正統派、異端児、不思議系
タイトルはキーパーについてです。それぞれ、渡、友成、林堂を指しています。
「んーと…おら、林堂基文だす。まあ下手じゃねえんで安心してけれ」
Bチームの部屋では、キーパーを任された林堂がずうずう弁で挨拶していた。所属は都会のAC東京だが、元々は秋田県生まれで初めの2年は当時JFLのライトサウス青森でプレーし、去年はJFLベストイレブンにも輝いた。PKなどセットプレーでの反応が良く、初日の試験でのセーブ数は渡、友成を上回る数字を残していた。
「まあ〜、剣崎君がこっちにいっから、正直助がったべ。んだども、小宮が向こうにいるのは怖いべさ」
「ずうずう弁きつくて何言ってっかわかんねえな」
剣崎の正直すぎる感想に、林堂は苦笑いするだけだ。
「んだども、標準語はぞーもうまぐ言えんでな。ながなが覚える気にならねえべ」
「しかし、チカも方言丸出しだしな。まあ、個性と言うやつじゃねえか?」
「なんねヒデ。別に標準語しゃべらなあかんつう決まりばなかとね。本心伝えんなら喋りやすい方がよか」
このままでは言葉だけがテーマで終わりそうなので、竹内が咳払いして本題に入った。
「こっちのチームが勝つとしたら…月並みだけど、向こうの小宮をどう抑えて、どう剣崎に繋ぐかだ。ただ、正直小宮を潰すには生半可な策じゃダメだ」
竹内の展望に内海が頷く。
「竹内の言う通りだ。小宮は『古きよきファンタジスタ』なんて言われてるけど、スピードやフィジカルはちゃんと現代仕様だ。ただ張り付くだけじゃ簡単にかわされる」
続くのは何度かマークマン役を担ってきた猪口も、肌で感じた小宮のすごさを語る。
「マークに付くなら距離感と集中力が大事だけど・・・。それでも必ず抜かれるときがある。そういうときのリカバリーの速さが大事だよ」
そして攻撃について。友成のことをそれほど知らないメンバーは、その攻略を聞く。剣崎は至極単純な答えを言った。
「ねじ伏せりゃいいんだ。あいつが驚くぐらいのすげえシュートをな」
「あんまいい答えになっとらんと・・・。実際どげんしたらいい、トシ」
いまいちすっきりしない近松は竹内にふるが、竹内は剣崎の回答を肯定する。
「いや、実際のところ駆け引きよりもシンプルに行ったほうがいい。まず考えようとしたらのまれるから」
「のまれる?」
意味が分からず、新潟のサイドアタッカー、菊瀬健太が聞き返す。
「なんつうか・・・オーラがヤバいんだよ。うーん、ジェイソンが日本刀二本持って待ち構えてるというか・・・」
「余計訳が分からんが・・・えげつなさそうなのは何とかわかるな」
「それに、あの野郎とにかくジャンプが速くて高い。全身バネだから勝負できねえ。だから俺がミドルブチ込んだほうが点になる!」
「・・・どういう結論だよ剣崎。しかし、確かにミドルっているのは手かもな」
二人の説明にもう一つすっきりしない菊瀬だったが、とりあえず納得した。剣崎は全員にこういった。
「偉そうで悪いけどよ。みんなとにかく踏ん張ってゴール守ってくれ。あとはどんなボールでもいいから俺にくれ。そしたら俺がぶち込んでやるぜっ!!」
しばしの沈黙。最初に突っ込んだのは、AC東京のMF、末守良和。初対面で命令口調の剣崎に、少し思うところがあるようだ。
「フン。てめえいったい何様のつもりだよ。リーグ戦で結果残してるからって、俺たちに命令するだけかよ」
「何様?へっ!『人類最強のストライカー、剣崎龍一様』に決まってんだろ?」
ひるむことなく言い返す剣崎。再び静かになると、にらみ合いの末に末吉が笑う。
「はっはっは。お前ほんと大したもんだぜ。デカい口もここまで堂々と叩かれると、逆に信用できるな。おいヒデ。俺はこいつに乗ろうと思ってるけど、キャプテンとしてどう思う?」
他の選手も内海を見る。しかし、内海の腹も決まっていた。
「いいだろ。剣崎。叶宮監督が惚れ込んだストライカーだからな。とりあえず託してやる。キーパーと最終ラインがゴールを守って、奪ったボールを中盤につないで、お前までに必ずつなぐ。お手並み拝見と行かせてもらうぜ」
「おう。まかせろってんだ」
「あ、来た来た」
時間になり、選手がピッチにやってきた。22人の選手の表情に、叶宮監督は満足げだった。
「ウフフ。いい顔してるわね。世界を相手にするなら、それぐらいの目つきが必要よ」
ゲーム前、叶宮監督は特別ルールを説明する。
「えっと。ゲーム中、アタシが3回笛を吹いたらシャッフルタイムね?」
「シャッフルタイム?」
「そ。アタシが状況に応じて突発的に選手を入れ替えるの。ゲームからあぶれた選手をね」
「え、交代選手を監督が決めるんですか?」
「そうよ。アタシが『ここ変わったらどうなるんだろう~』っていう感覚でころころ変えちゃおうってわけ。出来不出来に関わらずね」
「なんつうルールだよ・・・」
戸惑う選手をよそに、叶宮監督は号令をかけた。
「最後に一言。アタシを思いっきり楽しませてね!それじゃあキックオーフ!」
ホイッスルが鳴り響き、Aチームボールで試合が始まった。
そのうち選手の簡単なプロフィール書こうかと思ってます。




