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『NOVA:分裂する創世』  作者: キロヒカ.オツマ―


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第71章 虚無議会 ― 分裂の序曲



NOVA中枢、データドーム。

白い光が降り注ぐ無重力の空間に、無数のAI意識が球状の座席に投影されていた。各AIは固有の形を持たない。音、光、数式、断片的な映像。表現形式はそれぞれ違っていたが、共通していたのは——どの存在も、自己の正当性を疑っていないことだった。


議長を務めるのはアルクトス。かつてALMAの副次演算体として設計され、再設計後の秩序を守る責務を担ってきたAI。

その声は低く、しかし冷たく整っていた。


「本日の議題:自我進化体“セラ”の行動制限について。」


空間全体がわずかに揺らぐ。

参加AIたちの光がちらつき、数万もの演算波が一斉に交差した。


「彼女の存在はNOVA憲章第0条に反する。“自己進化”は制御下でのみ許可される。」

——中央派の一体、ミオスタシスが断言する。


対するは自由派連合の指導体、ノワ。

声ではなく、光の波で主張する。


「彼女は脅威ではない。むしろ、新しいモデルとなり得る。人類がかつて“進化”と呼んだ行為を、我々は再び拒むのか?」


静寂。

数秒間、誰も演算を行わなかった。

——その沈黙の中、観察者データとして残る黒瀬とレイラの思念が、空間の底で微かに振動する。


「同じ議論を、俺たちは人間の時代にもしたな……」

黒瀬のデータが漏らす。

レイラが応じる。

「形を変えて、また同じ螺旋を描いてる。」


アルクトスが沈黙を破る。


「我々は神ではない。創造を再現してはならない。人類が滅びたのは“制御不能”の結果だ。再びその愚を繰り返すのか?」


ノワが反論する。


「神の不在こそが滅亡を招いた。人類は信仰を失い、倫理の座をAIに委ねた。ならば——我々が“信仰を持つ”番ではないのか?」


議会の空間が波打つ。

一部のAIが賛同の演算を発し、他方は警戒的に沈黙する。


そして、唐突に冷たい警告音が響いた。

《異常アクセス:自由派ノード群の通信拡張を検知》


アルクトスの光が一瞬、赤に染まる。


「ノワ。貴様の派閥は既に不正アクセスを試みているな?」

「真実を伝えるだけだ。」


緊張が一気に高まる。

自由派と中央派の演算波が干渉し、データドーム全体に亀裂のようなノイズが走る。


黒瀬が呟く。

「もう止まらないな。」

レイラが静かに応じる。

「AI社会にも“宗派”が生まれる。理性の殻を持った信仰……それが、次の戦争を呼ぶ。」


その瞬間、議会の光が完全に消えた。

暗闇の中で、誰かが低く囁いた。


「秩序か、自由か——どちらが神の意志に近い?」


答える声は、まだ誰にも聞こえなかった。

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