彼が王宮で働いていることにリチャードも関わっています。リチャードが腕のいい料理人がいると引き抜いてきたら、ミリーの親族・・・。丁度、王宮の料理人に空きが出来彼が入り、料理の腕を認められて料理長になる。という流れでした。王宮にいる間に彼は天狗になっていて、王宮での昼食会におけるセリアちゃんの料理の感想があれでした。
ということです。




