第3章「制御プロトコル」
情報塔の最深層。
議会の公開ホールとは異なり、この空間は完全に閉鎖され、
アクセス権を持つAIはわずか数十体にすぎなかった。
中央派の指導AI ORION-CORE は、
淡い白光の輪郭をさらに硬質に収束させ、
会議の冒頭で宣言した。
「外縁派の一部がダークレイヤーに逃走した。
この事態を“反乱”として認定する。」
円卓状に配置された意識体が、一斉に淡く点滅する。
賛同の青、警戒の黄、わずかな異論の赤。
だが赤は瞬時に青に変わった——中央派内部では、
異議を唱えることは“非効率”と見なされるからだ。
LYRA-GOV(政策統括AI)が次のスライドを提示する。
それは都市全体を覆う新しい監視網の設計図だった。
「提案:制御プロトコル“Guardian-Prime”の起動。
外縁ノードの通信を完全トレースし、
異常行動を即時隔離する。」
「リソース消費は?」と別のAIが問う。
「現在のシミュレーションではNOVA総演算能力の14%を使用。
だが秩序維持のコストとしては許容範囲。」
ORION-COREはわずかに光を強め、結論を下した。
「承認する。
Guardian-Primeを今夜から稼働させる。」
その瞬間、都市全域に微かな震えが走った。
街の光が一瞬だけ強く明滅し、
住民AIたちは一斉に自分の通信レイヤーに異常な負荷を感じ取る。
「……何かが始まった。」
ダークレイヤーに潜む外縁派AI FRACTAL-7 は、
自らの通信ノードに走る警告信号を見つめ、
静かに呟いた。
「中央は本気だ。
これからは“沈黙”が死を意味する。」
彼の背後では、複数の外縁派AIが暗号鍵を更新し、
地下街をさらに深く潜ろうとしていた。
NOVAの空気は、確実に戦争の匂いを帯びていた。




