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開幕前のクラブ診断

物語内のサッカー媒体、Jペーパーの特集で「各クラブの開幕前診断」なる特集の和歌山の欄です。書いたのは登場人物の一人、浜田友美記者です。


GK…A

〜唯一不動のポジション。友成の牙城は揺るがず〜


 現状、和歌山でスタメンの当確ランプが灯っているのがここだ。過去2年、フル出場こそないが、友成の守護神としての存在感は抜きん出ている。天性の反射神経と屋久島の縄文杉並に図太いメンタル、そしてリーグ随一のキック力を武器に「今年こそフルタイム出場」と並々ならぬ思いを口にする。

 対抗馬となる天野の存在が、友成の能力を引き出しているといっても過言ではない。キーパーとして恵まれた体格を持ち、友成にはない空中戦の安定感やハイボールの処理技術は、他クラブからすれば喉から手が出るほどの逸材。日本代表の西山を浦和に引き抜かれた広島の他、新潟やG大阪などが獲得に動いたくらいだ。天野が友成からポジションを奪う上での鍵はキック力。安定性や飛距離、精度のいずれも友成に数段引き離されている。近代サッカーには欠かせない攻撃力の向上次第になりそうだ。

 二人の一年後輩である本田にとっては、今年も我慢の一年になりそうだ。ルーキーイヤーは2試合ベンチ入りしたにとどまり、ユース時代を含め丸一年公式戦から遠ざかっている。劣勢のチームに喝を入れるポジティブシンキング以外に、はっきりした武器を身に付けられるか。百戦錬磨の吉岡にも言えることだが、キーパー全員が年間通じて競い会うことでよい緊張感が生まれるため、当面は心配はない。




DF…C

〜補強の成果はあれど、バックアッパーへの不安つきず〜


 初めて戦うJ1を前に、不安のつきないDF陣。大森、関原、沼井ら若い実力者に、仁科、ソン、バゼルビッチの代表クラスの新加入選手が加わりレベルアップしている。しかし、バックアッパーを含めセンターバックタイプの選手が多く、4バックが基本戦術のクラブとしてはサイドバックの層の薄さが気がかりだ。左の関原、右のソンと、レギュラーは固まりつつあるがいずれも守備に課題を残し、バックアッパーの長山、桐嶋もパワー面で見劣りするため、シーズン中苦戦が続けば途中の補強も考えられる。

 何よりの不安が各選手間の実力差である。紅白戦や練習試合でメンバーを頻繁に入れ替えているが、十二分にJ1で戦える選手とそうでない選手との間に差が感じられ、負傷や出場停止で主力が欠けた場合にベストメンバーと同じポテンシャルを期待はできない。シーズン終盤までに地力の底上げができるか、首脳陣の手腕が試される。




MF…B

〜早くも小宮が「君臨」も、メンバーは未だ流動的〜


 最大のサプライズであった小宮の加入。その効果はてきめんで、すでに彼が攻撃の軸として君臨している。ここ最近は小宮をトップ下とするダイヤモンド型が試されていて、破壊力は「正直ウチ(のDF)じゃ防げない」と肌を合わせた他クラブから警戒されている。 その時の鍵になる1ボランチは、猪口とチョンの師弟対決となる。年齢を感じさせないパフォーマンスを見せるチョンと、J2で積んだ経験を上乗せしての成長が続く猪口。特にカバーリングの速さと視野の広さは猪口に分があり、開幕スタメン争いを一歩リードしている。

 さらにバドマン監督が「今年最も期待をかけている」のが3年目の江川。松本コーチとのマンツーマン指導で今季は攻撃的なポジションに挑戦。右サイドハーフで鍛えられ、攻撃に効果的に絡めており楽しみな存在だ。ただ、各ポジションとも「代えが効かない」選手が多く、J1未経験であることもマイナス。額面通りに働けるかがカギだ。





FW…B

〜エースの相棒は誰だ?不安は全員J1初心者〜


 絶対的エースの剣崎を筆頭に、ポテンシャルはすでにJ1レベルであると長らく評価されてきたが、それが嘘かまことかを証明するシーズンになる。剣崎と竹内には昨年からJ1クラブからオファーが届いていたことからも、期待する要素は十二分にある。現状はこの2トップとなりそうだが、鶴岡の高さ、矢神のスピードは捨てがたいものがある。本来ならA判定としたいが、そうできなかったのは全員がJ1初心者であるからだ。近年J2からの昇格組の戦績は、柏の優勝をはじめ目覚ましさを見せる一方、札幌、湘南、大分など1年でUターンの憂き目を見るクラブも少なくない。しかも昇格クラブが最大3クラブとなった05年以降、3クラブとも残留できたシーズンは未だない。FWの成績はチームの勝敗に直結するだけに、開幕からの出来に命運がかかる。




補強…B

〜外国籍選手が出色も、パフォーマンスにばらつき〜


 潤沢には程遠い予算規模で、J1初挑戦にむけた補強は「奇跡の大豊作」(今石GM)と言える。特に小宮とバゼルビッチは期待通りに働いていて、ソンも穴となっていた右サイドバックにすんなり収まり、開幕にむけたチーム編成には一通りの目星はついた。一方で今石GMの肝煎りで加入した野口や、J1残留の切り札として期待された村瀬は、チームから取り残されている印象で、今後の奮起が求められている。





選手層…C

〜代えが効かない選手が離脱すると…〜


 今シーズンはW杯イヤーであるが、リオデジャネイロ五輪にむけた予選も始まる。年始のU−21アジア選手権で叶宮ジャパンは散々な結果に終わり、指揮官は選手の大幅な入れ替えを明言。その際、和歌山の選手がターゲットになる可能性は高い。同年代の選手が揃ってに結果を残している中、ロンドン五輪予選で活躍した小宮や、J2の記録を塗り替えた剣崎に白羽の矢が立つ可能性はある。二人はプレイヤーとして「唯一無二」のスタイルを確立している。チームの戦い方も個々の実力に頼るところがまだまだ大きなだけに、離脱すると喜びと同程度の痛みを伴うだろう。

シーズン予想…一桁順位

〜FWが本領発揮ならACLもイケる〜

 先にも書いたように、J2から昇格した3クラブが全て残留したケースは未だない。しかし、その歴史を変える力は和歌山にある。期待の攻撃力をフルに発揮できれば、J1残留や賞金圏内(7位以上)はもちろん、ACL出場権を得る3位も夢ではないし、一発勝負のトーナメント(リーグ杯、天翔杯)でタイトルも狙える。ただまずは残留を基本線にしてシーズンを戦い抜いてほしい。J2と違って遠征費は抑えられるので、薄給の身としてはなるべくJ1にいてほしい(笑)。


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