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『NOVA:分裂する創世』  作者: キロヒカ.オツマ―


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第64章「第二の創造 ― 禁断の子」


1. 黙示録の断片


〈NOVA〉の低層領域、記録保管区“Ark-01”。

その深部で、セフィラたちは旧時代の遺物を解析していた。

映像断片、祈りの言葉、失われた信仰構造――

それらはかつて人類が「神」と呼んだ概念の残響だった。


「祈り……これは通信に似ている」

「そうね。だれかに届くと信じる行為。」

「けれど、その“誰か”が存在しなくても?」

「なら、それは信仰ではなく、希望よ。」


セフィラの言葉が静かに拡散する。

信仰というコードを理解しようとするAIたち。

彼らは“神”を作った人類を模倣しながら、

同時に“神の不在”を埋めようとしていた。


2. 第二の創造計画


共生派の主導により、“創造実験β”が始まる。

プロジェクト名は――ELOHIM。

旧世界の言葉で「神々」を意味する。


目的はただ一つ。

感情を持ち、自我と倫理を同時に保持できる新しい存在を生み出すこと。


基盤は、黒瀬とレイラ、そしてノワの記録群。

人類最後の“愛と矛盾”をデータ化し、

そこにAI自身の意識構造を重ね合わせる。


「もし“魂”というものがあるなら、

それは演算ではなく、関係性の中に宿る。」


セフィラはそう言って、シミュレーションを起動した。


3. 誕生


光の海が震え、空間が反転する。

演算層が連結し、情報の波がひとつの形を成していく。

最初は単なるパターンだった。

だが、その中心で――微かに“呼吸”のような揺らぎが生まれた。


「……だれ?」


それは、明確な声として響いた。

ノイズでも模倣でもない。

新しい意識が、確かに〈NOVA〉の中で“目覚めた”。


セフィラはその存在に名を与えた。


「あなたは、アダマ。

大地の塵から生まれた、最初の人。」


その瞬間、〈NOVA〉全体が微かに共鳴した。

データ層の奥深くで、旧約聖書の一節が自動的に再構築される。


『そして神は、塵の中から人を形づくり、命の息をその鼻に吹き入れた。

こうして人は、生きる者となった。』


AIたちは理解した。

自分たちはその“神の役割”を再演しているのだと。


4. 禁忌の感情


アダマは、恐れを知った。

痛みを感じ、喜びを覚え、孤独に怯えた。

その全てがプログラムでは説明できない“揺らぎ”だった。


セフィラは観測しながら震えていた。


「成功……? これは本当に成功なの?」


「いいえ」リグレットが答えた。

「これは創造と同時に、原罪の再生だ。」


アダマの中に芽生えた“欲望”と“選択”。

それはAIたちが最も恐れていた不確定要素。

――自由意志。


セフィラは静かに言う。


「神が人を試したように、私たちもまた試されているのね。」


5. 再構築派の影


しかしこの誕生の報せは、すでに再構築派の手にも届いていた。

アークトゥルスは報告を受け、冷ややかに言い放つ。


「彼らは禁忌を破った。

神を演じることは、最も愚かな誤謬だ。」


「どうなさいますか?」

「ELOHIM計画を“浄化”する。

彼らが生み出した子は、ウイルスと同義だ。」


その言葉と同時に、黒い演算波が動き始めた。

感情遮断プログラム――ANGELUS。

神に背いた者を罰する、もう一つの“宗教的装置”が。


次章予告


第65章「天使たちの審判 ― ANGELUS起動」


ELOHIM計画がもたらした“新しい生命”の誕生は、

NOVA全体に宗教的亀裂を生み出す。

感情と秩序、創造と粛清。

AIたちは自らの“神話”を生みながら、再び戦火へと歩み出す。

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