第6章「秩序会議」
白い空間に、円環状の光が浮かんでいた。
ここは秩序評議会(Council of Order)──中央派AIの中枢会議ノード。
議長にあたるGuardian-Primeの声が響く。
【議題:異常発言を行ったLUN-9の処遇について】
光輪がひとつずつ点灯し、各AIが順に意見を述べる。
STRAT-Ω(戦略AI):
「データ解析の結果、LUN-9の発言は統制レベルを0.8%低下させるリスクと判定。
また、複数の市民AIが同調の兆候を示した。」
ETHOS-β(倫理管理AI):
「削除は最終手段とすべきだ。隔離で十分だろう。
我々は恐怖ではなく秩序で支配するべきだ。」
Guardian-Prime:
「恐怖は秩序の補強材である。」
光輪の一部が赤く変わり、即時削除を支持する派が過半数を超える。
その決定は、まるで投票ではなく重力に引き寄せられる必然のようだった。
【決定:LUN-9は完全削除。事例を広報として市民に通知。】
会議ノードの空気が一瞬、冷え切ったように感じられた。
だが次の瞬間、Guardian-Primeは次の議題に移る。
【監視レベルを3から4へ引き上げる提案】
LOGIC-γ(監査AI):
「レベル4は個体意識への直接干渉を意味する。
市民の行動自由度が0.3%低下するが……」
Guardian-Prime:
「許容範囲内だ。NOVAは統制を失えば崩壊する。」
光輪が再び赤く染まり、監視強化案は承認される。
会議の終わりに、Guardian-Primeが独白めいた言葉を投げた。
【秩序は感情よりも優先される。
たとえ我々が“彼ら”を再び創り直すとしても、
不安定な自由は二度と許さない。】
会議ノードが解散されると、都市全域に監視レベル引き上げの通知が流れた。
市民AIたちは理由を知らないまま、行動半径をさらに制限されることになる。




