天翔杯マッチレポート
久々に新聞記事です。エル・ゴラッソをイメージしてお楽しみください
天翔杯3回戦 西が丘サッカー場 観衆:4、239人
和歌山 2-1 湘南
得点(和)’44 竹内 ’90+4 剣崎(湘)’90+2 内海
交代(和)’55 野口(内村)’67毛利(栗栖)’76鶴岡(仁科) (湘)’77クレイトン(榊原)、永見(葛城)’90+3大畑(泉川)
警告 なし
退場 ’90(和)江川
「要所で『個』を光らせて延長直前に決着」(文・浜田友美)
西が丘にて行われた天翔杯3回戦。現在J1でセンセーショナルな躍進を見せる和歌山と、J2を独走し早くも昇格の当確ランプを灯しつつある湘南。互いに持ち味を発揮する一戦は劇的な幕切れになった。
立ち上がりから湘南は3バックが和歌山の2トップに対し執拗なマンマークディフェンスを見せる。特に剣崎に対しては「自由を与えないこととボールを入れさせないこと」(内海)を徹底し、無力化することに成功した。しかし、攻撃についてはシュートまで持ち込むものの、守護神友成にことごとく止められて先制点を奪うことができない。スコアレスが見えた前半終盤、リーグ戦3連続ゴール中の竹内がセンターサークル近辺でボールを受けるとそのまま独走。マラドーナを彷彿とさせるごぼう抜きでゴールをこじ開けて折り返した。
リードを許した湘南は、後半にマーク役を変更することで対応。加えて中盤での主導権を握りはじめ、次第にゴールを脅かすようになるが、ここでも友成が立ちはだかり同点に追いつけない。それでも永見、クレイトンと主力を投入すると、アディショナルタイム直前にクレイトンがフリーキックを獲得。そのセットプレーの混戦で内海が押し込み、湘南が同点に追いつく。だが「サイドの主導権はずっとこっち(和歌山)にあった」(桐嶋)が最後に生き、再開直後に桐嶋の突破から野口がヘッド。これはバーに嫌われたが、セカンドボールを拾った竹内からのクロスを剣崎がボレー。「最後にやっと仕事ができた」とご満悦のエース。直後にタイムアップとなり、和歌山が4回戦に駒を進めた。
コラム:和歌山
「頼る」というより「信じる」~和歌山流の「個」の生かし方~
「最後は個の力の差に屈した」試合後の会見で敵将・チャン監督はそう前置きしながらも、「個人技に対する考え方の違いが表れたと思う。うちはその差を補うために連動性と組織力を高めたが、向こう(和歌山)はそれを信じて連携を取っていた」と、和歌山が個人技頼みのチームではないと分析した。
この試合に限らず、和歌山が絶対的な個人能力によって勝利や勝ち点をもぎ取ってきた試合は数知れない。エースの剣崎や守護神友成、出場停止となった司令塔小宮と絶対的なキーマンの存在が和歌山のサッカーの屋台骨と言える。しかし、決してそれに頼ったサッカーをしているわけではない。猪口がこう代弁する。
「多分頼っているのとは違うでしょ。客観的に見ればそう見えるけど、僕らはそれがあるから走ったり守ったりすることに徹底できるんです。本当は11人全員が連動できるのが理想ですけど、僕らはまだまだ発展途上。剣崎たちも僕らが信じてるから自分の仕事をしているだけですよ」
「頼る」というよりも「信じる」。組織か個かはサッカーの永遠のテーマでもあるが、今の和歌山にとって、組織は個の力を発揮するための触媒であるといえる。
採点・寸評(和歌山)
GK20友成哲也 6.5
枠に来たシュートをほぼすべてしのぐ。失点シーンは仕方ない
DF31マルコス・ソウザ 6
バランスを取ることを徹底。ベテランながら運動量も豊富
DF17チョン・スンファン 6
久方ぶりの実戦で的確にライン統率。最少失点にまとめる
DF22仁科勝幸 5.5
近藤に何度も振り切られるなど、スピードに対する弱さ散見
DF7桐嶋和也 6.5
90分間走りっぱなし。関原を脅かすアピール
MF2猪口太一 6
要所で湘南のカウンターを防ぐ。最後まで運動量落ちず
MF3内村宏一 5.5
竹内のゴールに絡んだ以外は静かな出来。やや消化不良
MF4江川樹 4.5
決死なのは理解できるが、やはり背後からはアンフェア
MF8栗栖将人 5.5
桐嶋が走っているのだから、それにもっと絡みたい
FW16竹内俊也 7
これで公式戦4連発。右サイドを完全に掌握していた
FW9剣崎龍一 6.5
内海、エデルソンに苦戦も、最後にきっちり大仕事
FW25野口拓斗 5.5
ヘディング以外見せ場なく、リーグ戦につながる要素がない
DF35毛利新太郎 6
そつなく守備をこなし、桐嶋を攻撃に専念させた
DF18鶴岡智之 -
時間短く、評価なし
監督 ヘンドリック・バドマン 6
小宮不在をものともせず、90分間でケリをつけた
採点・寸評(湘南)
GK1アン・ドンヒョク 6
「あの2点を止めれたら世界で勝負できる」と失点シーンをぼやく
DF2泉川登弥 6
粘り強く対応し奮闘も、交代直後に敗北という悔しさ
DF3内海秀人 6.5
本来ならマンオブザマッチの出来。ゴールもよくこじ開けた
DF4エデルソン 6
剣崎を苦戦に追い込む存在を世に知らしめた
MF6葛城公則 5.5
中央はよく守ったが、竹内の突破は止めたかった
MF7菊地原浩二 6
及第点以上の出来なだけに、先制点のシーンだけが悔やまれる
MF18辻江直弘 5・5
桐嶋一人にやられた印象。特に後半は太刀打ちできず
MF16高月祐樹 5
彼だけの責任ではないが、サイドの主導権をとられたままという事実は重い
MF10近藤聖也 6
6本のシュートは枠を捉え続ける。引き立て役に終わった厄日
MF11榊原修二 5
惜しいミドル1本だけでは寂しい。もっとゴール前に顔を出したい
FW9新里賢太 5.5
ポストプレーは及第点。シュートも惜しいのが2本
MF21永見亮 6
ゲームの質が変わる。あれだけ沈黙した攻撃を蘇生させた
FW8クレイトン 6
ほんの数分で得点を演出。疲れた体にあの突破力はこたえる
DF5大畑一徳 -
時間短く、採点なし
監督 チャン・ヨンウ 6
交代で一度は追いつくも、最後は個人技に屈す




