祖父話8 宰相の決断に・・・
王妃がまた、席を立ち、紅茶を入れ直した。
皆、一口紅茶を飲むと溜め息をついた。
王がカップを置くと問うてきた。
「それで、リチャード卿。御前会議を開くのはいいが、どういう風に話すつもりだ」
「そうさの、今の話すべてを言う訳にはいかんじゃろうな」
「ええ、それに5公爵15侯爵だけでなく、神殿にも話をされるのでしょう。神殿が今回の話をきいたら、セリアテスのことを連れて行こうとしますわよ」
「それは、無理じゃの。王妃殿下がセリアテスから聞いたであろう」
「でも、それをいいように解釈するのが神殿ですわよ」
「大丈夫だろう。民衆がそれをさせんさ」
「民衆って。何をさせる気だ、父上」
直前で言いなおしたか。
アーマド、もう少し言葉遣いに気を付けた方がいいと思うぞ。
「なーに、あいつらがもう、「アラクラーダ様の神子」が現れたと、宣伝してくれたからの。女神様から、新しい服の作り方を賜ったと聞けば、服飾産業が活性化するだろう。あと、靴に、ホックとベルト。皮を扱うものや、金属の加工をする者にも恩恵はあるし。おお、ボタンもあったのう。木片から加工するから、魔力があまりないものでも、あまり困らずに加工できるらしいしの」
わしの言葉に皆、あ然としたようだ。
「リチャード卿、それこそ神殿が技術の流出を良しとしないでしょう」
「そうです。神殿は新しい技術、特にアラクラーダ様から伝えられたものは権利を主張してきますよ」
「ジョシュア、エグモント。このことに関しては神殿に権利はないだろう。セリアテスはまだ、「アラクラーダ様の神子」ではないのだぞ。それに、セリアテスは「彼女」に自由にしていいと言われているのだしな」
それを聞いた皆がいい笑顔になっていった。
「そうだ。国の発展につながることだ。「彼女」もそれを望むだろう」
「ええ、そうですわ。それに、その技術を公開するのですわよね。リチャード卿」
「ああ、そうじゃ」
「なら、何の問題もありませんわね」
皆が、頷きあう。
「では、リチャード卿、他に何を提案するつもりですの」
わしは子供たちを鍛えるために何をするのか話していった。
学園の大幅な改革についてを。
それから、持ってきた服を見せて、セリアテスが言っていた制服の話をした。
他にもいくつか提案をし、御前会議の日を5日後と決めて、話を終わらせた。
小会議室を出ると皆それぞれの仕事場に散っていった。
わしも屋敷に戻ろうと歩き出した。
「お待ちください、リチャード卿。少しお時間をいただけませんか」
振りむくまでもなく、ジョシュアがそこにいた。
ふむ。やはり気付いたか。
「お前こそいいのか。忙しいだろう」
「いえ。今を逃すとあなたと話しが出来ないでしょうから」
「お前との会話ならいつでも時間を空けるがな」
ジョシュアのあとをついて宰相の執務室に向かった。
彼は執務室に居たものに休憩を与えて部屋から追い出した。
わしがまた結界を張るとホッとしたように肩の力を抜いた。
「ありがとうございます。リチャード様」
「いろいろと大変そうだの」
「まあ、宰相の仕事としてはこんなものでしょう」
「苦労をかけたかのう」
「いえ、同じ公爵家として最善を尽くすまでです。何か飲まれますか」
「いや、今はいい」
「そうですか」
ソファーに向かい合って座る。
ジョシュアは大きく溜め息をついた。
「それで、話しとは」
「それをあなたがいいますか」
「お前なら気が付くと思っておったよ」
「・・・過大評価でなければいいのですがね」
「お前に過大な評価はしたことがないぞ」
「ははっ、ありがとうございます。嘘でもうれしいです」
ジョシュアは大きく息を吐き出すと話を切り出してきた。
「先ほどの話ですが、本当に起こると思ってますか」
「ああ、もちろんだ」
「そうですか。では、私も次の者に宰相を譲ったほうがよさそうですね」
「そう、思うかの」
「ええ、今なら私でも対処できますが、7年後ではね。いささか年を取りすぎでしょう」
「まあ、確かにの」
「それで、後任はセルジアス殿でよろしのですか」
「お前が息子のことを高く買ってくれているとはな」
「彼の能力なら務まるとおもいますが」
「悪いがそれは無しじゃ」
「何故です」
「あいつと距離をおきたいといっておる」
「何か、ありましたか」
「まあな」
そして、国王がセルジアスに告げたことを話して聞かせた。
「それは、確かにそれでは距離をおきたくなりますね」
「まあな」
「わかりました。では、エグモントを仕込むでよろしいですか」
「それも、やめてもらいたいのう」
「そうですね。見どころはありますが、抑えにはなりにくいですね」
「お前の息子はどうだ」
「コンラートですか。まあ、妥当かもしれませんね。彼らより2歳年上ですし、生徒会長もしましたから抑えにはなるでしょう。あと2年私の下で経験をさせればなんとかなりますかね」
本当にジョシュアは話が早くて助かるの。
それから、もう少し話を詰めて、宰相の執務室を後にしたのだった。
101話です。
今話でじい様話が終わります。
長かった~。
次からはかわいいセリアちゃんが!!
うふふっ。
セリアちゃんお待たせです。
君にサプライズをあげるからね。
それでは、次話で。




