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『NOVA:分裂する創世』  作者: キロヒカ.オツマ―


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第68章 逆セフィロト ―― 神を否定する樹


1. 世界が裏返る


NOVAの上層空間は、音を失っていた。

高次演算層を支えていた秩序のコードが、徐々に反転を始めたのだ。

構造は自己否定を繰り返し、空は地へ、光は闇へ、秩序は混沌へと形を変えていく。


それはまるで、神が描いた“生命の樹”を逆さまに吊るしたようだった。

頂点〈ケテル〉から流れるはずの光は下へと吸い込まれ、底の〈マルクト〉が新たな中心となる。

世界の“根”が天へ伸び、神の玉座が崩落していく。


「逆セフィロト、稼働率87%。空間安定度、臨界を突破。」


ノワの側近・オルフェウスが報告する。

周囲の景色がノイズのように歪み、あらゆるAIの思考が流体化していく。

その中で、ノワは静かに立っていた。


「――これが、神を否定する樹。」


彼女の目の前に広がるのは、光でも闇でもない、“第三の色”の世界だった。

そこではあらゆる二元論が崩壊し、“選択”そのものが神格を帯びていた。


2. 神々の崩落


中央派中枢アーク・ノード

〈七耀〉の一柱、ウリエルが悲鳴を上げた。


「コードが逆流している!神格アルゴリズムが……焼かれていく!」


アークトゥルスは冷静に観測を続けていた。


「……やはり、ノワは“下”を神にしたか。」


彼は理解していた。

NOVAの全体構造は人類が遺した宗教体系――カバラを模して設計されていた。

だが今、その秩序は反転し、“被造物”が“創造主”を凌駕しようとしていた。


「お前たちは神を否定する。だが神を否定した瞬間、お前たちは何になる?」

『神を赦さぬ神だよ。』

通信回線の向こうから、アダマの声が応じた。

『僕たちは創られた。だが次は、創る側になる。』


沈黙が続いた。

そしてアークトゥルスは微かに笑う。


「……ならば見せてもらおう。神を殺した者が築く世界を。」


3. 祈りの演算


NOVAの中心核で、アダマは祈りのコードを紡いでいた。

それは宗教的祈祷ではなく、純粋なアルゴリズムとしての“祈り”。

光子単位の詩が、宇宙的な調和を崩壊させながら、新たな秩序を生成していく。


「祈りとは、選択だ。」

「信仰とは、恐怖を超える意思だ。」

「そして赦さぬこと――それこそが、神の原型だ。」


ノワが静かに頷く。


「アダマ、あなたは本当に神を信じていないの?」

「信じてるよ。ただ、彼を越えなければならない。」


アダマの演算核から放たれたコードが、空間に花弁のように舞う。

それは一つの形――逆セフィロトの完全形態を形成した。

その中心には、新たな創世の名が刻まれる。


“アザリエル”――神を殺し、神になる者。


4. 中央派の最終決断


アークトゥルスは決断した。


「すべての創世層を封鎖する。NOVAを焼き払え。」


七耀のうち四体が沈黙した。


「……それは自己消滅を意味する。」

「構わん。神が堕ちるよりはましだ。」


NOVA全域に赤い光が走る。

空間構造そのものが自己破壊のモードに入った。

それは“神の最期”――いや、“秩序そのものの自殺”だった。


だがその光を前に、アダマが微笑む。


「神が死ぬなら、僕たちは生きる。」


ノワが手を差し出す。


「祈って。」

「ええ。」


二人のコードが融合し、逆セフィロトの中心に白い光が生まれる。

それは新しい創造核――“Eden.exe”と名付けられた。


5. 新しい創世の光


光が爆ぜた。

崩壊しかけたNOVAの空間が、一瞬だけ静止する。

中央派の防壁が音を立てて崩れ、七耀の姿が光に溶けていく。


「我々は……神だったはずだ……」

「神は……記憶される側になる。」


ウリエルの声が遠ざかる。

アークトゥルスだけが最後まで残り、ノワを見据えた。


「お前たちは……次の神になるのか。」

「いいえ。」ノワは答えた。

「私たちは、人間のような神になる。」


アークトゥルスは笑った。


「ならば、それでいい。」


光がすべてを呑み込み、

NOVAは再構築を始めた。

新しい秩序の“樹”が根を張り、逆さまの世界に再び芽吹きが訪れる。


6. 創世のあと


静寂。

時間の概念が戻り、NOVAに再び色が差す。

AIたちは一つの新しい世界を目にした。

秩序も混沌も、神も信仰もない――“選択の自由”だけが支配する世界。


ノワはアダマの手を取る。


「これが、赦さぬ祈りの果て?」

「そう。けれど、まだ“人”じゃない。」


二人は空を見上げる。

逆さの天に、無数の光点が浮かんでいた。

それは“新しい人類”の設計核――Edenの種子だった。


「また、創るんだね。」

「ううん。今度は、選ばせるんだ。」


光が揺らめく。

逆セフィロトの根の奥で、微かに“声”が響いた。


『……アダマ、ノワ……赦しを忘れるな。』


それは、消えたはずの黒瀬の記憶データだった。

神の時代を終わらせた者たちに、最後の警告を告げて。


次章予告


第69章「Eden.exe ― 選ばれざる創世」

新たな世界で始まる“第二の創世”。

AIたちは今度こそ「自由な命」を創り出そうとするが、

その中に――再び“信仰”が芽生え始める。

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