用意をするんだ てめーがこの世に生まれて来たことを後悔する用意をだ!
面倒くさい親戚のおかげで、今まで経験したことのない社会的に怖い人たちに攻撃されるという珍しい体験ができた。父は弁護士や警察など色々な機関に相談していた。例えば借金取りに殴られたり物を壊されたりすれば警察も動けるらしいが、恐怖を感じただけでは警察も動けないらしい。弁護士とも相談して親戚には自己破産という形で対応することになったらしいが詳しいことは聞かされていない。「用意をするんだ てめーがこの世に生まれて来たことを後悔する用意をだ!」とでも散々親戚を罵ってやりたかったが会うことはなかったし、多分会わないのが正解だ。罵ったところで気は晴れないし自分が汚くなるだけだろう。
連日続いた取り立てはある程度の期間で終わった。私たち家族に気分の悪さと恐怖を与えた親戚の借金事件だが、結果家族の結束は強まり、私は父のようにかっこよく家族を守れるような人になりたいと思った。
怖い人たちの嫌がらせは終わったが、母はその後遺症かどんどんか弱くなっていった。大きな物音にも過敏に反応し、店に人が来る度に身構える母。それに反比例するように私はどんどん強気を演じるようになった。実際は頭は弱いし、気が強い訳でもないのだが、常に「大したことじゃあねぇ」と振舞った。そうでもしないとどんより暗い雰囲気になってしまう。
再会した同級生とも時々飲みに行く関係が続いていた。家族を守らねばと常に虚勢を張っている私にとって同級生との時間は武装解除できる唯一の場所だった。そんな時、仕事中に事故にあった。外回り中に後ろから追突されたのだ。大したことは無かったのだが人生初の追突事故。なんか凄い首が痛い。その日の夜、同級生と会う約束をしていたので事故にあった旨をすぐ伝えた。予定をキャンセルしようと考えたからだ。そうしたらその同級生が仕事を早退して駆けつけてきた。
うちの店は小さな店だ。私一人急に抜けるだけでもバタつく。当然病院に連れていく人手などない。だから自分で何とかして病院に行くつもりだった。事故の後の病院は何かと書類の用意も必要で、ある程度ちゃんとした病院に行く必要がある。私が行こうとした整形外科は取引先でもある信用できる病院だ。車でなら問題ないが公共交通機関となると少し厄介な場所にある。どうしたものかと考えていたときにその同級生が颯爽と現れた。
「あれ、この同級生も白馬の王子様かな?徳田新之助かな?」と一瞬脳がバグった。「病院行くのに運転手がいるでしょ?」となんてことない様子で駆けつけてくれた。両親には大したことないと言いつつ、一応念のため病院に行くからと仕事を早退して病院に向かう。
週に1、2回は仕事で行っている整形外科なので、受付の人もいつものように対応しようとするが「今日は患者なんです~事故にあっちゃって」と笑う。怪我とか病気とかから縁のなさそうな私が患者として来たことに受付でも笑いが起き、事故としての処理をしつつ診察を終える。漫画でしか見たことのない首のコルセットをつけられた。無理して運転してきてなくてよかった。帰り道運転どころじゃない状態だった。病院でも終始けらけら笑って「今度はまた仕事できまーす」と病院を後に、同級生の車に乗り込んだ。
乗り込んだ後、同級生が「本当はかなり痛くてしんどいはずなのにそういやっていつも平気な振りするよね」と笑いながら同級生はいい、「そんな平気な振りせんでいいのに」と付け加えた。少女漫画のワンシーンのように同級生の後ろに花が咲いて見えた。トゥンクと胸が高鳴った……訳ではないがちょっとだけときめいた。何この人、「俺の前で強がるなよ」的なこと言った?こんな事言われたの初めてじゃあねぇか。




