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生きるという事はきっと「思い出」を作る事なのだ…

 赤ちゃんの出産時、夫が号泣したという話は看護師さんの間でも話題になっていたらしい。病室にきた看護さんが教えてくれた。私は恥ずかしいような何とも言えない気持ちで聞いていたが、あの場面で泣き出す男性は少ないらしい。「しっかりしないと」と耐える男性が殆どだという。しかし看護師さんたちの夫への評価は意外にも高く「一緒に泣いてくれる方がいいと思うのよ。じゃないと奥さんが悲しいのは自分だけ?と思ってしまうから」と話していた。一緒に泣いたというか夫だけ泣いてたけど…と思ったが、確かに夫の涙に救われた気がした。一緒に悲しんでくれる同志だと思った。


 退院の日、看護師さんが綿密に打ち合わせをし、エレベーターや通路など病院内で誰にも会わずに車に乗れるようにしてくれた。亡くなった赤ちゃんを抱いた状態で誰かに会うのは辛すぎる。その心遣いが本当に嬉しかった。車に乗るまで見送ってくれる看護師さんと共に出口に向かう。その無駄のない動きが「ミッションインポッシブルみたいなプロ感」と思ってしまった。「出来るだけ沢山泣くのよ」と穏やかな声で話してくれた。入院中からずっと本当に支えてくれた看護師さんたち。忙しい筈なのにそんな事を微塵も感じさせず寄り添ってくれた。「本当にありがとうございました」感謝の言葉しか出てこなかったがそれが全てだった。


 死産というのは死亡届や火葬場などの手配も必要だ。退院した後、一旦自宅に戻り双子と妹でゆっくり過ごす。双子は妹にしてあげたかった事を思いつく限りしてくれた。「絵本を読み聞かせてあげたい」と言って自分のお気に入りの絵本を読み聞かせたり「お手紙書いた」と手紙を見せたり。もし無事に産まれていたら本当に可愛がったんだろうなと思うと胸が苦しかった。双子に妹と過ごす日々をあげたかった。双子は妹に沢山話しかけて「かわいいね」とまじまじ見て言った。赤ちゃんが亡くなっていることをどれだけ理解しているのかは分からないが、もう戻らないこの時間を大切にしようとしてくれていることは分かった。数日入院していて私と会うのも久しぶりなのに我儘も一切言わず私と妹を気遣う事までしている。まだまだ反抗期だって終わってない小さな子どもなのに聞き分けが良すぎて申し訳ないとさえ思った。


 火葬場へ家族で向かい一緒に赤ちゃんを見送った。小さい赤ちゃんがさらに小さくなって壺に収まってしまった。妊娠も出産も当たり前のようにできる事じゃあない。授かることも奇跡なら、産まれてくることも奇跡。双子を授かって無事に産まれてきてくれた事がどれだけ恵まれていて幸せな事なのか改めて感じた。赤ちゃんは私と一緒にいた約一年間で命の限りそれを教えてくれた。「生きるという事はきっと「思い出」を作る事なのだ…」私は赤ちゃんと過ごした思い出を一生忘れることは無いだろう。

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― 新着の感想 ―
「一緒に泣いてくれる方がいいと思うのよ。じゃないと奥さんが悲しいのは自分だけ?と思ってしまうから」 これを名言と言わずして何が名言か! 読んだ私の震えるハート!燃えつきるほどヒート!
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