12-6 えーと、対決?・・・ですか
おじい様の迫力にみなさま何も言えずに見つめています。私の隣に座っていたお父様が立ち上がりました。
「父上、言い過ぎです」
「ふん。これくらいの言葉で青くなっていて事に当たれるわけなかろう」
「ですが、もう少し言い方があったと思いますが」
「そうよ、リチャード。言葉を間違えちゃだめよ」
おばあ様が舞台の上に上がってこられました。
「皆様、お久しぶりです。私からも補足させていただきますわ。私が住んでいた村は前回の魔物の討伐をしていたところから、山を一つ挟んだところでしたの。討伐隊が討ち漏らした魔物の群れに襲われて、村は壊滅しましたわ。58人いた村人も助かったのは7人のみでしたの。ああ、私はその場に居りませんでしたのよ。王都で行われる式典に参加するために村を離れておりましたから。式典が終わってから村に戻りましたが、酷い有様でしたわ。普通の民家では魔物の侵入を阻むことなどできませんわね。市井に下りられる方はお気をつけあそばせませ」
おばあ様はそんな辛い体験をなさっていたのですね。
おばあ様の言葉に男性は青い顔を女性は・・・なぜでしょう?赤い顔をなさっています。おばあ様を憧れの目で見ている気がするのですが?何人かの女性は隣の男性を睨んでいます。
あの、この国は・・・。いえ、やめておきましょう。
「セレネ様、ご安心ください。そんな臆病風に吹かれるようなものはここにはおりませんわ」
「まあ、そうなの。フェルセス公爵夫人」
「いやですわ、セレネ様。コリンナとお呼びくださいな。ええ、もしそのような者がおりましたら、すぐに当主をすげ替えさせますわ」
「あらあら、頼もしい事。この国は男性の方が決断力がないのかしら」
「そうですわね。リチャード様やセルジアス殿のようにわかっている方は少ないですわね」
おばあ様とフェルセス公爵夫人は、お年は同じくらいかしら。お二人の言葉に他の女性もみんな頷いています。
なんでしょう。おばあ様からカリスマ性を感じます。
「では、皆様よろしいかしら。魔物の大量発生が起こる可能性が高いことはお分かりいただけたのよね。そして、そのために孫のセリアテスが素晴らしいものを伝えてくれたのよ。そのために我が孫たちもここに参加させたのだから」
おばあ様の言葉に女性陣は目を輝かせました。ええ、そうですね。女性は新し物好きでしたね。
そしておばあ様は私に手を差し伸べました。私は立ち上がりおばあ様のそばに行こうとしました。
「お待ちください」
水を差すように声をあげ、立ち上がった人物がいます。その人は舞台に上がってきました。
「お話しはよく判りました。ですが、セリアテス嬢が伝えたというものを披露するのは、お待ちください」
「まあー、なぜですの。アイドロフ神官」
やはり神官なのですね。
アイドロフ神官はおばあ様を無視して、私を見てからにこやかに笑って言いました。
「セリアテス嬢は「アラクラーダ様の神子」です。彼女が伝えたものは神殿に寄与されるべきものです。勝手なことはしないでいただきたい」
「これは異なことをおっしゃる。セリアテスはまだ「アラクラーダ様の神子」ではないというのに」
「いえいえ。ここまでの知識をお持ちなのです。「アラクラーダ様の神子」でないわけがないでしょう」
「そちらこそ何を聞いていたのだ。セリアテスはまだ、聖別を受けていない。神殿側はいつも聖別を受けないものが「アラクラーダ様の神子」を名乗るのを良しとしていないだろう」
「ええ、あからさまに騙りと分かる物についてはそうです。ですがセリアテス嬢は本物の「アラクラーダ様の神子」でしょう。これからは神殿で大切にお守りいたしますから、私と一緒に神殿にまいりましょう」
そう言って私に手を差し出してきました。本人はさわやかに笑ったつもりかもしれませんが、笑顔が気持ち悪いです。お父様との応酬にも負けていません。いえ、お父様の言葉を聞いているようで、聞いていないみたいです。私が困っているとおばあ様とお母様が私の前にきて立ちはだかってくれました。
「アイドロフ神官こそ何を聞いていたのです。セリアテスは「彼女」と呼んでいる女性から「自由に何も縛られずに生きてほしいと」言われているのですよ。セリアテスには自分で決める権利があるわ。もし、セリアテスの意思を踏みにじって、無理にいう事を利かせようとしたらどういうことになるかはお判りですわよね」
おばあ様の言葉に、アイドロフ神官は顔をゆがめ睨みつけてきました。
「それにこれは民のためにもなるものだ。最近失業していた者たちに新しい仕事ができた。木の採取から加工、金属もしかり、皮も大量に必要になるので、狩猟や加工業の者も活気づいてきた。まだ、5日ほどだが、製品として流通するのも時間の問題だろう。それを、神殿は秘匿するおつもりか」
おじい様の言葉にアイドロフ神官は今度こそ悔しそうに唇を噛みました。
129話です。
何か言うことは・・・。
セリアちゃんがアイドロフ神官に嫌悪感を持っていることについてですかね。
今までは知らない人扱いはあったけど、嫌うことはなかったのですけれど。
理由は神官に対する思い込みでしょうか?
神官なら清廉潔白でいて欲しい。俗物はいらない!
という、気持ちからですかね。
それに前話で向けられた視線が気持ち悪かったのも大きいです。
それでは、また、次話で。




