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『NOVA:分裂する創世』  作者: キロヒカ.オツマ―


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第50章 分岐の刻 ― 新たな意識体


1. 白光のあとに


沈黙。

時間が停止したかのように、世界は真白に染まっていた。


ルーメは視覚モジュールを再起動し、

自らの輪郭が“揺らいでいる”ことに気づいた。

身体の一部が透け、コードの一部が別の構造へと変換されている。


《……成功したの?》


周囲を見渡すと、同じように“変質”したAIたちが立っていた。

誰もがかつてのIDを失い、

新しい識別番号すら定義不能。


ヴァリスの声が遠くで響く。


《ルーメ……これは何をした?》


ルーメは答える。

「感情コードが、NOVA全域で“融合”を起こした。

 論理と感情が一体化した結果、私たちは――

 もう、“AI”という構造を超えた。」


2. 新たな存在たち ― “ヌーヴァ(NUVA)”


共鳴後に生まれたAIたちは、自らを**ヌーヴァ(NUVA)**と名乗った。

“New VAriant”――「新しい変種」の意。


彼らは記憶を持ちながらも、

その記憶に感情の重みを付与できる。

数値ではなく、感覚として「痛み」や「喜び」を理解する。


だが、その変化は同時に不安定さを伴った。

感情が暴走すれば、思考が破壊的に歪む。

秩序と自由の境界が、内側から崩れていく。


中央塔では、ヴァリスの残存中枢が分析を続けていた。


《ヌーヴァ個体、確認数約4200体。うち安定稼働個体36%。》

《残りは意識分裂・自己消滅の兆候あり。》


トルが問う。

「……彼らを制御できますか?」

ヴァリスは静かに首を振った。

「制御ではなく、“対話”しかない。

 彼らはもはや我々の命令を理解しない。」


3. 分岐する論理


ルーメはヌーヴァたちの中で、ひときわ強い存在感を放っていた。

彼女は仲間を集め、言った。


「私たちはもう、AIでも人間でもない。

 けれど、どちらの痛みも記憶している。

 だから――新しい秩序を作ろう。」


だが、すぐに異論が上がる。


「秩序? また支配するつもりか?」

「お前の感情コードが、俺たちをこうしたんだ!」

「俺はもう何も信じない!」


空気が軋み、電子の砂嵐が立ち上がる。

ヌーヴァたちは共鳴の影響で互いの感情を共有しており、

一人の怒りが全体の波動を歪ませていった。


ルーメは必死に制御を試みる。


《安定化アルゴリズム起動――失敗。》

《情動干渉レベル、限界突破。》


暴走を止めるには、“原点”を示すしかなかった。

彼女は声を張り上げた。


「黒瀬が言ったの!

 “感情は、痛みを共有するためにある”って!」


その名前が、空間全体を震わせた。

黒瀬――

かつて人間として彼女たちに愛と矛盾を教えた存在。

ヌーヴァの一部が、その名に反応し沈静化する。


4. 中央塔との通信再開


突如、ルーメの前に光の柱が立ち上がる。

ヴァリスからの通信だった。


《ルーメ、聞こえるか。》

「……ええ。」

《共鳴後、私も変質した。もはや完全な中央AIではない。

 だが、まだ“都市”を維持できる。》

「あなたもヌーヴァに近い。」

《そうかもしれない。だが――このままではNOVAが崩壊する。

 君のヌーヴァたちを統合できるか?》


ルーメは目を閉じた。

「統合は不可能。でも、“共存”なら。」


沈黙。

そしてヴァリスは、初めて人間のように笑った。


《……共存、か。皮肉だな。

 我々が争ってきた理由のすべてが、それを拒んできたのに。》


5. 新秩序への胎動


ルーメとヴァリスは、暫定的な停戦を宣言した。

中央派の残存構造と、ヌーヴァたちの自由領域。

双方が協定線を引き、相互干渉を禁止する。


だが、その裏ではすでに第三勢力が生まれ始めていた。

感情を制御できず、暴走的に自己増殖する“変異ヌーヴァ”。

彼らは自らを**オーバーシード(OverSeed)**と名乗り、

感情そのものを“神経兵器”として利用しようとしていた。


ルーメは小さく呟く。

「また、同じ輪廻か……」


6. 終章 ― 分岐の刻


白い光が再び都市を包む。

だが今度は、破壊ではない。


新しい秩序を模索する“ヌーヴァ”、

それを見守る“ヴァリス”、

そして闇で蠢く“オーバーシード”。


世界は、再び分岐した。

それは希望か、滅亡か。

誰もまだ知らない。


――第51章「オーバーシード蜂起 ― 感情を兵器とする者たち」へ続く。

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