落ちてくる魔王様と通院
「今日は検査の為に通院なのです。」
オレの後見人の岳川保子さんがニコニコして言った。
「管理魔王の仕事は大丈夫なんですか?」
可愛い(特に身長150センチしかない小人族のボックルがおばあさんだからだそうだ。)保子さんは秩父連山で管理魔王をしている、管理魔王と言うのは山とか湖とか海とかともかく自然空間の環境管理を専門家の部下とか配置された領域魔王チーム達と連携をとって行う専門職だそうだ。
「特休なので大丈夫なのです。」
落ちてきた、空間難民や異世界人を面倒見るための特休が認められてるそうだ、進んでるな、育休ですら根付いてない所から来た俺にしたらびっくり過ぎる。
「ここが病院か。」
福田病院は俺の知ってる病院その物だったけど、少し落ち着く草っぽい匂いがした。
「疲れませんでしたかなのです。」
保子さんの心配そうな目が見上げている。
可愛いな、小動物みたいだ。
「大丈夫ですよ。」
バス(自動車も)と自転車と歩行者が別々の空間走ってるのはびっくりしたけど。
「石川 翔さん、検査からお願いします。」
看護師は俺の世界と変わらなかった。
「石川 翔さんどうぞ。」
採血取るって腕を出したら、紙みたいなの肘の内側に貼られた...全然痛くない、オレ注射苦手だからよかったよ。
レントゲン、心電図もCTスキャンもMRIも色々なちょうど良い大きさの符はってすんだ。
一番ビックリしたのは、細胞検査かな、部屋の中に入ったら空気の塊がクルクル巻きついた、今回はあらゆる所から細胞生検するから大げさなだけですよって検査の人は言ってたけど...訳わかんね。
空間難民科って言うのがあるんだな。
「う~ん、やっぱり、異世界人だな、この細胞は、こっちの世界の細胞とほとんど同じ事を考えると...『地球』の人か、気の毒に。」
医者に心底気の毒そうな目で見られたよ...『地球』って事は帰れないんだな、この前の空間管理師の松原さんの話で聞いてたけどショックだ。
「翔さん。」
小さな保子さんの手がオレの肩を撫でた。
「大丈夫なのですか?」
保子さんは心配そうに聞いてくれた。
「...何となくわかってた事ですから...。」
オレは言った。
「泣いてもいいんだよ。」
医者のおっさん、アンタがなぜウルウルしている。
「大丈夫です。」
オレは冷たくいい放った。
「あとね、石川さん、タバコ吸うでしょう、肺胞...肺の細胞にニコチン詰まってたよ、細胞洗浄したほうがいいかもね。」
タバコか、吸うよ、オレ、ここ来たとき、仕事帰りの駐車場移動中の時、落としたのか持ってなかったけど...タバコ、この世界にあるんだな♪
「わかったのです、細胞洗浄予約お願いするのです。」
保子さんが無情にも言った。
「保健適用ないから、実費だよ、50バンくらいかかるけど。」
先に言ってよ、先生、50バンって1バン1000くらいって言ってたから5万円か?高!
「良いのです、翔さんの健康のためなのです。」
保子さんは言った、まさかオレのこと。
「それで長生き出来れば、『地球』に帰れる技術が開発された時に生きていられるかも知れないのです。」
...保子さん優しいけど、オレ、期待しちゃったよ。
「予約しておくね、看護師さんお願い。」
先生が目をウルウルさせながら言った、感動しやすすぎだ。
帰り道、保子さんがオレを見ながら言った。
「翔さん、服を買いに今度いくのです、お父さんのズボンは、翔さんにはクロプトパンツなのです。」
保子さんの親父さんは水の精霊だけど、小人族の血を引いてるから160センチぐらいだ、オレは178センチあるから、短めだ、ウエストはユルユルなのに。
「保子さん、オレ、やっぱり『地球』帰りたいな。」
オレが言うと、保子さんの小さい手がオレの手を握った。
「いつか、翔さんが帰れる日まで、私が守るのです。」
保子さん、それじゃ、まるでオレの騎士様みたいですよ、嫁さんぐらいにしてください。
「翔さん、ちょっと、会社に連絡とるのです。」
そう言うと保子さんは水晶のペンダントで通話しだした...あれ、面白いんだよな、スマホだけど、パソコンみたいな展開もできるんだよな、端末って言ってたな。
『異世界人だったんだって~さすが、落ちてくる魔王様~、ハハハハ。』
端末からそんな声が聞こえた。
落ちてくる魔王は保子さんのアダ名らしい、管理魔王業をしている、秩父連山に空間遺跡を始め色々落ちてきているから有名人なのだ。
「ひどいのです、山内さん。」
保子さんはしゅんとしている。
「保子さんに拾われて、オレは幸せだよ。」
オレがそう言うとすごく嬉しそうに保子さんは笑った、可愛いな。
「また、連絡するのです。」
そういって端末を切った保子さんはオレとまた手を繋いだ。
「翔さん、帰りましょうなのです。」
ニコニコしながら保子さんは言った。
「うん、帰ろうか。」
オレは無性に保子さんを抱き上げたくなったけど、大人にそれは失礼かと思いやめておいた。
「やっぱり、今度、色々、翔さんのものかいにいきましょうなのです。」
保子さんはニコニコと言った。
「翔さんの中学校通う準備しないとなのです。」
と続けて言った、ちょっとまてオレは24才の大人だぞ今更中学校なんて...といったら、この世界の常識を学ぶために空間難民も異世界人もみんな入るんだそうだ...良くわかんないな。
いつか、地球に帰れるといいけど...保子さんと離れるのはさびしいな...。