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ギルド員A「おつかれさまでした^^」
ギルド員B「おつかれちゃーん」
ギルド員C「めっちゃおつかれー」
僕 「みんなお疲れ様ー」
ネットゲーム「ブレクロ」内は落ち着く・・・・この安心感は何だろう。
帰るべき場所に帰ってきた、僕のいるべき場所はここなんだ。ここでの僕はギルドマスター。
みんなに頼りにされ、誇りとされ、それを少し煩わしいと思いながらも嫌ではないような甘ったるい感じ。
もちろん脳裏には街コンの失敗がよぎる。
さっちー「マスターボイチャしていい?」
僕 「ほいほい了解ー」
個人チャットで僕に話しかけてきたのは主婦プレイヤーのさっちー。ヒラクという旦那キャラと夫婦で
プレイしていて、2人一緒にギルドに加わってから1年くらいだろうか。
ちなみにボイチャとはボイスチャット、ネット回線でマイク付きヘッドホンがあれば通話できるアプリ。
チャットの文字を入力することなく話ながらゲームに専念できるので時と場合によっては重宝される。
準備して通話を開始すると
「実は旦那のほうが転勤になりそうで・・・近いうちお引越しになりそうですー」
「あーそれは大変ですねー」
「準備とかも考えてしばらくログインできなくなりそうですので・・・一旦ギルド抜けることにします」
「そうですか・・・さびしくなりますが、また落ち着いたらヒラクさんとともに戻ってきてください。」
「了解ですー。色々お世話になりました!」
さびしいなんてウソである。戻ってきてほしいとは思うが、こういう別れでイチイチ感情的になってたら
マスターは勤まらない。
無意識のうちにか、情が入れば入るほどつらくなるのを知っているからか、僕はギルドのみんなを
数としか見ていないところがある。いずれみんな僕より先にいなくなる消耗品のようなものだ。それでも・・・
「あ、ちょっと待って!」
「はい?」
僕は切ろうとした通話を呼び止めた。
「最近合コンするようになって、コツとか知ってたら何かご助言くだされ!」
人妻相手に合コンのヒントを求めるとは・・・街コンと言わなかったのは少し抵抗でもあったのか。
「ウチも旦那と合コンがきっかけだけど・・・・コツ・・・ですかあ」
質問の仕方が悪いのは理解している。それでもすがりたかった。
「旦那のほうに聞いたほうがいいかも。今度通話できるときいっておきますよ。だけど・・・」
ちょっと間をおいてさっちーが続けた。
「マスターってかなりモテそうじゃないですか?」
「モテるなら苦労しません><イケメンじゃないし!トークも下手だし」
さっちーはリアルの僕を知らない。
「まあみたことはないですけど。性格というか人格的にかなりできた人に思えますよ。大人というか?」
「マスターってどんな人とでもうまいことやっていけてますよね。それってすごいことじゃないんですかねー」
大人ではなく変に達観してしまっているのだろう。まさに仙人のように・・・
うまくいくのはギルド員を駒としか見ていないからかもしれない。
「マスターなら大丈夫ですよ」
こんなことを言って欲しくて質問したわけじゃないのに・・・うれしかった。
人妻に泣き付いて慰めてもらったようなかっこわるさを感じつつも、少しだけ勇気がわいた。
よし、街コンリベンジしよう!
考えてもみるんだ・・・僕は実際大きな失敗などしていない。そう!だいちゃんが勝手に自爆して
巻き添えをくらっただけだ!これから数回がんばればいいところまでいけるかもしれない!
となると問題はだいちゃん・・・誘ってもきてくれるかどうか・・・
「次の街コン?OKいくー」
あっさりOKを出す大輔・・・こいつはメンタルが強いのか弱いのかただのバカか・・・?
「だいちゃんさ、練習も兼ねて今度は僕にリードさせてみてよ」
「わかった。たのむー」
次はせめて勝ちに繋がる失敗を目指そう!