質問を質問で返すなあーっ!
担任をかばう言動をしてから、ヒエラルキートップのグループから直接話しかけられることが増えた。
初めは「クラスの人気者に話しかけられた~!」なんて私は自分の置かれている状況も理解しようとせずのんきに喜んでいた。おそらく担任に嫌がらせをしているのが彼女たちだとちゃんと理解していなかったのだろう。振り返って考えても小学5年生までの私は平々凡々に過ごしていたことが分かる。
だが話しかけられる内容から決して好意的でないものだと徐々に理解していく。
「この子の本が失くなったのだけど知らない?あなたの机の中確認させて」
私が彼女のグループにいる子の物を盗ったのではないかと疑う言動だということが直ぐには理解できなかった。「失くなった?なんで私に聞くの?」と害意にも気づかずのんきに質問で返す私。質問を質問で返すなーっ!と某名台詞が飛んできそうな平凡な返しである。「だから!あなたが盗ったんじゃないかって聞いてるの!」ここまで言われてやっと理解した。人の害意にさらされることなど殆どない幸せな人生だったであろう私は、彼女たちが苛立ちを見せて言った台詞から「あ、何か嫌な感じがする」と相手の害意に気づいた。
私の机を勝手に散々確認して何も言わず去っていく彼女たち。私の机に本を仕込むほどの裏工作まではしなかったところを見るとあまり計画性はなかったのだろう。今にして思えば、本当に思い付きで私が嫌がりそうなことを片っ端からやっていくスタイルだったらしい。成績が良かろうと所詮は小学生。やることなすこと幼稚で低俗だった。しかし、それをされる私も所詮は小学生。今まで直接的に嫌がらせを受けたこともなかった私は確実に面食らった。なんでこんなに嫌な言葉を投げかけられるのだろう?
しかしまだトップグループだけの言動でそこまでのダメージはなかった。
「何故かは分からないけど彼女たちに嫌われたんだな」くらいに考えていた。
ある日の放課後、クラス内の友だちと教室に残ってお話をしていた。
女子が集まれば恋の話やアイドルの話、クラスの愚痴なんかもあったと思う。私はトップグループの愚痴を話した。心を許した友だちに聞いてほしかったのだろう。それがまずかった。
数日後の終わりの会で日直が「なにか他に連絡はないですか?」と言ったときトップグループの男子が発言した。
「放課後教室に残る事はいけないことだと言われているのに残っていた人がいます!しかもクラスの生徒の悪口を言っていました。悪いことだと思います!こんな内容を話してました!」と具体的に内容や名前を言い始めた。
鈍感な私でもすぐに分かった。「私のことだ」と。
でもその事をその男子が知っている理由までは分かっていなかった。やっぱり鈍感な私。
あの時、教室のドアは閉まっていたし友だち数人の他に人はいなかった。こそこそ話していたから廊下から細かな内容まで聞き取るのは難しい。私が話をした友だちの中に情報源があると考えるのが自然だろう。それに終わりの会で責められるのは私だけで、一緒に残っていた他の生徒の名前が出てこない点からもピンと来てもおかしくない。おかしくはないが気が付かない当時の私。
ただただ校則違反したことと、人の悪口を言ってしまった事を恥ずかしいと感じ、悪いことをしてしまったと一人反省する私。
この時一緒にいた友だちに対して少しでも不信感を抱いていればこの後のトラブルも回避できたかもしれないし、ショックも小さかったかもしれないが当時の私は鈍感だった。