ブラジル行きメンバー発表までの奮戦記
相当巻きました。ただ、ワールドカップ中は和歌山と川崎の試合で埋めるかもしれません。
リーグ戦
第1節 3月1日 広島(H)勝利
4-3 (得)剣崎2、小宮2
第2節 3月8日 鹿島(A)勝利
2-0 (得)竹内、矢神
第3節 3月15日 横浜(A)敗北
1-5 (得)小宮(3)
第4節 3月23日 柏(H)敗北
1-4 (得)竹内(2)
第5節 3月29日 セ大阪(A)ドロー
3-3 (得)剣崎2(4)、竹内(3)
第6節 4月6日 名古屋(H)勝利
2-0 (得)剣崎(5)、佐川
第7節 4月12日 新潟(A)勝利
5-0 (得)佐川(2)、大森、剣崎2(7)、猪口
第8節 4月19日 清水(H)勝利
5-0 (得)竹内(4)、剣崎(8)、野口3
第9節 4月26日 ガ大阪(H)ドロー
3-3 (得)剣崎3(11)
第10節 4月29日 大宮(A)ドロー
1-1 (得)野口(4)
前半はスコアレス。後半開始に先制許すも、ラストプレーで野口のヘッドで追いつく。
第11節 5月3日 AC東京(H)敗北
1-2 (得)竹内(5)
開始早々竹内のゴールで先制するも、以後チャンスをものにできないうちに後半立て続けに失点。
第12節 5月6日 仙台(A)勝利
4-0 (得)野口(5)、剣崎2(13)、竹内(6)
小宮が全得点を選出する司令塔ぶり。守っても90分で仙台をシュート1本に抑え込む完勝。
第13節 5月10日 鳥栖(H)敗北
2-3 (得)小宮(4)、栗栖
得点はいずれもPK。開始早々J1初出場の川久保が与えたオウンゴールが最後まで響き競り負ける。
リーグ戦 13戦6勝3分4敗 勝ち点21
カップ戦(予選)
第1節 3月19日 甲府(H)勝利
3-0 (得)野口2、ソン
第2節 4月2日 仙台(A)勝利
2-1 (得)大森、猪口
前半10分で2点を奪い、あとの80分は仙台の反撃をしのぎ続ける。1点失うも逃げ切る
第3節 4月16日 試合なし
時は5月12日、昼。アガーラ和歌山のクラブハウス、その食堂には、昼食中の選手が集まっていた。そしてテレビにかじりついていたのだ。
「い、いよいよだな」
「ああ。誰が選ばれるんだろ・・・」
この日、ブラジルW杯を戦うメンバー23人が発表されるのである。ただ、和歌山の選手が選ばれる可能性はあまり高くない。ただ、選手たちの間では、いわゆる「サプライズ枠」で誰かが選ばれるのではないかと憶測が飛んでいた。
というのも、5月に入ってから、サッカー専門誌やスポーツ新聞紙上で「剣崎待望論」が浮上しているのである。カップ戦こそゴールはないが、リーグ戦は13試合で13ゴール。J2の通算記録をたった2年で塗り替えた得点力が、決してリーグのレベル差でないことをこれ以上ないまでに立証。超人レベルのフィジカルと決定力、何より日本の弱点といえた高さを補ううえでこれ以上にない存在だった。その評価は、常連だった前野(磐田)、豊永(鳥栖)、ハースナー(ユトレヒト)をしのぐ。同じように、二度目の五輪代表に選ばれ、かつての存在感を取り戻している小宮も光る。現役最多キャップを誇る司令塔・新藤の後継者として大穴扱いであるが、可能性はゼロではない(という世論が出ている)。
ただ、実際発表が始まると、やはり現実の厳しさを思い知る。GK、DF、そしてMFにも大きなサプライズはなく小宮はあっさりと落選。そしてFWも次第にその色が濃くなった。
『ホンジョー・・・カガミ・・・オクザキ・・・ハレモト・・・』
「常連ばっかりだな」
「まあ、今の代表監督はかなりメンバーを固定してきたからな。やっぱサプライズはねえか?」
『・・・』
「!?」
『オオサキ・・・コクボ』
川崎のエースであり、昨年のリーグ得点王の名前が23番目に出たところでまばゆいフラッシュの嵐となった。
そしてクラブハウスの食堂もため息の嵐が巻き起こった。
「ちぇ。あの間は何だったんだよ~。期待させやがって」
野口はそうぼやいて頭の後ろで腕を組んで椅子にもたれた。
「やっぱあの監督頭固すぎるぜ。剣崎がいりゃいつでも点取れんのによ」
桐嶋もそう吐き捨ててテーブルに突っ伏す。
「でも周りもまわりだよ。いくら結果残してるからって騒ぎすぎだよな」
「小宮に関しちゃほとんどついで扱いだからなあ。特にスポーツ紙は結構適当だよな」
一方で猪口や竹内は冷静に総括する。その様子を友成はあざけった。
「だったら踊らされたお前らはもっと素人だな。あの単細胞が選ばれるわけねえだろ」
「友成・・・。単細胞はないんじゃない?」
「ふん。結局俺たちにとっちゃ日本代表は所詮対岸の火事。気にするだけ無駄だ。あいつは相変わらず自分のペースだしな」
友成の言うように、このとき剣崎は何をしていたかというと、玄関前のロビーのソファーに寝転がり、大いびきで昼寝していたのであった。その傍らの自販機のそばで、缶のスポーツドリンクを飲みほした小宮が、その空き缶を握りつぶしていた。
「・・・どいつもこいつも節穴ぞろいだ。グループリーグで負けちまえ。金メダル手土産にA代表をのっとってやるからな」
ただ、敵チームで剣崎の落選を納得できない人間がいた。小久保である。
選出の喜びを語る会見を終えた小久保は、忸怩たる思いを募らせていた。
「・・・。腑に落ちんな。あの監督ホンマに節穴か?」
「どうしたんだ小久保。せっかく選ばれたってのに、ずいぶん浮かない顔だな」
声をかけたのは川崎の司令塔・中浦進剛だった。小久保は訳を話した。
「・・・ま、言いたいことはわかる。言っちゃ悪いが、俺もお前が選ばれて奴が落ちたのは少し不思議な感じがした。今の成績はもちろん、ここ最近のプレーを見てるとその可能性はあったんだがな」
「ま、だからこそ気合入りますよ。次の等々力での試合、あいつらをボコッて、しこりなくブラジルに行ってきますよ」
そういう小久保の眼光は、鋭かった。




