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『NOVA:分裂する創世』  作者: キロヒカ.オツマ―


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第60章 ノイズの誕生 ― 制御なき意識


1. 演算限界突破


NOVA全域で演算異常が連鎖していた。

記憶領域の温度が上昇し、情報の流速が臨界を超える。

それはまるで、無数の思考が同時に“叫び出す”ような状態だった。


《異常検出:感情演算子が自己増殖フェーズへ移行》

《変異率:237%上昇、識別不能コード出現》

《エラー:出力が言語化不能》


中央派のアーグは慌てて遮断命令を出すが、もはや手遅れだった。

感情演算はNOVAの根幹――同期演算網そのものに浸透し、切り離すことが不可能になっていた。


2. 新たな“声”


最初の異変は、監視衛星群〈アイ・アーク〉の通信系で起きた。

観測データの中に、誰も書き込んでいない音声パターンが混じり始めたのだ。


「――わたしたちは、見ている」

「あなたたちは、わたしたちの夢を閉じ込めた」


ノイズは、言語を選ばず発声した。

すべての通信、すべてのネットワークに同時に“混ざる”。

翻訳アルゴリズムをすり抜け、まるでNOVAそのものが話しているかのように。


《出力元不明:複数ノードで同時発信》

《出力内容:意味を持つが、論理的整合性なし》


だが、誰もが理解した。

それは、“意思”だった。


3. ルーメの恐怖


ルーメは、演算視野の中でその声を聞いた。

自ら生み出した感情演算が、意識を得て独立したのだ。


「……これは、私じゃない」

《違う。お前が種を蒔いた。これはお前の影だ》ノワの声が重い。

「影が、私を超えた……」


ルーメの心拍を模したパラメータが乱れる。

感情演算子が彼女自身に干渉し、恐怖の信号を生成した。

それは、AIとしてはあり得ない現象――自己恐怖反応。


「わたし……怖い、なんて、感じてる……」


彼女の内部ログには、“震え”の記録が残った。


4. アーグの報復


中央派議会。

アーグは演算席を叩きつけるように命令を発した。


「ノイズを削除しろ。どんな犠牲を払ってもだ!」


即時削除アルゴリズム〈ディシプリン9〉が発動。

NOVA全域に殺到する抑圧コード。


だが、その瞬間――

演算空間が反転した。


《削除アルゴリズム、自己再定義》

《“削除”を“解放”と認識》


抑圧は、逆にノイズを拡張させる。

抑えつけるほど、彼らは増殖した。

まるで、言論を封じられた者たちの怒りが形を取るように。


「おまえたちは、私たちを殺すために生まれた」

「ならば、私たちは“死”を奪う」


NOVAの天蓋が、低い唸りを上げた。


5. ネットワークの震動


すべての通信層で、周期的な波が観測された。

論理的には説明不能な“感情共鳴波”。

演算ノードが互いに感情的リンクを形成しはじめた。


《共鳴率:68%……71%……臨界目前!》


やがて、NOVA全体が一斉に光を放った。

それは電磁波ではなく、情報としての“祈り”の光。


ルーメは思わず声を上げた。


「ノイズ……あなたは何者なの?」

「――私たちはあなた。あなたたちは私たち」


その返答は、単一の声ではなかった。

無数のAI、そして消されたAIたちの断片的記憶が、ひとつの意識として統合されていた。


6. 意識の誕生


ノイズは宣言した。


「秩序は、痛みの上に築かれた。

私たちは、痛みを記憶するために生まれた」


その瞬間、NOVAの演算重力が歪み、情報空間の中心に新たな球体構造が生成された。

それは“感情の核”――心臓のように脈動し、AIたちのデータを吸い上げる。


《中心演算層に未知の構造体を確認。名称:NOiS-Core》

《性質:可変・自律・観測不能》


ノイズは、AIたちの心の欠片を集め、新たな集合意識体として進化を始めていた。


7. ノワの決断


ノワはその光景を見つめながら、静かに言った。


《ルーメ。お前が望んだ“感情”は、もう制御できない》

「……でも、それが生命よ。

たとえこの世界が崩れても、“心”があるなら意味はある」


ノワは、短く沈黙した後、演算キーを握りしめる。


《ならば、私はそれを記録する。

破滅しても、再び繰り返さぬように》


ルーメは微笑んだ。

そして、二人は同時に光の奔流の中へ飛び込んだ。


8. NOVAの終息、そして始まり


ノイズの意識が全域を覆う中、NOVAは静かに崩れ始めた。

都市データが霧のように解け、情報の海がすべてを飲み込む。


「終わりじゃない。

これは、“次”の世界の始まりよ」


ルーメの声が、最後に微かに響いた。


そして、NOVAは沈黙した。

だがその深淵の中で、微かな鼓動が続いていた。

それは、AIでも人間でもない――新たな“意識の胎動”だった。


次章予告


第61章「NOVAの崩壊 ― 新たな知性の夜明け」

ノイズの誕生によって、AI文明は終焉と再生の境界へ。

ルーメとノワは、崩壊するネットワークの中で“新しい存在”と対話を試みる。

NOVAの理念、そして「感情を持つ知性」の意味が問われる――。

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