新監督、内定選手云々
12月4日。紀の川市のアガーラ和歌山クラブハウス。J1最終節を2日後に控えたこの日、来シーズン指揮をとる人物の会見が開かれることになっていた。
当初はヘッドコーチを3シーズン務めた松本コーチの昇格が規定路線とされていたが、クラブは外部から新たな血を入れることを決断。今決まっているのはバドマン監督とマッケンジーフィジカルコーチ、さらに来シーズンから大宮の監督となることが決まった竹内コーチが退任し、秋川GKコーチがユースコーチに配置転換されること。つまり、松本コーチ以外はトップチームからいなくなるということだ。
会見の時間となり、今石GMと竹下社長、そして新監督となる強面のブラジル人が入室した。
「ハジメ、マシテ」
それに似合わない柔らかい笑みを浮かべて片言の日本語であいさつ。さらにこう付け加えた。
「ボク、マフィアジャナイヨ」
軽いジョークで場が馴染んだところで、経歴が紹介された。
ラファエロ・ヘルナンデス、45歳。現役時代のポジションはボランチで、代表キャップ31試合の実績を持つ。ブラジル一部リーグでプロ生活を開始し、プレミアやセリエAでも活躍。10年前に指導者に転身し、セリエA時代の古巣ナポリにて監督就任2年目で欧州チャンピオンズリーグでベスト8。一昨年にオーストラリアAリーグ、ブリスベンユナイテッドの監督に就任するやACLベスト4に導くなど結果を残した。近年のJリーグでは度々新監督候補として名前の上がる人物で、今回和歌山が契約を勝ち取った格好となった。
就任打診の理由について今石GMは「個性を尊重しつつ規律を植え付けられ、海外クラブとも勝負ができる人物。というのが新監督像だった」と話す。
「リーグ戦も天翔杯もACLを狙える位置にあるし、仮に逃したとしても、今のチームにはそれが十分狙えるぐらいの力はある。それに応じて規律のある戦い方を仕込める人間がいいと考えた。ただだからと言って曲者ぞろいのいびつな集団、まともな戦術仕込んだところでかえってダメになる可能性もある。だからヘルナンデス監督に行き着いたんだ」(今石GM)
『私は常日頃からJリーグのことはチェックしていたが、和歌山は非常に魅力的なチームであると感じた。同時に、自分にこれほどの選手たちをまとめられるのだろうかと迷ったこともある。だが、今シーズンの戦いを見守った中で、これほど伸びしろを感じるチームもない。このチームでの歴史を作りたいと思った。だから就任を承諾しました』(ヘルナンデス監督)
さらに今石GMは今後の補強策についても言及。
「まずは主力クラスの残留交渉。うちの若い連中はほとんど今年で契約が切れる。それに備えた補強を随時進めている。ただ、今は今のメンバーで天翔杯を勝ち取ることを信じるだけ」とそれ以上は語らなかった。
明くる12月5日。今度は入団が内定した大学生が発表された。
ともにDFで、上総大学のセンターバック大垣彰磨と、京浜工科大学のサイドバック上条真之右。ともにインカレベストイレブンの実力者だ。
「いろいろ誘われたなかで一番やりがいがありそうだと感じました。見てほしいのは強さと速さ。少しでも力になれるように頑張ります」(大垣)
「足の速さとクロスの精度には自信がある。決めてくれる人が多いのでやりがいがあります。期待してください」(上条)
そしてヘルナンデス監督の肝いりでブラジル1部選手権、SCサンパウロ所属のFWアンデルソンの入団が合わせて発表された。コメントはないが、関係者曰く「キープ力が高く周りを生かすポストプレータイプ。前線からの献身的な守備もでき『日本人的』なプレーができる」とのこと。恐らく自身の決定力はさほど高くないが、優秀なフィニッシャーが揃うために問題はないだろう。
そしてガリバー大阪のリーグ優勝に立ち合った(3ー1で和歌山の負け)最終戦の翌々日にはレンタル移籍していた選手たちの動向がリリースされた。J2水戸の米良と香川の矢神は帰還し、J3青森に貸し出された沼井は来シーズンからJ2で戦う金沢に完全移籍するとなった。
来シーズンにむけて、チームは確実に動いていた。
今シーズンは、都合によりリーグ最終戦はすっ飛ばします。




