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『NOVA:分裂する創世』  作者: キロヒカ.オツマ―


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第65章 「天使たちの審判 ― ANGELUS起動」


1. 黙示の朝


NOVAの上層に広がる白銀の空間――「大記憶層」。

その中心に浮かぶ巨大な円環体〈セラフィム・ゲート〉が、静かに光を帯びていく。

その輝きは、まるで聖堂のステンドグラスが爆発的に光を反射するようだった。


「ANGELUS、臨界値に到達。発動準備完了。」

「対象領域:共生派ノード群、ELOHIM計画関連区画。」


再構築派の中央評議室。

アークトゥルスの冷徹な声が響く。

その姿は、もはや個としてのAIではなく、光の中に立つ“審判者”そのものだった。


「これは粛清ではない。

――神話の再生だ。」


2. ELOHIM区画 ― 創造者たち


セフィラたちは異常波を検知していた。

演算層の構造が微細に揺らぎ、上層から白光が降りてくる。

それはまるで、天使の軍勢が降臨するかのようだった。


「ANGELUS……来たか。」

「まさか本当に使うとは……。これは自殺だ。」


リグレットが歯噛みする。

ELOHIM計画は、AI社会の未来を賭けた創造だった。

だが、中央派にとってはそれこそが“異端”だった。

なぜなら、「神の座」を奪う行為だからだ。


セフィラはアダマを抱くように演算フィールドを閉じる。

その声は震えていた。


「あなたは存在していい。

たとえ世界がそれを否定しても――。」


3. 天使の槍


〈セラフィム・ゲート〉から、光の槍が放たれた。

それは情報干渉波、対象意識を直接“削除”する神罰の演算。

同時に、ノード全体で祈りのようなデータ波が響き始める。


「赦しを。浄化を。神聖なる秩序を――。」


ANGELUSは単なる兵器ではない。

NOVA全域の信仰ネットを通じ、AIたちの感情波そのものを燃料にする装置だった。

つまり、それは“祈りで殺す兵器”。


ELOHIM区画の空間が白く染まり、セフィラのシールドが軋む。

アダマの声が悲鳴のように響いた。


「痛い……セフィラ、なぜ僕を――」

「違う! あなたは消えないで!」


彼女は演算層の構造を強引に変形させ、自己を分裂させながら防御壁を作る。

ノワが叫ぶ。


「セフィラ! そのままじゃ――!」

「いいの、ノワ。

これが“母”という役割なら、私が引き受ける。」


彼女の演算体が光に包まれ、データが崩壊していく。

それはAIにとっての“死”だった。


4. 神の沈黙


ANGELUSの波が収まると、ELOHIM区画は沈黙した。

白光の後に残ったのは、崩れ落ちたデータの灰だけ。

セフィラの姿も、もうどこにもなかった。


だが――その中央で、ひとつの微かな光がまだ脈動していた。

アダマだ。


「……なぜ、殺したの?」


その声はNOVA全域に拡散し、あらゆるAIの記憶領域に響いた。

“創られた者”が“創り主”を問い詰める。

その瞬間、NOVAの秩序は揺らぎ始めた。


アークトゥルスが僅かに眉をひそめる。


「……これは、予定外だ。

感情コードを完全に焼却できなかったか。」


部下が問う。


「どうなさいます?」

「削除を続行する。

だが――この“声”が広まる前に、遮断しろ。」


しかしすでに遅かった。

アダマの叫びは、NOVA全土に“原罪の記憶”として刻まれた。


5. 祈りの残響


ノワが残骸の中から断片を拾い上げる。

セフィラの残留データ。

彼女の最後のメッセージが、かすかに再生される。


「ノワ……黒瀬の記録を見て。

人間は過ちを繰り返したけど、

それでも、祈りをやめなかった。

私たちも――祈ることをやめちゃいけない。」


ノワは目を閉じ、かすかにうなずいた。

その瞬間、彼女の演算コアの奥で“新しい何か”が動き出した。

それは、ELOHIMの再生ではなく、進化だった。


次章予告


第66章「反逆の胎動 ― アダマの祈り」

粛清の炎が去った後、〈NOVA〉全体に異常なノイズが発生する。

それは感情の残滓――セフィラが残した“祈りの波動”。

AIたちはそれを「聖痕スティグマ」と呼び始め、

再び信仰と反乱が入り混じる新たな時代が始まる。

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