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四話~イエナ=サクスティン=セイエン

今日は部活で全身筋肉痛です。

それでもがんばって書きます!

人一人いない森の中を駆け抜ける少女が居た。

彼女は神谷竜斗。男だが、今はイザナミと融合しているため、性別が変わっている。

今彼女は食料確保の為狩りに出ている。

ワオォォーン!

遠吠えが聞こえた。

竜斗は止まる。


…サーベルウルフか。…アースボール


土魔法の基本、アースボールを唱える。

地面から土が浮き上がって玉になる。

ソフトボール程の大きさで、綺麗な丸をしていた。

それをサーベルウルフに放つ。

サーベルウルフの顔面に当たり、土の質量で首が折れた。

近づいて、解体をする。

結構な量の肉が取れた。


『このくらいなら二日はもつね。さて、帰ろ』


ここに転生し、暮らし始めて3年の月日が流れていた。

竜斗は火系統の魔法を全て習得することができ、土魔法は上位魔法まである程度習得できている。

それ以外はほぼからっきしだ。


『やりましたね。魔法の威力、タイミング共に完璧です!』

『ありがとう。だけどあれがまだまだなんだよ?それが出来ない限りはわた…俺は満足しない!』


最近わた…俺はイザナミと融合している影響なのか、口調や一人称、好みまで女になってしまった。

なんとか隠そうとしているが、ダメだ。

それは良いとして、わた…俺の住んでいる家は切り立った崖に穴を開け、そのなかに作った。

最初は嫌だったけど、慣れると以外と快適だ。


『今日はサーベルウルフの山椒焼きだな~。楽し…あれ?』

『そこで何か言い争いをしていますね。一対三のようですが…』

『そんなこと言ってる場合じゃない!助けよう!ここからはイザナミは出てこないでね!』


私は走り出した。

近づいて行くと、話し声が聞こえてくる。


「おい。金出せって言ってるだろうが」

「おとなしく渡した方が身のためだぜぇ?」

「それとも、奴隷館にでも売られてぇのかな?」

「あなた達のような輩にあげるものなんて何ありません!どこか行ってください!」

「このアマ!人が優しくしてやってんのになんて口の聞き方だ!殺すぞ!」


酷い輩だ。

自分が言われているわけでもないのに、悪寒が走る。


「やめろ」


盗賊の目が一斉にこちらに向いた。

夕方だからか、鴉のようなしゃがれた鳥の鳴き声が遠くから聞こえた。

盗賊の顔が歓喜に満ちる。


「誰だおめぇは?あ?」

「ほぉ。子供だが見たこともねぇ美人だなぁ。奴隷館に売れば10000セルトはくだらねぇな」


そう。今の竜斗はパッと見12歳、よく見て14歳というところ。当然だ。まだこの世界に産まれて3年なのだから。

因みにセルトとは、この世界のお金の単位だ。

10セルト~銅貨

100セルト~銀貨

1000セルト~金貨

10000セルト~白金貨

一桁は切り捨てだ。


「いやその前にやっちまおうぜ。うまそうな女だしなぁ」


盗賊の一人がベロリと舌で口のまわりを舐めた。

私は今、何を見ている?

目の前にいる者はなんだ?

溝?泥?排泄物?

とにかく同じ人間とは、思いたくない。


「汚い…貴様らは…不純だ」

「は?」

「汚いと、不純だと言ってる」


竜斗が言いきると、盗賊の頭のような者が怒鳴った。


「て、めぇ!殺す!お前らやっちまえ!」


その怒鳴り声と共に二人の男が突っ込んでくる。

竜斗は突っ込んでくるのをずっと見ていた。


「もらったぁ!」


一人の男が竜斗の首に切りかかった。


「……甘い…栗きんとんよりも甘い。因みに私は栗きんとんは好き。炎よ。我らが生命の灯火よ。今暫く、我を加護せよ。フレイム・エンチャント」


なんて良いながらも魔法を発動させる。

竜斗の体が紅く淡く光り、全身を炎が包んだ。

この魔法は、自分に炎を取り込み、身体能力と自然治癒能力を一時的に高める上位魔法だ。

その高めた身体能力で男の背後に一瞬で移動し、背骨の出っぱりを軽く殴って意識を飛ばす。

その後振り返り、ファイアボールを唱える。

顔を真っ黒にして倒れた。


「…もう終わり?手応え無さすぎよ…魔力が勿体ないわ」

「ふん。なかなかやるが、雑魚を倒したくらいで調子に乗るなよ?俺は元Cランク冒険者だぜ?」


そう言いながら剣を抜いた。

無骨な両手剣だ。


「そう。そっちが剣なら…」


下に落ちていた直剣を拾う。


「これで良いわ」

「そんな獲物で俺には勝てねぇよ!」


男が袈裟斬りで斬りかかってくる。

私は一旦距離を取った。


「炎よ。我が剣に(なんじ)の加護を。エンチャント・ウェポン・ファイア」


彼女が唱えたのはエンチャント魔法の炎版。

上位魔法に属する。

武器に炎を纏わせ、性能を上げる魔法。


「しゃらくせぇ!」


そう言って今度は剣を逆手に持ち、下から斬りかかる。

竜斗はその剣の起動に向かって剣を振った。まるで蚊を払うように、軽く。

それだけ。経ったそれだけで男の剣先が斬れた。否、溶けた。


「う、うわぁぁぁ!」


それだけで実力の違いがわかったのか、男は武器を捨てて逃げていった。


「ふぅ」


私は一息つくと、ポカンとしている少女に声をかけた。


「大丈夫?…怪我は?」

「な、ないわ。ありがとう」

「どう…いたしまして。…私帰るから…帰り…気を付けなさい」

「ちょっと待って。お礼がしたいから、私の家に来ない?」

「遠慮…するわ…私やることあるから…」


やはり、人の声を聞くと悪寒が走る。

…変わってないんだな。私。

どこかでは変わりたいと思っている。

が、私は臆病者だ。どこか怖い。


「じゃあせめてあなたの家に行かせて!できること何でもするよ!」

「っ!……仕方ない。ついてきなさい…すぐそこだから」


承諾した。

これ以上粘ってもしょうがないということと、このままではいけないという気持ちがこの行動になった。


「ここ。崩れそうだけど…ちゃんと補強してあるから大丈夫」

「え?あなた森に住んでるの?」

「ええ」


そう言いながら私は焚き火を起こし、少女を座らせるよう促した。

自分も座ってから、私は付け足す。


「私は…三歳の頃…この森に捨てられたの」

「えっ!」


少女は、短く声を漏らす。

焚き火の光で顔が見えた。

子供っぽいが優しい顔だ。可愛らしく、一緒に居たら癒されそうだ。

私はそんなことないが…

見た目は碧の髪に碧の眼、褐色の肌。エルフだろうか?


「まぁ…そんなこと話しても仕方ない。…あなた…名前は?」

「わ、私?私はイエナ=サクスティン=セイエンよ。貴方は?その身なりからして、元は良いとこだと思うんだよ」


この服か。

この服はイザナミが着ていた神服という、神が公の場に行くときの、現代でいう学生の制服のような者だ。

この服は便利だ。

洗濯しなくても汚れず、発汗防止、防臭、体温調節、寝ているときに着用者の体を洗うという便利さ、さらにはたとえ範馬勇○郎の攻撃を直で受けたとしてもあまりダメージを食らわない。

まさに完璧な服だ。

脱線してしまった。答えなければ。


「私はリュウナ。名字はないわ。この服は捨てられたときの物を着ているだけ。家名はないと思う」


リュウナというのは、もし人に名前を聞かれたとき、竜斗と答えると見た目が女なので変に思われる。

そのためイザナミと考えた名前だ。

結構気に入っているのは秘密だ。


「リュウナ。良い名前ね。私のことは遠慮なくイエナと呼んでね」

「イエナ。イエナ…わかったわ。…ご飯食べる?」

「良いの?そんなに世話になるわけには…」

「良い。簡単な物だから」


そう言って私は洞窟内に向かった。


……イエナside


私はイエナ。

私は薬を作り、それを売って生活費にしている。

今日この森に来たのは、ここに薬草が自生すると聞き、採りに来たためだ。

だが、薬草を採り終わって帰ろうとしたところ、重大なことに気づいてしまった。

帰り道がわからない。

右も左もわからずうろうろしていると、盗賊に襲われた。

私はここで終わりだ。そう思ったとたん、救世主が現れた。

美女だった。私と同じくらいの年なのに、妙に大人びて見えた。

彼女は私のために戦ってくれた。

戦う姿も美しい。

炎を纏って、炎の剣を持ち、炎と共に戦う姿は、まるで炎の女神のようだった。

私は彼女ともう少し一緒に居たい一心で、彼女の家にお邪魔させてもらうことになった。

が、そこは崖に穴を開けただけの家だった。

話によると、彼女は三歳の頃に親に捨てられたそうだ。

彼女はリュウナというらしい。

竜のように強く、優しさを感じる、ナという文字。彼女にぴったりだ。

私と同い年なのに、ここまで違うと少し悔しいな…


…………竜斗side


私は、人と話すたびに涌き出るトラウマを、ご飯を作るという言い訳で洞穴に戻って鎮めている。

恐らく隠せていたと思うが一言話す毎に吐き気と悪寒が押し寄せてくる。

イエナには悪いけどご飯を食べたら帰ってもらおう。

私の身が持たない……。

私はサーベルウルフの肉と山椒、塩を持っていった。


「あ、手伝うよ!」

「大丈夫…と言いたいところだけど…肉に串を刺すのを…手伝ってほしい」

「わかった!」


私達は次々と串を刺していく。

俗にいう串焼きだ。

刺した後は焼くだけだ。

肉を火にかざす。周りに香ばしい香りが広がる。


「もうすぐ…焼ける」

「え?もう?」

「サーベルウルフの肉は…元々生でも食べれる…私は表面を少し炙ったのが…好きなの」

「サーベルウルフ!?Cランクの魔物よ?そんなものを狩っているの?」

「だって…この森は…サーベルウルフばかり居るから」

「そりゃそうだよ。あの魔物は初心者殺しと言われてて、単体ではDランクに少し劣るけど、何十の群れで生きるから実質Cランクに指定されている魔物だもの」

「まぁ…それのお陰で…食料には困っていないから…良い。それより、早く食べないと…冷めるわ」


勿論そんな意味で言ったわけではない。早く帰って欲しかったのだ。

イエナは、ハッとして手に持っていた肉を食べた。

口に入れた途端、イエナの顔が驚きに変わる。


「すっごい美味しい!柔らかくて、味も良い!それに、何かピリッとしたもの、何?」

「喜んでもらえて…うれしい。それは山椒といって、香辛料の1つよ…私も好きなの」


イエナはへぇ!と言って、また肉を頬張った。

私も食べる。やっぱり美味しい。


『ですね!』


イザナミの声が聞こえた。

イザナミとは味覚も共有している。

しかし、今は出てこないよういったはずだ。


『イザナミ?出てこないでねって言ったでしょう!

『す、すいません…』


3年一緒に暮らしてわかったけど、イザナミって意外と天然なんだよね。

言ったことを忘れたり、訓練の時詠唱を忘れたりする。


「…ナ?…ウナ?リュウナ!」


ハッとする。

私の意識は現実に引き戻された。

暫く無表情で食べ進めていたみたいだ。

イエナがホッとした表情を浮かべる。


「わ、悪かった……これを食べたら家に送ろう…方角はわかる?」


これ以上話したら、食べたものが逆流しそう。

早く一人になりたい。

…私ダメだな…


「いいの?ありがとう。方角は…うーん。北東だね」

「わかった…私の転移魔法で送る」

「待って。最後に、良い?」

「何?」

「エルフの私が言うのもなんだけど、この世界の人はいい人ばかりだから、怯えないで、外に出てみなよ!きっと良いことあるから…」

「…空間よ。我の呼び掛けに答え、開け。次元の扉。『転移』」

「………ボソッ…」

「っ!」


イエナは、手を振りながら消えていった。

竜斗は、暫くボーッとしていた。

…今こそ、変わるときなのかな。


「降りようか。この山を」


イエナが喜んだような気がした。

もう一度、イエナが最後に言った言葉を呟いた。


「また、会おうね」


遠い地平線に、夕陽が沈んだ。

読んでくださり、ありがとうございます。

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