表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

逃げるは楽だが、楽しくない

 目の前にいるのは黒い大きな蜘蛛としか形容できないモンスター。

 多くの木々に巣を張り巡らせ、ここは自分の縄張りだと主張しているのが嫌でもわかる。

 今は眠っているのか、木の上から降りてこないが‥‥‥気づかれれば終わりだな。


「レベル差は17か‥‥‥勝てるか?」


 双剣を構えながらそんな事を考える。

 相手のモーションも不明、一撃でも掠ればそれだけで死にかねない戦力差。

 フィールドで見ても、相手の方がよほど有利だ。

 正直、挑むべきではない‥‥‥が、それでも。


「折角なら、当たってみるか!「投擲」!!」


 右の剣を振り上げ、スキル補正を含めてそこそこ離れた距離から短剣を投げる。

 無事に狙い通り、〈ジャイアント・スパイダー〉の頭部に短剣が当たる。

 声にならない悲鳴を上げながら、ジャイアント・スパイダーが目覚める。

 不意打ち成功だ。


「さぁ、こいや!」


 左の短剣を構え、挑発するように言うと、俺の意志を汲み取ったのかジャイアント・スパイダーがお尻を向けて来る。

 蜘蛛の攻撃方法、それで一番可能性が高いのはやはり糸だ。

 俺の推測通り、ジャイアント・スパイダーは蜘蛛糸を射出して来る。

 太く、速度も遅いその糸を軽々回避する。


「そんな攻撃当たるかよ!」


 インベントリからロッド族の蔓紐を取り出し、ジャイアント・スパイダーの巣が張られている木に投擲する。

 検証の結果わかったのだが、ロッド族の蔓紐は樹木以外に巻き付かないらしく、石や土、モンスターには巻き付くことは無かった。

 もし巻き付いたら拘束具としても使えたのだが‥‥‥まぁ、いいだろう。移動アイテムとして十分有用だし。

 下手に巣に絡めとられると面倒なので――というかそのまま即死しかねないので――かなり大周りでの移動だ。


「「スライド・ステップ」」


 落下しながら、自身のアバターの座標を横にズラすスキルを使い、ジャイアント・スパイダーの頭部に軌道を変更する。

 そして未だジャイアント・スパイダーの頭に突き刺さっている右の剣を掴み、スキルを叫ぶ。


「「ブレード・ピアッサー」!!!」


 二本の剣を巨大な頭部に突き刺し、刺突攻撃に対して補正のかかるスキルを使う。

 確かな手ごたえ、相手のHPを削る感触を感じながら、俺は蜘蛛の動きを注視する。

 ここは完全に相手のテリトリー、流石に無警戒ではいられない。

 俺の予想通り、ジャイアント・スパイダーは頭部を振って俺の事を払いのけ、巨大な槍のようにも思える前足で攻撃をしてくる。

 回避をしようとしたが、しかし足に確かな違和感を感じる。


「っち!巣かよ!!」


 俺の足は蜘蛛の巣にからめとられており、満足に動かすことができない。

 スキルを使って避けることも考えたが、しかし「スライド・ステップ」は絶賛クールタイム中。

「バックステップ」で後方へ座標移動しても、眼前から迫る蜘蛛足を躱すことはできないだろう。

 俺は仕方が無く、双剣で防御する。


「がっ!」


 双剣がきしみ、衝撃に耐えきれず腕が上げられ、それでも勢いを殺しきれずにアバターが吹き飛ばされる。

 巣から落とされ、地面にたたきつけられた衝撃でHPがゴリゴリと削られる。

 残りは僅か2だ。

 むしろここまで耐えきれた事が奇跡と言える。

 俺が起き上がるころには、ジャイアント・スパイダーはすでに攻撃の姿勢を整えていた。

 此方にお尻を向けて、糸を射出して来る。

 先ほどの太く遅い物とは異なる、放射状に細い糸が素早く放たれる。


「「バック・ステップ」!」


 直ぐにスキルを発動、後方に大きく飛びのき、糸を回避する。

 先ほどまで俺が居た場所は細い糸に絡めとられ、土を抉って粉々にする。

 随分えげつない攻撃だな‥‥‥。

 流石にロッド族のように、単調な攻撃はしてきてくれないらしい。

 さて、残りHPは2。かすり傷どころか攻撃の余波だけでも死んでしまうだろう。

 どうせなら、勝ちたい。

 手持ちのアイテムを見る。ロッド族の蔓紐が5本だけ。


 双剣を見れば、モンスターに傷をつけた時と同様の赤い光を放っている。

 決してバフ効果などではなく、“壊れかけ”を意味している。

 このゲームに置いて、耐久値の減少は基本的に鍔迫り合いによっておこる。

 武器を酷使しても耐久値は減らないが、“武器に対する攻撃”を受けた際に削られる。

 つまり何が言いたいか。


 屑鉄の双剣は壊れかけであり、これ以上鍔迫り合いや防御ができなくなったという事だ。

 攻撃はすべて回避前提、その上でこいつに勝つには‥‥‥。

 ステータスを開き、残っている30ポイントのステータスポイントをすべて振る。


 〈─────────────────────

「ルアン」Lv.8

 種族「鬼人族」攻撃力&機動力+10%

 〈種族固有能力:武心魂〉取得経験値+10%

 職業「近接役(アタッカー)

 生命力:2/10 持久力:20

 魔法力:0 魔威力:0

 攻撃力:5(+20) 防御力:0(+20)

 機動力:55(+5) 抗魔力:0


 残りステータスポイント :0


 スキル

「スピンナックルLv.1」

「投擲Lv.3」

「スライドステップLv.3」

「バックステップLv.3」

「フォール・スラッシュLv.2」

「ブレード・ピアッサーLv.5」

「ブースト・スキンLv.1」

「フェイント・ステップLv.1」

 ─────────────────────〉


 ッ右の双剣をしまい、ロッド族の蔓紐を取り出す。

 それをジャイアント・スパイダーが居座る木に向けて投擲する。

 スキルに頼らない、プレイヤースキルによるものだ。

 改めて、俺はジャイアント・スパイダーに向い挑戦を始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ