6話~一人…じゃない
作者の都合が合わず、短いのしか書けません。
明日からは長めに書くので許してください!
「い…しょっ!準備完了っと」
日が昇ってもない時間に関わらず、竜斗は山を降りる準備を終え、下山しようとしていた。
人目につかない内に降りたいのもあるが、目的は他にあった。
「クシナダにお別れしてこないとね」
そう。クシナダに会いに行くのだ。
日が昇らない内に会うのは、クシナダは夜を好むため、爽やかに別れることが出来ると思った。
竜斗はすっかり覚えたクシナダの住み処に向かった。
「クシナダ!いるんでしょ!」
「ええ、いらっしゃい。リュウナ」
竜斗が叫んだのは巨大な黒い一塊だった。
その塊は、竜斗の言葉に呼応するように姿を巨大な八頭の大蛇へと変えていった。
1つの首を伸ばし、竜斗の体に擦り付けた。
子猫がじゃれるようなしぐさだ。大きさは比じゃないが…
「ははっ!くすぐったいよ!」
「この子もあなたのこと気に入ってるみたいね。今日はどうしたの?」
そう言いながら大蛇の背中から出てきたのは、黒髪の和服美人。足、胴体、顔、腕。その体の全てに男をおとす要素に溢れている。
この美女はクシナダ。かの有名な神話のヤマタノオロチ編で登場する。
「あのさ、言いづらいんだけど……私、この山を降りることにしたんだ。だから、そのお別れにきたの」
「えっ…」
クシナダが寂しそうな声をだす。
顔も驚きと困惑でどうしたらいいの。という顔をしている。
だが、その顔は一瞬のみで、すぐに明るい顔に戻った。
「じゃあ、私も…連れていってもらっていい?」
「えっ!」
今度は私が驚きの声をあげた。
別に困るわけでも、嫌なわけでもない。
ただ、クシナダが私と一緒に来たら、この子はどうするの?
私はチラッとヤマタノオロチの方を見た。
「私がついていったらこの子はどうするの?って?」
「な、なんでわかったの?」
本当は神様なんじゃないの?
「あなた顔に出てたわよ。盛大にね。それと、この子のことなら大丈夫よ」
なんで?なんでそんなに意志疎通が出来ない竜を信じられるのだろう。
「私もこの子も、お互いに甘えすぎていたのよ。そろそろ独り立ちしようと思って…」
「だけど!この子が知らない内に暴れたらどうするのよ!?」
「この子と私は心が繋がってる。私が闇に堕ちない限りは大丈夫よ」
『竜斗さん。この人はきちんと自分の事を考え、その上で話をしています。受け入れてはどうですか?』
『うう…イザナミが言うなら…』
「分かったわ。私も一人旅は少し寂しいからね」
「本当?やったあ!」
どうやら本当に嬉しいようで、この喜びよう。
少し面白いかも…。
「むっ!今失礼なこと思ったでしょう」
なんなのこの子。心でも読めるの?
クシナダの前ではあまり失礼なことは考えないようにしよう。
「早速山を降りるけど、荷物はある?」
「特にないわ。服とかもこの服はリュウナと同じ神服だから変えなくても良いし」
「そう。じゃあ、降りましょう!」
私達は下りのルートを歩き、山の下へ…とはいかずに空間魔法で瞬間移動。
山の麓のイサナ村に到着した。
「これって旅なのかな?」