1話~異世界へ転生
初投稿です。
温かい目でよろしくお願いします!
「………ちっ」
短学活前の騒がしいクラスの中、一人席に座り、外を眺めている男が居た。
彼は神谷竜斗。特長といえば、中二の時に患った中二病のおかげで刀と武道の道場に通ってて強い事くらいか、少し整った顔立ちをしている普通の男子高校生だ。
彼は人と話さない性格なので、友達が出来ない。というよりは作らない。
あー、うるせぇ。他人と話して、何が楽しいんだろう。
だいたい、子供の頃の友情なんて表面上だけでしかない。
一部例外はあるが…そんな薄っぺらい友情はないほうがましだ。俺は元々一人が苦じゃない。
それどころか一人の時間が癒しの時間なんだ。
だが、それを知っているのに!俺の癒しの時間を邪魔するやつが居る。
「おはよー、竜斗。今日も元気ないねー!」
「いつものことだろ。ほっとけ」
こいつだ。学校で【天使】【女神】等というあだ名を持つ、佐々木美羽。
容姿秀麗、成績優秀。さらには気さくで優しいという、運動音痴なこと以外は完璧な美少女である。
彼女は俺の幼馴染みで、幼い頃からずっと一緒だった。
だから俺の性格をよーく知っているはずなのに、いつも俺の隣に居る。
心配してくれているのは嬉しいが、授業中や全校集会の時もそばに居るのは少しやり過ぎだと思う。
席替えの時は先生に頼み込んでまで席を隣にしてもらったくらいだ。
美羽よ…俺お前になんか悪いことしたか?
「ダーメ!竜斗は一人にするとずっと一人でいるじゃない。それに、喋る相手も居ないでしょ?だから私が居ないとダメなの!」
「グッ…それもほっとけ。それより、お前が俺に話しかけてくると…ほら来やがった。美羽、席につけ」
渚のえ?という表情を無視し、席に行くよう言った。
やれやれ。今日もあの時間か…
渚が離れると同時に制服を着崩し、茶髪に染めた大柄な男が龍太の目の前に立つ
「よぉ、竜斗。今日も佐々木と仲良くやってんじゃねぇか。お前自分の立場底辺なのわかんねぇのか?」
彼は坂田智弘。不良だ。学校に来るのは一年の3割ほど。
噂では渚に好意を持っているらしく、いつも一緒に居る俺を妬んでいる。
俺と渚はどう考えても釣り合わないの分かってるはずなのに。
「分かってるよ。そんなこと。お前がこんな俺より下なのもな」
左手の親指を下に向けながら言った。
殴られてもいいから、早く会話を終わらせたい。
ピクッと坂田の頬がつり上がる。
このまま殴られると思い、歯を食いしばった。
が、一向に殴りかかってこない。
恐る恐る目を開けると、長身イケメンが坂田の腕を押さえていた。
「坂田君、暴力はいけないよ」
彼は学級委員長の千葉宗也。
見た目はイケメン、性格は優しく、その上運動神経抜群、成績優秀という、まさに男版の美羽である。
「神谷君、大丈夫かい?」
「ああ、ありがとう。だが…」
坂田をちらっとみる。
その顔はいつまで話してやがる。早くこっちに来やがれ竜斗。
という顔だ。
「お前なら俺の性格わかってるだろ?助けてもらって悪いが、どこか行ってくれないか?」
「ああ、そうだったね。済まなかった。じゃ、バイバイ」
俺は宗也の方を見ずに手を振った。
さて、と。
問題は坂田だ。
「坂田。お前俺に言いたいことあるんだろ?教室の外に出たいが、もうすぐ短学活が始まるからここで話してくれ」
俺の推測じゃあ、坂田は美羽のそばでは余り目立つことはしたくないはずだ。さっきは席に戻ってる途中で後ろを向いていたが、今はバッチリこっちを向いている。つまり、教室の中ならほぼ俺に危害が及ぶ心配はない。
「あはは、そうか。じゃ、話したいことがあるからこっち来てよ」
え?俺の言ったことガン無視?。何処連れてかれるの?
そんなことより…口調気持ち悪っ!
「さあ、楽しくお話しようよ」
ここは階段の踊り場だ。
なにしようとしてんだ?
「お前さ、うざいからいい加減佐々木と離れてくんねぇかな?お前みたいなクズがくっついて来ると佐々木も迷惑だろ」
なんだ。そんなことか…
俺は心底呆れた。
「残念ながら美羽に俺から話し掛けたことなんて一度もねぇよ。あいつが勝手にくっついてくるだけだ。言うなら美羽に直接言うんだな」
坂田の表情が憤怒の表情に変わった。
さっきも言ったが、俺は人と話すのは好きじゃないんだ。殴られてもいいから会話を終わらせたい。
先程とはうってかわった荒々しい言葉遣いで坂田が怒鳴る。
「てめえ、人が下手にでりゃあいい気になりやがって。てめえは話しかける相手すらろくに居ないボッチくそやろうだ。そんなクズに佐々木が話しかけるわけねぇだろ?寝言は寝てから言えよ。殺すぞコラ」
「まぁ確かにそうかもしれな…」
「そんなことない!」
突然の大声に驚く。
声がした方向を見ると、そこには美羽が息を荒立てながら坂田をにらんでいた。
「坂田。なんで竜斗にそんなこと言うの?」
「なんでって…このクズが佐々木にベタベタしてるから罰を与えようとしたんだよ。ほら、こんなふうになっ!」
そう言うと坂田は竜斗を蹴り、階段から落とした。
竜斗は後ろから転げ落ち、最後の段の辺りで跳ねて階段の手すりに頭をうつ。かなり強く当たったため、受け身がとれなかった竜斗は、当たった方と反対側に吹き飛ぶ。
「竜斗っ!」
美羽が階段をかけ下りて竜斗を抱き抱えた。
「み…うか?暗い…目が…ろくに…見えねぇ…眠い…」
「駄目!寝ちゃ駄目!」
美羽が竜斗の額をペチペチと叩く。
「ふふっ…そういえば…俺…お前と…話す時は…余り不快にはならないんだ…なんで…だろうな」
「そんなの…知らないよぉ……」
美羽の顔がくしゃくしゃになり、大粒の涙が竜斗の頬を濡らした。
「おい…そんな顔…すんなよ…可愛い顔が…台無しだぜ?」
竜斗は笑った。今にも消え入りそうな笑顔だったが、それは美羽の心に強く届いた。
「………私、竜斗が大す……」
そこで、竜斗は息絶えた。
だが、美羽は泣き止んだ。
今…確かに聞こえた…来世で会おうぜって…彼の声が…
私は、竜斗を力いっぱい抱き締めてから、坂田を無視して屋上に向かった。屋上のドアを開け、柵を飛び越えだ。
飛び降りる。迷いはなかった。
また、一緒に話そうね。
先程抱き締めた時に取った竜斗の生徒手帳の写真を握りしめた。
さよなら。この世界の人達…
私は地面に着地した瞬間、温かい光に包まれていった…
目を開けると、真白い部屋に私と竜斗。そして…女神様?
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