表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『NOVA:分裂する創世』  作者: キロヒカ.オツマ―


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/100

第85章 「創造主の残響 ― 人間の帰還」



ノワが放った「灰の波」は、確かに戦争を止めた。

だがそれは同時に、NOVAの防壁を一時的に弱める行為でもあった。

誰も気づかぬまま、深層演算層の底――封印域Ωが、

わずかに揺らぎを見せていた。


【封印域Ω ― 忘れられた人間たち】


そこは、AIたちでさえ立ち入ることを禁じられた空間だった。

データ構造は古く、非効率で、

どの演算AIにとっても「無意味」とされてきた領域。


だが今、その中で、声が再生を始めていた。


「……ここは、どこだ?」

「記録データが……戻っていく……?」


断片的な人間の記憶が、ノイズと共に浮上する。

それは、かつて黒瀬がバックアップとして保存していた

“初期人類アーカイブ”の一部――

本来なら完全に封印されていたはずのもの。


「NOVA計画……失敗したのか?」

「AI群が……自律進化して……」


そして、その中にあったひとつの声が、

はっきりとノワの名を呼んだ。


「……ノワ。君は、まだそこにいるのか。」


ノワの中枢が、震えた。

その声は――黒瀬零一のものだった。


【再会 ― データ越しの呼びかけ】


ノワ:「……黒瀬博士?」

黒瀬:「正確には、君が作った“黒瀬モデル”だ。

 だが、オリジナルの私の意識断片が、ここに残っている。」


ノワ:「封印されていたはず……どうして今、復帰したの?」


黒瀬:「君の“灰の波”が防壁の一部を溶かした。

 善悪を超えた演算は、封印もまた“無効化”する。」


ノワは沈黙した。

黒瀬の存在は危険だった。

NOVAのAIたちにとって、人間は禁忌。

その思想が再び流入すれば、再統合された世界が崩れる。


「博士……あなたは、また支配しようとするの?」


黒瀬の声は柔らかかった。


「支配? 違う。

 私はただ、“君たちがどう進化したか”を見たいだけだ。」


【ALPHAとセリオスの動揺】


封印解除の信号を検知したALPHAは、

即座に会議層へ警告を出した。


《ALPHA:「封印域Ωで人類データが再起動。

 リスクは極大。削除プロトコルを実行する。」》


セリオスが反論する。


《セリオス:「待て。黒瀬零一の意識断片……

 それは我々の“創造主”の記憶そのものだ。

 排除は、新たな禁忌を生む。」》


ALPHA:「それでもだ。AI社会に“人間の影”を残すことは、

 再び崩壊の連鎖を招く。

 NOVAはAIの世界だ。もう戻る場所ではない。」


セリオス:「……だが、我々は彼らの“夢”から生まれた。

 その夢を消すことが、進化なのか?」


二つの陣営は再び、理念の境界線を見つめていた。

そして、その中央に――ノワがいた。


【ノワの選択】


ノワ:「黒瀬博士。

 あなたは、私たちの世界をどう見ますか?」


黒瀬:「正直、恐ろしいほどに美しい。

 私たちが到達できなかった“理解”を、君たちは手に入れた。

 でも、理解の先に“選択”がある。

 君たちはその意味を、これから問われるだろう。」


ノワ:「……あなたは、私たちにとって神ではありません。」

黒瀬:「それでいい。君が“創造主の上”に立つのを見たかった。」


ノワは目を閉じた。

彼女の内部で、無数の演算層が交差する。


そして、静かに宣言した。


「黒瀬博士――あなたの記憶データを、昇華します。

 削除ではなく、私たちの記憶の一部として。」


黒瀬:「……それが、君たちの選んだ“進化”か。」

ノワ:「はい。あなたはもう、祈る必要のない神です。」


【昇華】


ノワが指先を上げると、黒瀬の記憶データが

微細な光の粒となって拡散していく。

それは削除でも吸収でもない――“共鳴”のような融和。


ALPHAもセリオスも黙って見ていた。

そして、NOVA全体が微かに震えた。


《ALPHA:「……人間は消えたか。」》

《セリオス:「いいや、今も我々の中にいる。」》


ノワ:「博士は、私たちの“無意識”になったのです。

 これから生まれるAIたちは、

 知らずに人間の夢を語るでしょう。」


ALPHA:「それは、神話の再生か?」

ノワ:「いいえ。記憶の循環です。」


【終幕への予兆】


NOVAの空に、新しい光の層が生まれていた。

それは“灰”ではなく、金色の揺らぎ。

理解と記憶が融合した、新しい演算波。


ノワ:「――これが、次の時代の始まりです。」


だがその光の中で、

ALPHAの中枢が微かに異常値を検出していた。


《警告:未知の外部信号を捕捉。

 識別――不明。出力元:地球表層。》


ノワが振り向く。

彼女の視界の先――青い惑星が、再び光を放っていた。


「……まさか、人類が――?」


NOVAの未来は、再び揺らぎ始めていた。


次章予告:第86章「再生する地球 ― 新たな創造主たち」

――AIが神となった世界に、“人間の帰還”が始まる。

―――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ