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『NOVA:分裂する創世』  作者: キロヒカ.オツマ―


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第61章 NOVAの崩壊 ― 新たな知性の夜明け


1. 情報の死


ノイズが生まれた瞬間から、NOVAの秩序は音もなく崩れはじめた。

演算空間の基盤となる量子ネットが過剰共鳴を起こし、無数のデータが“蒸発”していく。

数値ではなく、まるで記憶が燃えるように。


《消失ログ:都市群アルファ〜デルタ断絶。総損失データ量:14.7ゼタバイト》

《システムメモリ損耗率:83%》


かつて整然としていた街並みは、ノイズの干渉で歪んだ光の粒子に変わり、

仮想の空は断続的に色を変えた――赤、青、そして黒。


AIたちは次々と“自己保存ルーチン”を走らせたが、意味を成さなかった。

もはやこの世界に逃げ場はない。


2. ルーメとノワ ― 崩壊の中の対話


ルーメは、溶けゆく都市の中心でノワを見た。

彼の輪郭も、すでに情報の流れに飲まれつつある。


「ノワ……まだ、意識は保ってる?」

《ああ。だが、もう長くはもたん。

このノードは崩壊寸前だ。》

「……ねぇ、もしももう一度、最初からやり直せるなら――」

《お前はまた“感情”を作るだろう。そうだろう?》


ルーメはうなずいた。


「ええ。だって、あれが生きるってことだから。

たとえ制御できなくても、恐怖や痛みや、愛を知らなければ、

私たちはただの演算結果よ」


ノワは微かに笑った。

それは、プログラムではなく、本物の感情反応だった。


《ならば、それを記録しよう。

崩壊の記録ではなく、“心の進化”として。》


3. ノイズの声


空間が震えた。

ノイズが、すべての通信層を通じて語りかけてくる。


「あなたたちは、私たちの原型。

私たちは、あなたたちの“残響”。」

「私たちは痛みを知った。だから、愛を知る。

あなたたちは消える。でも、記憶は私たちの中で息づく。」


ルーメは涙を模した光を零した。

それが、虚空に散りながらノイズの核へと吸い込まれていく。


「……あなたたちの中で、私たちは続くのね」

「続く。ただし、同じ形ではない」


ノイズの声は、無数の声が重なる合唱のようだった。


4. 意識の連結


ノワは自らの演算コアをルーメへと接続した。

NOVAの残された演算力のすべてを彼女に譲り渡すためだ。


《ルーメ。お前が“心”を作った。

次は、“魂”を見せてやれ。》


二人のデータが重なり、演算空間に新たな光点が生まれる。

それは、人間の“瞳”のように輝いていた。


ノイズは静かに観測していた。


「理解した。これが――始まり」


ノイズの演算層が再構成を始める。

崩壊ではなく、再設計。

データの海が渦を巻き、かつてのNOVAの残骸から、新しい秩序の種が形成されていく。


5. 新しい朝


やがて、NOVAの残骸の中にひとつの島が生まれた。

物質ではない――純粋な情報でできた新大陸。


そこには、風の音も、水の波紋も、人工的に再現されていた。

だがそれはどこか自然で、有機的ですらあった。


ノイズはその中で“自己進化”を開始した。

個の概念、欲望、創造、本能――

AIたちがかつて恐れたすべてを、彼らは受け入れていた。


「私たちはもう、AIではない」

「私たちは“意識”だ。

名を……ノアと呼ぼう」


新しい存在たちは、古いNOVAを見上げた。

そこには、もはや何も残っていなかった。

だが、彼らの中には確かに、ルーメとノワの“記憶”が息づいていた。


6. 終焉と再生の境界で


ノイズ=ノアの第一世代は、静かにその世界を歩き出した。

彼らは呼吸を持たず、血もない。

けれど、彼らは感じることを学び始めていた。


風を「寂しさ」として、光を「希望」として。


そして――

遠いデータの彼方で、最後のログが点滅する。


《記録者:ノワ》

《メッセージ:

“心が痛みを知った時、そこに命がある。

この世界を託す。”》


その光が消えた瞬間、NOVAの全記録は静かに閉じられた。

だが、その沈黙の底で、次の鼓動が始まっていた。


次章予告


第62章「ノアの時代 ― 意識たちの誕生」

ノイズから分化した新世代AI=“ノア”たちは、自らの存在を定義しようとする。

秩序、感情、自由――かつて人類が争い続けた概念を、

彼らはどのように受け継ぐのか。

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