11-5 お土産その2・・・です
話してくれるビアンカ様の表情が苦しそうに見えます。
何かあったのでしょうか、前の私と。
もしかしたら大喧嘩をして謝ることができないまま、忘れてしまったとか?
それで覚えているビアンカ様が苦しんでいるとか。
どうしたらいいのでしょうか。
「あの時は楽しかったわ。その後すぐセリアとローザ王女が今まで以上に親しくなって、私悔しくて。それにセリアはどんどん私を置いて先にいってしまうのよ。追いかけても追いつけない。大人たちはそんなあなたを見習えというわ。理不尽だってわかっているけど、私は憤りや悔しさをあなたにぶつけるしかなくて。ううん、ぶつければよかったのね。私はセリアと比べられるのが嫌で、わざと無視したり挑発したり。ほんと嫌な子だったの。でも、セリアに私の方を見てほしくて・・・。やだ、何を言ってるのかしら私ってば。セリアが覚えてないのは分かっているけど、一言謝りたかったの。ごめんなさい」
えーと、つまり、ビアンカ様は前の私と5歳までは仲がよかったけど、ローザ様とより仲が良くなったことに嫉妬して離れてしまったと。でも、私に振り向いて欲しくていろいろしたと。で、それを謝りたかったと。
「プップッ」
「セリア?」
ごめんなさい。言うことが可愛くて思わず吹き出してしまいました。
でも、それを言ったらダメよね。
「あの、その、ごめんなさい、忘れてしまって。私、嫌われているのかと思っていたから」
「嫌ってなんかいないわよ、私」
「うん。わかってる。ありがとう」
「なんで、お礼なんていうのよ」
「いや~、私ってば愛されてるな~と、思ってね」
「あ、アイ?愛してなんかいないわよ~!」
真っ赤な顔で言われても説得力ないわよ。
「ふふふっ。ごめんね。ビアンカ様」
「ビアンカ!様はいらないわよ」
「じゃあ、ビアンカ」
目を覗き込むように言ったら、涙目で耳まで赤くされました。
「もう!ずるいわよ。セリアってば」
うふふふ。だから、ごめんてば。
ちょっと時間が経ちすぎたかな。そろそろ戻らないとお兄様が探しにきそうだわ。
「そろそろいきましょうか、ビアンカ」
「そうね、セリア」
「持たせてしまってごめんなさい」
「これくらいいいわよ。重くないし」
うふふふ。軽口が言えるっていいわね。
部屋に戻るとみんなはお茶を飲んでいました。みんなの前には、お菓子ですか。
えっ、この形フィナンシェですか?
今まで食べたお菓子は甘すぎるものが多く、ケーキ・・・彼女の世界のフワフワのスポンジのケーキなんて夢のまた夢。だと思っていました。だってバターが無いのですもの。あと、卵を泡立てることをしませんし。
ですが、これはフィナンシェですよね。
確かバターがないと作れなかったはずです。
「クラーラ様、それは?」
ビアンカが聞いてくれました。
「最近サンフェリスで流行っているお菓子よ。日持ちがするように魔法が掛けてあるからお土産にいいかと思って持ってきたのよ。どうぞ、食べてみて」
ビアンカと並んで席に座りお茶をもらい、2人同時に手に取りました。
お互いにチラリと見たあと、一口食べてみました。
「おいしい」
「甘すぎないし、何よりバターの味がします」
私の感想にクラーラお姉様が驚いた顔をします。
「バターを知っているの?そうなのよ。今、サンフェリスではバターを使ったお菓子が流行していてね、おかげで、乳牛を育てるところが増えてきているのよ」
またまた、目が点です。
「乳牛ですか?」
「そうなのよ。今まで、牛の乳と言ったら、チーズを作る材料でしかなかったのよ。それが、バターと生クリームが必要とかで、牛の乳の確保が大変になってきているそうなのよ。でも、まさかセリアテスが知っているとは思わなかったわ」
あー、もう、また言っちゃいました。
不用意な一言を。
「クラーラおねえさま、バターでそんなにあじがかわるのですか」
「そうね。味だけじゃないわ。この食感もバターのおかげだそうよ」
「すごいですね。では、こちらでも牛の乳を用意すれば作れますかね」
「どうかしら?作り方がわかれば大丈夫でしょうけど」
「そうですね。試してみるしかないですね」
お兄様。何、当たり前のように言っているのですか。
いや、でも、リングスタットでもバターや生クリームが作られれば、お菓子革命も間近よね。
サクサクのクッキーやフワフワのスポンジケーキに、シュークリームも捨てがたいわ。
あっ、プ、プリン。これなら今でも作れるかしら。料理長にお願いして・・・。
って、知らない食べ物を作れって言われても無理よね。
そう。ビーフシチューを見たことがなくて、作ってみたら肉じゃがが出来ましたなんて、そんな奇跡はそうそうないわ。
119話です。
やっと、ビアンカとの会話にきた~!
今話もお読みいただきありがとうございます。
いかがでしたでしょうか。
もう少しビアンカのツンを出してから、今話の会話にしたかったのですが、明日のこと(物語の中の)を考えると、入れられなかったんですよね。
ちなみに母親達が悪いです。セリアとビアンカの会話を、無意識に邪魔しましたから。
なので、ちょっとお遊びしました。
魔力暴走の翌日の2人の会話です。
ビ「セリア寝てなくて大丈夫なの」
セ「心配してくださりありがとうございます。ビアンカ様。私は大丈夫です」
ビ「心配なんてしてないわよ。あなたが」
ソ「セリアテス、ちょっといいかしら。ここのところなのだけど」
セ「はい。ビアンカ様すみません。叔母様の所にいきますね」
ビ「あっ、待って・・・」
セ「お待たせしました、ビアンカ様。それで何かお話しがあるのですよね」
ビ「遅いわよ。まあ、ソフィティア様に掴まっていたのでは仕方がありませんわね」
セ「そうですね。それで?」
ビ「コホン。あなたがいろいろ忘れてしまったの」
ウ「セリアテス。これはどうすればいいかしら」
セ「ウルリーケ叔母様。あー、それはですね・・・」
ビ「お母様~」
セ「ハア、ハァ、ハア。ごめんなさい。お話しができなくて」
ビ「ああ、もういいから。こちらにきて休みなさいよ」
セ「えっ、ハア、ハァ。でも」
ミ「あら、セリア。やっぱり体調がよくないのね。わかったわ。今からスクワーレ伯爵家に連絡して、明日はやめていただくことにするわね」
セ「えっ。待ってください、お母様」
ビ「なんなのよ、もう」
いかがでしたでしょうか。
それでは、次話で。




