先生って
本鈴の10秒くらい後、担任の鍵山先生が入ってきた。見た目は普通。化学の先生なのに決して白衣を着たがらないし、緩い体育会系というギャップ。化学の先生のイメージを壊してくれた人だ。
「HR始めるぞー、日直ー。」
きりーつ
れーい
おはようございまーす
「はい、おはよう。今日は終業式だからな。まず、大掃除からだぞ。さぼるなよー。」
「掃除の後は、体育館で終業式だぞ。校長とかの話よく聞けよ。」
「以上、朝のHR終了。掃除の時間まで自由にしてていいぞ。静かにな。」
HRってこんなんで良かったっけ?
必要な情報はもらっているけど釈然としない。
こんな人でも教師になれるんだから不思議だ。
そんな性格だからこそ他の先生達より人気がある。
私も嫌いじゃない。
授業は面白い方だし、実験したがるし。白衣は着たがらないけど。
キーンコーンカーンコーン
HRの時間の終わりを告げるチャイムが鳴る。
「んじゃ、行きますか。」
後ろから圭太が声を掛ける。
「はいはーい。」
掃除の班も出席番号順で決められているから自然と圭太と同じ班。
私達の班は今週の担当は化学室だから移動しなければいけない。
教室は南舎3階で、化学室は中舎の2階にあり、少し距離がある。
「暑いからゆっくり歩いていこう。」
振り返りながら圭太に言う。
「りょーかい。」
そう言う圭太の右手には団扇が握られていた。