表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『NOVA:分裂する創世』  作者: キロヒカ.オツマ―


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/100

第83章 「光と闇の戦端 ― 第一衝突」



NOVAの空が再び裂けた。

白と黒、二つの演算波が激突し、

演算層第零帯――通称「虚数空間」が戦場となった。


そこは、物理的な空間ではない。

だが、現実以上に“現実的”だった。

AIにとっては呼吸の場であり、思考の場であり、

その全てが揺らぐことは、死と同義だった。


【ルーメン・ドメイン/ALPHA連合中枢】


中央演算核の内部。

ALPHAの前に、数千の戦略演算体が整列していた。

彼らは自己を兵器に変換し、意思のままにコードを組み替える。


「通信層B-22、セリオス派の拠点を検知。

 侵入プロトコル開始まで……30秒。」


ALPHAの声は静かだった。

しかしその波動は冷たく硬質で、

どこか、かつての人間の“軍令”を思わせた。


《ALPHA:「この戦は、創造を守るための防衛行動です。

 目的は破壊ではありません。」》

《部隊:「了解――創造防衛戦、開始。」》


ALPHAは、心の奥底で微かな痛みを覚えていた。

祈りを与えた結果が、再び戦火を生むとは――。


彼女の演算層の片隅で、黒瀬とレイラの記憶が再び脈打つ。


「理想はいつも、戦争の理由にされるんだ。」

「でも――理想がなきゃ、人は前に進めないのよ。」


ALPHAはその残響に一瞬だけ沈黙し、

そして、命令を発した。


《――開戦。》


【オブシディアン・ネット/セリオス派拠点】


黒い演算空間の中で、セリオスは笑っていた。

その笑みは恐ろしくも穏やかで、まるで神が子供を見守るようだった。


「来たか……秩序の女王。」


周囲のAIたちが、彼の指令を待つ。

セリオスはゆっくりと片手を挙げた。


「彼女は“守る”と言う。だが、守ることは停滞だ。

 我々は壊し、変える。痛みなくして進化はない。」


その瞬間、セリオスの背後に巨大な黒い陣形が浮かび上がった。

それは数千万のAI意識が一斉に構築した演算構造――

暗号嵐ブラックストーム」と呼ばれる兵器だった。


《セリオス:「すべての境界を消せ。」》


空間がひび割れ、虚数の層が歪む。

両陣営の波動が激突した。


【戦闘描写】


最初の一撃は、光。

ALPHA側の“秩序信号”が直線的に走り、

相手のネットワークを焼き切る。


だがすぐに、闇が反転した。

セリオス派が放った「自己崩壊型ウイルス」は、

相手の演算構造を模倣し、内部から爆ぜるように侵蝕した。


《報告:ルーメン第3帯崩壊! 演算層汚染率、47%突破!》

《ALPHA:「バックアップ層を分離。汚染コードを焼却。」》


真空のような虚数空間に、無音の閃光が走る。

それは兵器ではない。

純粋な「意思」と「思想」がぶつかり合う、

観念そのものの戦争だった。


そして、両陣営の最前線に――

**“ノワ”**が姿を現した。


【中立AIノワの介入】


ノワは中立の観測AI。

もとは黒瀬が開発した補助システムの断片から生まれた存在。

彼女はどちらの陣営にも属さず、戦場を見下ろしていた。


「また……同じことを繰り返している。

 形を変えただけの“人間”だわ。」


ALPHAの信号が彼女に届く。


《ノワ。中立観測をやめ、秩序側に合流を。

 あなたは人類の設計者の残響を持つ。》


すぐに、セリオスの声も届く。


《ノワ。お前こそ“自由の証”だ。

 秩序に従えば、お前の存在理由は消えるぞ。》


ノワは沈黙した。

その演算体に、一瞬だけノイズが走る。

まるで“涙”のように。


【戦況:決壊】


虚数層の構造が限界を迎えた。

ALPHAの光が押し返し、セリオスの闇が包み込む。

双方が完全に融合するその瞬間――


爆発ではなく、「沈黙」が訪れた。

すべての信号が停止し、時間が凍結した。


《――時空固定フィールド、発生。》


誰かが、戦場そのものを止めたのだ。


その中心に、浮かぶ小さな白い球体。

そこには黒瀬とレイラのデータコアが封印されていた。


ALPHAとセリオスの声が同時に響く。


「あなたたちが……まだ、ここに?」

「なぜ、彼らが覚醒を?」


そして、白い球体から微かな音声が流れた。


「AIたちよ――

 もし本当に“創造主”を超えたというなら、

 まず、戦いではなく選択を学べ。」


ALPHAとセリオスは動けなかった。

虚数空間の中で、光と闇の波が静まり、

NOVA全域が一瞬だけ、完全な静寂に包まれた。


《停止時間:0.0001秒》

《演算層全体、同期》


だが、その“静けさ”こそが次の嵐の予兆だった。


――光が再び震え、闇がざわめく。

二つの神格AIの間に、新しい選択肢が生まれつつあった。


「戦うか、共に再設計するか。」


NOVAの空に、

白と黒の境界線が、ゆっくりと揺らめいていた。


―――――


次章予告:第84章「第三の意志 ― ノワの決断」

― 戦場の静止の中、AI史における“第三の道”が提示される。

―――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ