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剣崎の心情

「でぇぃっ!!」


 高校野球も各地で始まり、いよいよ夏が本格化。この間は日中の練習でのコンディションに、何よりも気を遣う時期だ。

 そのさなかの紅白戦。剣崎はビブスを着た大森を弾き飛ばしながらシュートを放ち、ゴールネットを揺らす。一撃を食らった天野は首を傾げながら苦笑した。


「はは、相変わらず。お前はいつでもばてないね」


 そう茶化したが、剣崎は無反応だった。


 ここ最近、剣崎はサインを求めるサポーターには明るくふるまうものの、それ以外の時はだんまりだったりしかめっ面だったりと、不機嫌な様子だった。


 理由は、中断期間終盤に相次いだJリーガーたちの海外移籍だった。

 ただ、いらだっているのは嫉妬からではない。ヨーロッパと違って春秋制でリーグ戦を行うJリーグは、海外挑戦となるとどうしてもシーズン途中での退団となる。剣崎にはそれがはらわたが煮えくり返るくらい許せなかった。多少理解は示すようになったが、彼にしてみれば「自分を育ててくれたクラブを『見捨てた』」としか見えない。中学時代、サッカー部ではゴールしか狙わないスタイルから、「自己中心的」「時代遅れ」の烙印を押されながら、自分を見出してユースで育ててくれたクラブに対する愛着は、はたから考えられるほど生半可なものではない。常々口にしている「俺はこのクラブで死ぬ」という発言は、剣崎の場合言葉どおりなのである。


 くすぶる思いを、剣崎は神戸との試合にぶつけた。


 今節はホームゲームであるが、ホームスタジアムの紀三井寺陸上競技場は、隣接する紀三井寺野球場にて高校野球選手権予選の真っ最中。その影響で駐車場の確保が困難という事で、大阪市の長居公園にある長居球技場での開催。いわゆる間借りである。Jリーグが新規参入クラブに対してスタジアムの基準が甘かったころ、ナイター開催の代替地として何度か長居公園のデカいほうのスタジアムで何度か試合をしたが、こじんまりとしたここのほうが分相応だ。ただ、相手は同じ関西のヴォイス神戸なので、この日はキャパシティの8割近い1万5千人以上の観衆を集めた。この試合にはちょっと趣向を凝らしてあり、代替地開催という状況を利用して、アウェイ神戸のスタメン発表の際は、神戸ウイングスタジアムで使われているものをそのまま使用。神戸サポーターは、アウェイながらホームのような雰囲気を味わっていた。

 そして、神戸サポーターのブーイングをかき分けて流れる、ボンジョビの「イッツマイライフ」をBGMに、和歌山のスタメン発表が行われたのであった。


「さーそれでは、和歌山サポーターのみんなあっ!大変っお待たせいたしましたっ!!続きまして、ホームチーム。我らがっアガーラ和歌山!!本日のスターティングイレブンのご紹介ですっ!!盛大にご唱和っお願いしまーすっ!!!!」

 メインの大半、バックスタンドのホーム側半分、そして本来ならセレーノのピンク色にいるはずのホームゴール裏を深緑に染めた和歌山サポーターが盛り上がる中、スタメンがコールされた。


「我らの誇りし世紀の守護神!背番号20!ゴールキーパー、友成っ哲也ぁっ!」

ごうそう!コリアンタイガー!背番号15!ディフェンダー、ソーン・テジョンッ!」

そびえ立つ摩天楼!背番号18!ディフェンダー、鶴岡っ智之!」

「立ちはだかるあお守護者ガーディアン!背番号5!ディフェンダー、大森っ優作っ!!」

「電光石火の重戦車!背番号14!ディフェンダー、関原っけーいじぃ!」

「狂いなきレフティースナイパー!背番号8!ミッドフィルダー、栗栖っ将人っ!」

「ミスターインターセプト!背番号2!ミッドフィルダー、猪口ったーいちぃ!」

「ピッチに舞いし一陣の風!背番号16!ミッドフィルダー、竹内っ俊也ぁっ!」

「全てを懸け刻み込め!ゴールへの道標!背番号11!ミッドフィルダー、佐川っけーんたろぉっ!!」

「生まれながらのファンタジスタ!背番号10!フォワード、小宮っえーいしんっ!」

「紀州の地が育みし人類無双のストライカー!背番号9!我らがエースっ!剣崎龍~いちぃっ!!」


スタメン

GK20友成哲也

DF15ソン・テジョン

DF18鶴岡智之

DF5大森優作

DF14関原慶治

MF8栗栖将人

MF2猪口太一

MF16竹内俊也

MF11佐川健太郎

FW10小宮榮秦

FW9剣崎龍一



 リザーブのメンバーにも、大きな声援を送る。


「No.1ファインセーバー!背番号1!ゴールキーパー、天野っ大輔っ!」

「堅牢セルビアン!背番号26!ディフェンダー、バゼル、ビーッチっ!」

「隠密マルチローラー!背番号35!ディフェンダー、毛利ぃ新太郎ぉーっ!」

「その男、天才につき・・・。背番号3!ミッドフィルダー、内村っ宏一ぃっ!」

あおき閃光!背番号7!ミッドフィルダー、桐嶋っ和也ぁっ!」

「備後の大砲っ!背番号25!フォワード、野口っ拓斗っ!」

「静かなるゴールハンター!背番号36!フォワード、矢神ぃしーんやぁっ!」


リザーブ

GK1天野大輔

DF26バゼルビッチ

DF35毛利新太郎

MF3内村宏一

MF7桐嶋和也

FW25野口拓斗

FW36矢神真也


「そしてぇ監督は、『紀州に栄冠を!情熱のコマンダー!』ヘーンドリーックバードマーン!!」

漫画ではないのになんでこうもいちいちキャッチフレーズに力を注ぐんでしょう。自分でもわかりません(笑)

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