1日目の真夜中の1 他の人に言えない、いろいろなこと……
いろいろとありましたが、今、私は一人で寝ています。
夕食を食べ終わったら、私はすぐに寝入ってしまいました。
やはり病み上がりは体力がないですね。
そうしてどれくらい寝ていたのか分からないけど、目が覚めてしまいました。
まだ部屋の中は暗いし、廊下を通る足音とか聞こえないから、夜明けまでまだかなり時間があるのでしょう。
本当はお兄様に一緒に寝ていただきたかったけど、メイドさん達に反対されました。
お兄様にも全力で拒否されました。
めっちゃ傷付きました。
お兄様は私が寝るまでそばにいてずっと手を握っていてくれました。
今、お兄様はどこかの部屋で寝ているはず……。
ああ、どうもいけませんね。
思考が安定しません。
それにどうも寝られそうにないので、今日? いえ、昨日? に、起こったことを検証することにしましょう。
私の名前は
セリアテス・クリスチーネ・フォングラム
どうも侯、……いえ、公爵家の令嬢らしい、ではなくて、令嬢です。
確か、7歳だったと思う。
お父様はセルジアス・キンケイド・フォングラム。公爵家の当主。
お母様はミリアリア・ロドリアス・フォングラム。公爵夫人。
お兄様はミルフォード・カイセル・フォングラム。私より3歳年上の10歳。
家族の名前は夕食を食べながら教えてもらったの。
他にもいろいろと話してくれたけど、肝心な私の名前を話し忘れるというお茶目な一面も見せてくれた。
夕食後にもう一度名前を教えてほしいと伝えた時の、三人の情けない顔は、今思い出しても笑えてくる。
私が眠るまでいてくれたけど……みんな、それは心配そうな顔をしていたよなぁー。
おもわず溜め息がでそうになる。
心配かけているのを解っているけど、記憶喪失の原因なんて話せるわけないし、ほんとどうしよう。
ああ、また引きずられて変な言葉遣いになってます。
えーと、そうでした、検証をするんでしたね。
事の起こりはお茶会で頭を打って、それからいろいろな事が思い出されて、あまりの情報量の多さに熱がでたんだけど……。
うん、倒れる直前のことは覚えてるね。
王妃様主催で開かれたお茶会に招かれて、他家令嬢方と交流をして、庭園で咲き誇る花々を見ていたときに、そばにいたご令嬢がハチに驚いて逃げようとした先に私がいて、運悪く突き飛ばされちゃったんだよねー。
倒れた時に石があってこめかみを切ってしまったのもなぁー。
出血したのを見て周りにいた人たちも青ざめた顔をしていたしね。
その後医務室で治療をしてもらったけど、あれかな。
薬を傷口にあてた時のしみた痛み!
あれが、思い出したきっかけよね。
でも、あれはひどかったですわね。
前世の記憶とはいえ、知らない女性の半生を早回しのフィルムみたいに見せられるなんて。
あの振り回され感はジェットコースター? に乗っているみたいだったわ。
小学校時代は普通の女の子でちょっとお転婆だな、くらいだったけど、中学に入ったら漫画とアニメに目覚めて、オタク路線まっしぐら! って、なんですの?
高校に入ったら友達の影響なのか、BLや百合系の書物にはまって、同人誌っていったかしら?
アニメなど登場人物をBL系に持っていくという恐ろしい話が書かれた書物を、嬉々として読んでいるなんて! 信じられませんわ。
大学時代にはゲームにはまり、最初は音ゲーやRPGなど見ていて安心できるものをやっていましたのに、いつからか、恋愛シミュレーション、いわゆる乙ゲーにはまって……。
大学を卒業してOLになってもこの趣味はやめられなかったようで、一人暮らしの部屋にいろいろなグッズが溢れていましたの。
それどころか、ネットを利用して読んでいた物語が、転生もの? 前世の記憶もち? チート能力?
ほんとうに、なんですの!
27歳で火災に巻き込まれて亡くなるまで、腐女子として青春を謳歌していましたわね。
ええ、本当に!
7話→11話。
お読みいただきありがとうございました。