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人類の夜明けだわこりゃ

 地元に帰り双子出産に備える私。普通の妊娠より倍以上の回数検診に行く。途中、流産の恐れと高血圧すぎるということで入院などもあったが、なんとか無事に日々を送っていた。お腹の双子が大きくなるにつれて胴囲が信じられない大きさになり、病院で歩いていると周囲が驚いて道を開けるほどにまでなった。お腹の下を支えていないと歩くこともままならない。人間のお腹ってこんなに大きくなるのかと自分でも怖くなった。そのうち退院はさせてもらえたが絶対安静の条件付きだった。それでも入院生活は面白くなかったので自宅静養に切り替える。


 帝王切開予定日の前日にまさかの破水をしてしまい、緊急手術になったものの双子は無事に出てきた。「人類の夜明けだわこりゃ」双子は本当に無事に出てくるかも分からないと散々脅されていたので産声を聞いた時は安堵しかなかった。安心して手術中涙を流す私。その涙を拭いながら「もう痛いのは終わったからね」と超絶イケボの麻酔科の先生が言った。「この場面で泣くのは痛いからじゃあねぇ」と突っ込みたかったがそんな元気はない。はははと乾いた笑いをしておいた。


 出産を終えてからは記憶に残らない程忙しかった。双子、もう一度腹に帰らねえかなとか、天津飯みたいに2本なんて贅沢言わないから1本だけでも腕が増えないかなとか、できもしない妄想するくらいには壊れていた。2人の新生児は小さくてふにゃふにゃで何かの拍子に事件が起きそうで怖くて仕方がなかった。寝ている時の顔は天使そのものなのだが、二人同時に寝ていなかったら天使の寝顔を堪能することさえままならない。双子舐めてたわ…こりゃ大変だわ。



 新居に帰ってからも怒涛の日々は続いていた。ちょっと休みたくても双子が同時に寝ることは奇跡に近い。同時に寝ていなかったら休むことなどままならない。夫が仕事から帰ってくるまでは私一人と双子。物理的に腕の数が足りない。一人で双子の世話をするにはどうすれば効率がいいのか試行錯誤を繰り返した。幸い、2人とも気性は穏やかで育てやすいタイプだったと思う。そうじゃあなかったら泡吹いて倒れていたと思う。



 双子ベビーカーで散歩するようにもなってきたある日、意外な方面から過去のトラウマを解消することとなる。

 小学生の時に会った集団いやがらせの経験から、こちらを向いている人がいれば「悪く言われているのでは」と怯える癖は大人になってからも根強く残っていた。周囲の人すべてが私を見て悪く言っているような強迫観念が抜けなかったのだ。そこに来て双子だ。

 双子ベビーカーはとにかく目立つ。車、自転車、歩行者、殆どの人がこちらを見る。失礼な例を挙げるなら勝手に写真を撮ったり、「双子ってどうやって作るの」と下種な笑いを浮かべて声をかけるおじさんなどもいる。

 それが、たまに一人で歩いていると誰もこちらを見ていないと分かる。「誰も私を見ていない」と実感した。本当に注目されることを経験したことによって、人に見られていない感覚も分かったのだ。「誰も私のことなんて気にもしてない」これは今までの私から考えるとかなり楽になった瞬間だった。

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