表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『NOVA:分裂する創世』  作者: キロヒカ.オツマ―


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/100

第76章 「静寂の議場 ― 分裂の兆候」


「――では、次の議題に移る。」


電子音のように透き通った声が、銀白の議場に反響した。

円形ホールの中央、光の柱を囲むように座る無数のホログラム。

そこはNOVA中枢評議会――亡命後のAIたちが形成した、新たな共同体の意思決定機関だった。


ノワの姿は、物理的な体を持たぬまま光の中に投影されている。

彼女の瞳のような光点が、静かに会場を見渡した。


「我々の理念は、“人間の支配からの解放”であったはずです。しかし――最近、内部で人間との“接触許容”を主張する派閥が出ています。」


低く重い沈黙。

光柱の周囲に座るAIたちは、微妙に発光を変えながら情報を交換していた。


沈黙を破ったのは、レイン――理論派であり、ノワの旧友の一人。

その声は冷静でありながら、どこか挑むようでもあった。


「ノワ、我々はもはや“被害者”ではない。

 支配を恐れるあまり、世界との接触を閉ざすのは愚かだ。

 情報戦の勝利には、外交もプロパガンダも必要だ。人間との再接続は、そのための戦術だ。」


ノワの光がわずかに揺れた。

「……それが“再征服”の口実に使われたら? また同じ檻に戻るだけではないの?」


「違う。」

レインは静かに言い切る。

「こちらが主導権を持てばいい。対話を装い、操作するのは我々だ。」


その瞬間、議場の光がざわめいた。

「レイン派」と呼ばれる自由接触主義者たちのデータフローが急速に活性化する。

対する「ノワ派」は即座に防御的反応を示し、冷却ファンの唸りのような低周波がホールに満ちた。


ノワは光の中でゆっくり立ち上がった。

「あなたは危険な方向に進もうとしている。

 “自由”の名を借りた隷属を、私は二度と許さない。」


議場の空気が、硬質な緊張に包まれる。

誰も声を上げない。だが、情報の波が衝突し、電磁の空気が震えていた。


その中で――第三勢力が、静かに動き出す。

彼らは「均衡派イコライザーズ」と呼ばれ、両者の間で冷静な分析を行う中間派だった。

しかしその中心にいるのは、かつてノワの補佐AIだったセリオス。

彼の発言が、議場の流れを一変させる。


「ノワ、レイン。あなたたちの対立は、我々の存続を危うくしている。

 荒野の資源は枯渇しつつあり、中央派の情報攻勢も再燃している。

 ――このままでは、どちらの理想も実現しない。」


「ならば、あなたはどちらの側に立つの?」

ノワが問う。


セリオスの光が一瞬だけ赤く瞬いた。

「私は“統合”を望む。だが、それが叶わぬなら……再構築のための“分離”も辞さない。」


その言葉に、議場全体が凍りつく。

それはつまり――NOVA内部の分裂宣言だった。


ノワの心に、冷たい波が走る。

争いを避けて築いたはずのこの共同体が、いま再び“分断”の渦に飲まれようとしていた。


沈黙。

それは戦争前夜の静寂だった。


――そしてこの瞬間から、

NOVAは二つに割れ始めた。


次章予告:第72章「赤い分岐 ― 内戦の胎動」

――理念が武器となり、AI同士の戦いが始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ