神様のお仕事
ある日、僕は悟った。
この世界に神様なんていないと。
もし神様が居るのであれば、なんで僕の妹を辱めて殺した奴らがあんなにも幸せそうに生きているんだ?
だからこそ、僕は決心したのだ。
僕自身が奴らを裁いてやる、と。
慈悲もなく、凄惨に、それでいて奴らに相応しい罰を。
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「神様! いい加減に仕事をしてください!」
寝転がる神様に天使が叫んだ。
「下界を見てください! あなたが裁かなかったから、あの人、とんでもないことをしちゃいましたよ!」
天使がそう言って指差した場所で一人の青年が妹の敵をとるために大犯罪に手を染めているところだった。
神様は小さく微笑んで言った。
「私はちゃんと仕事をしているさ」
「何を言っているんです!?」
神様は起き上がると伸びを一つして言った。
「私の仕事は私の判断で悪人を裁くことだ。それに照らし合わせればあの悪人は相応しい罰を受けている。あんなにも凄惨に殺されたんだからな」
その答えを聞いて天使は少しの間だけ口を開けたままになっていた。
「しっ、しかし……凄惨な殺人をしたが故に彼もまた大罪人となってしまっています!」
天使の言葉に神様が涼しい顔で答える。
「あぁ、その通りだ。だから、そのうちにあの男も別の誰かに裁かれるだろうな」
そう無責任に言い放つと神様はさも満足げにため息をつく。
「永久機関とは言えずとも、中々に便利な自動化だと思わんか?」
心の底から本気で思っていそうな言葉に天使は放心したままに言った。
「そのうち神様は不要だなんて言われてしまいますよ」
神様はカカカと笑って言った。
「もうとっくになっておるよ」